【高橋清隆の文書館】2024年07月05日 武見氏が「主たる活動資金源はビル&メリンダ・ゲイツ財団」発言を容認も、影響力は「オブザー機関にすぎない」と否定
社会・経済武見敬三厚生労働大臣が2021年のウェビナーで自身が委員長を務めるグローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会について「主たる活動資金源はビル&メリンダ・ゲイツ財団」と発言していたことについて、5日の閣議後記者会見で「ビル&メリンダ・ゲイツ財団はその出資団体」であることを認めながらも、「委員会のオブザー(バー)機関にすぎないことから、そこに支配されているというようなことは全くございません」との見解を示した。
同委員会へのビル&メリンダ・ゲイツ財団の出資事実を認める一方で、わが国の国際保健政策決定への影響力は否定した形だ。
動画URL: https://www.bitchute.com/video/36LXNnAs3uBy/
武見氏は21年4月、日本国際問題研究所主催のウェビナー(ウェブセミナー)「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の今日的意義」の基調講演「日本の保健外交とUHC」の中で、次の発言をしている。
「グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会のタスクフォースで採択された案件というのは、そのまんま(自民党政務調査会の)国際保健戦略特別委員会でも採択されて、政調審議会を通じて自民党の政策になるという一つの政策決定プロセスがデザインされている。(略)実は、主たる活動の資金源はビル&メリンダ・ゲイツ財団」
グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会とは、ホームページによれば、「人間の安全保障を視座にグローバルヘルス(国際保健)を推進する官民連携のプラットフォーム」のこと。事務局を日本国際交流センタ-(JCIE)に置き、07年から武見氏が委員長を務める。
筆者はこの発言を引用し、「つまり、日本の国際保健政策はビル・ゲイツによって差配されていると理解してよいか」とただした。
これに対し、武見氏は「全くそうではないと思います」と切り出す。グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会は官民合わせて数十人が参加し意見交換していることを挙げた上で、「このビル&メリンダ・ゲイツ財団はその出資団体ではございますが、このほかユニセフ(UNICEF・国連児童基金)やWHO(世界保健機関)、世界銀行などと同様に委員会のオブザー(バー)機関にすぎないということから、実際にここがそこに支配されているというようなことは全くございません」と答えた。
武見氏は遅くとも17年に自民党国際保健戦略特別委員会委員長に就任しているのが確認できる。
両委員会の委員長を少なくとも約6年間は務めたことになる。
グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会には、アジア医薬品・医療機器規制調和推進タスクフォース(座長:故近藤達也PMDA理事長)と保健分野のODAのあり方を考える特別委員会(委員長:塩崎恭久[やすひさ]元厚労相)の2つの小委員会がある。
「ここでの提案が国の政策になってきたのは事実ではないか」と、筆者が尋ねた。
武見氏は「そうしたプロセス(過程)の中にはさまざまな意見が組み込まれていて、決して単一の簡単な国際的な意思決定がそこでできるなんてことは全くあり得ません」と否定。
むしろ「多方面の方々がこうしたプラットフォームを作って意見交換ができて」「わが国が大変主導的な役割を担える大事な基盤になっている」と真逆な見解を示した。
筆者が「武見大臣は2つの委員会の委員長を務めていたことによって、ある程度、政策にビル・ゲイツの意向が反映されていた部分があることはお認めになるか」と尋ねた。武見氏は「全く認めません」と全否定する。
筆者「じゃあ、一般論として」
武見氏「全くの邪推です」
筆者「じゃあ、最後に1問、一般論として伺います。国の保健政策が民間の、しかも外国の一実業家の意思で決められているとしたら、問題だとは思いますか」
武見氏「全くそういうことはありません」
筆者「そういうことがあったとしたら」
武見氏「ありません。以上です」
仮定することも許さなかった。
事務局のJCIEによれば、武見氏は23年9月に厚労相に就任したことを受け、グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会の委員長職を返上している。
しかし、ウェビナーでの発言が本当なら、自身が大臣になることによって、ビル・ゲイツの意思がわが国の国際保健政策に反映される究極的な仕組みが完成したと言えないだろうか。
しかも、JCIEのホームページには、懇談会の写真が掲載されていて、武見氏の姿も上座中央にある。事務局によれば、この写真は6月に撮影されたものだ。
「来賓として出席されたまでです」と、筆者が聞きもしないのに委員長の立場でないことを強調した。
今回の会見での答弁は、3年前の発言の印象を変えようと躍起に映る。委員会が出資者の意見を反映しないことなどあり得ない。それを承知で「主たる活動の資金源はビル&メリンダ・ゲイツ財団」と発言したはずだ。
それを覆すのは無理がある。そもそも、政府の政策決定に民間の、しかも外国の実業家を関与させることが間違っている。
われわれフリー記者への態度は冷淡になった。筆者の推測では、6月28日の会見での「強制措置」発言を後悔しているとみる。
武見氏にはスポーツマンの部分もあり、前言を撤回するのは恥との美意識が働いたと感じる。
思わぬ発言が取り上げられたが、撤回するのにちゅうちょし、持論を披歴したと解する。
しかし、後悔していったのだろう。SNSやインターネット上で「強制措置を盛り込もうとする武見は大臣失格」といったような投稿が相次いだ。
これとは別に、事務方から困惑の声が届いた可能性もある。
以後、2回の会見は時間を20分程度に短く制限された。今回、元国会議員秘書ユーチューバーの藤江成光(まさみつ)氏が初めて質問できなかった。
短くして村八分の原理を利用し、筆者を内部から排除させようとの凡庸で姑息(こそく)な工作かもしれない。武見氏の表情も終始険しかった。
笑顔で立て板に水のごとく「強制措置」について語ったときと対照的である。
武見氏は07年に参院比例区で繰り上げ当選し、5年ぶりに政界復帰を果たした。19年にWHOのUHC親善大使に就任すると、直後の参院選に東京都選挙区から立候補。最下位当選しながら、なぜか厚労相に就任している。
質問に答える武見氏。いつになく険しい表情(2024.7.5厚労相会見室で筆者撮影)
■参考動画
👆林千勝氏編集による字幕付きダイジェスト告発動画
※なお、この記事は「高橋清隆の文書館」2024年7月5日のブログ記事がらの転載であることをお断りします。
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反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/