与那覇けい子さん詩集:日本列島の朝
琉球・沖縄通信
夜が明けたか・・・
窓に白い光が広がっている
喉に突き刺さったまま
棘が抜けない
「戦場となる沖縄(1)」
「酷い」「あまりに酷い仕打ちだ」
呟きは 日課となった
これが
孫や子供達に残す沖縄だ
抵抗 空しく・・・
「こんな沖縄に誰がした」(2)
あのとき
日本に復帰したら 沖縄はついに
米軍のくびきから解き放たれるのだと・・・
大人達は 基地無き沖縄を描いて
空をあおいだ
子供達は 降ってくる白い雪を夢見て
空をあおいだ
あれから 50年
くびきは ますます
長く 太く
喉の棘は ますます
鋭く 強く
今日も
柔らかな空に
鋭い引っかき傷を残し
低空飛行の轟音が
恐怖を まき落としていった
テレビは賑やかだ
「今朝、注目のニュースは?」
顔をあげると
「ハンバーガーのサイズがビッグになりました!!」
SNSで、ばずったのは?
販売機からやっと買えたお目当てのドリンク
歌い踊る10代のグループシンガー
便利グッズに感嘆の声をあげる主婦
大口でかぶりつき食レポをするタレント
愛嬌たっぷりの男性司会者に
ニコニコ美人の女性アナウンサー
「明るいニュース」が
全国を かけめぐる
日本列島は 笑いながら
明るく 沈み続ける
再びの闇へ
その南の先
再びの人身御供
差し出された
沖縄が
怯える
(1) 与那国・宮古・八重山・沖縄本島を指す(沖縄県)
(2) 大田昌秀(同時代社2010)の本のタイトル
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独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。