【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.08.22 櫻井春彦 :核兵器を恫喝に使ってきたイスラエル(前)

櫻井春彦

イスラエル政府は7月31日、ハマスの幹部でイスラエルとの首席交渉官を務めていたイスマイル・ハニエとヒズボラの最高幹部のひとりであるフア・シュクルを暗殺した。
イランの新大統領マスード・ペゼシュキアンの就任式に出席するためにテヘランを訪れていたハニエを殺したということはイランへの挑発でもある。

イランがイスラエルに報復することは間違いないが、その前に手順を踏んでいる。
根回しをしていると言えるだろう。このイランがヒズボラやハマスと連携してイスラエルを早晩、攻撃するはずだ。アメリカやその属国はイスラエルを守ろうとするはずだが、成功する可能性は大きくない。

ヒズボラ単独でもイスラエルは軍事的に勝てないと言われ、ガザではハマス相手に苦戦している。
中東の状況を悪化させ、アメリカが軍事介入せざるをえない状況をイスラエル政府は作ろうとしていると推測する人もいるが、そもそもイスラエルはイギリスの戦略に基づいて作り出されたのであり、イギリスの戦略を引き継いでいるアメリカもイスラエルと一心同体の関係にある。

アメリカのジョー・バイデン政権や副大統領で民主党の大統領候補でもあるカマラ・ハリスはイスラエルにブレーキをかけているかのような発言を続けているが、​SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、イスラエルの武器輸入の69%はアメリカが占める。その次がドイツで30%。​ほかのNATO加盟国も多くが供給しているが、アメリカとドイツで大半を占める。
つまり、この2カ国が本当にイスラエル軍によるパレスチナ人虐殺を止めようと思えば、可能であり、ハリスたちの発言は口先だけである。

イスラエルには核兵器という切り札がある。この国の核兵器開発はフランスの支援でスタート、1960年2月にイスラエルの科学者はサハラ砂漠で行われたフランスの核実験に参加している。
その直後にはイスラエル自身が長崎に落とされた原爆と同程度の核兵器を所有している。

1949年から63年まで西ドイツの首相を務めたコンラッド・アデナウアーはイスラエルとは友好的な関係にあった。イスラエルのダビッド・ベングリオン首相の求めに応じて小火器、ヘリコプター、部品などを提供している。1960年3月にニューヨークでベングリオン首相と会った際には、核兵器を開発するために61年から10年間に合計5億マルク(後に20億マルク以上)を融資することを決めている。

それに対し、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領はイスラエルの核兵器開発に神経をとがらせていた(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007)が、1963年11月にケネディは暗殺され、後任はシオニストの富豪アブラハム・フェインバーグから資金援助を受けていたリンドン・ジョンソン。フェインバーグは日本への原爆投下を許可したハリー・トルーマンのスポンサーでもあった。

イスラエルの核兵器について内部告発したモルデカイ・バヌヌによると、彼の証言がサンデー・タイムズ紙に掲載された1986年10月当時、イスラエルが保有していた核弾頭の数は150から200発。
水素爆弾をすでに保有し、中性子爆弾の製造も始めていたという。
中性子爆弾は実戦で使う準備ができていたとしている。

後にカーターはイスラエルが保有する核兵器の数を150発だと推測、イスラエルの軍情報機関ERD(対外関係局)に勤務、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベン-メナシェによると、1981年時点でイスラエルがサイロの中に保有していた原爆の数は300発以上。
水爆の実験にも成功していたという。(Seymour M. Hersh, “The Samson Option”, Faber and Faber, 1991)

こうした核兵器をイスラエル政府が使おうとしたことがある。
1973年10月にエジプトのアンワール・サダト政権はイスラエル軍に対して奇襲攻撃をかけた。そして始まったのが第4次中東戦争である。(続く)

※本稿は、櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/の下記の記事からの転載であることをお断りします。
「ウクライナのクーデター体制とナチスとの関係を隠しきれなくなった米英支配」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202408200000/

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