【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/11:戦争の火種にガソリンを注ぐ日本政府

秋嶋亮

今夏はパリ五輪一色だったが、案の定、この馬鹿騒ぎの裏では、改憲の準備が着々と進められていたのだ。

自民党の憲法改正実現本部は「国会議員の任期を延長する緊急事態条項が必要」と方針を取りまとめ、近く岸田文雄が出席する本部会合で提出する見込みだ。しかしそもそも、緊急事態条項とは改憲案の付帯条項であり、これはつまり、改憲がすでに既成事実化されていることを示唆しているのだ。

余りにも露骨なスポーツウォッシング(大衆が競技に熱中する隙を突いて危険な政策を進める手法)に唖然とするのだが、これはかねてより周到に計画されていたことであり、日本という一国政府の陰謀ではないのだ。

本題に入る前にサマリー(事情の概要)を述べよう。

自衛隊は陸海空を統括する「JJOC(統合作戦司令部)」を今年度中に設立するが、安全保障協議委員会(日米の軍事閣僚から成る合同会議)はこれに合わせ、横田基地の司令部を「統合軍司令部」に格上げすると発表したのだ。

どういうことかと言うと、米国は自衛隊を米軍の直接的な指揮下に置き、実質NATOの部隊として動員する計画なのだ。こうして自衛隊を対中露戦争の駒として前線に送り、ウクライナのように代理戦争をさせる目論見であり、これは言わば「世界軍事秩序の再編に向けた新たなシステム統合」なのである。

岸田文雄のNATO首脳会議の出席に先立ち、航空自衛隊がドイツ、フランス、スペインと北海道で共同訓練を実施したことを述べたが、これはユーロファイター、ラファール、F2戦闘機という各国の主力機を投入するなど、対ロシア戦争をシミュレートした極めて実戦的な軍事演習だったのだ。

ロシア側からすれば宣戦布告に匹敵する挑発であり、(マスコミは全く報じていないが)そのためロシア政府はいよいよ「敵国条項(世界大戦の枢軸国が再び戦争を仕掛ける兆候があれば先制攻撃してよいという取り決め)」の行使の検討に入っており、戦火は東欧から極東に飛び火しようとしているのだ。

かくしてプーチン政権は、日本とNATOの一連の行為がロシアに対する攻撃の前段階と捉え、これに対抗するため軍事的手段も辞さないと表明したのだが、日本政府もこのような事態となることを理解していたのだ。

つまりこの国の支配層は、自衛隊とNATOとの共同演習が火種となり、ロシアが対ウクライナ戦争のように「集団的自衛権」もしくは「敵国条項」を行使する形で、日本と交戦しかねないことを重々承知しており、確信犯的に戦争を勃発させようとしているわけだ。

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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