与那覇けい子さん詩集:ふつうの日の朝

与那覇恵子

 

今日は お風呂に行こうか
天井をあおいで ぼんやり考える
トースターがチンと鳴った

ふつうの日のにおいは 香ばしい

手元の新聞は 伝える
「安保法案 審議中」

つめが 少し伸びてきたかもしれない
足先がむずがゆい
そろそろ 切っておこうか

ふつうの日の時は 優しい

傍らの本は 問う
「なぜ アメリカは対日戦争をしかけたのか?」

昼ごはんは スパゲッティでもいいかも・・
ふつうの日の朝に ゆっくりと立ち上がる
今日も 暑くなるかもしれない

足元の一冊が 叫ぶ
「大きな戦争が迫りくる」

あふれんばかりの光を押して
ドアを開けた
ふつうの日を 抱えて
ドアを開けた

「誰にも 渡すまい」

しっかりと 小脇に
抱えなおして
今日に 足を踏み出した

 

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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