メールマガジン第209号:「宝の海」と「県民の魂」埋める 辺野古新基地は「戦争への道」
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沖縄防衛局は1月10日、辺野古新基地の大浦湾側の工事を強行しました。貴重な巨大アオサンゴ群落、ジュゴンやウミガメの餌場となる大浦湾は、生物多様性に富み、保存すべき世界の「ホープスポット」に指定されています。沖縄防衛局も環境調査で「絶滅危惧種262種を含む5334種の生息」を確認しています。沖縄島北部の「世界自然遺産」に組み込むべき、世界に誇る「宝の海」です。ひすい色の大浦湾に埋め立て石材が投下されるのを目の当たりに、「宝の海」と同時に、沖縄県民の魂が埋め立てられる思いです。
私たちは絶対に容認しないし、諦めません。「辺野古新基地建設」と「沖縄の戦争準備」の「根は一つ」です。台湾有事に向けた日米の軍事一体化と沖縄の「軍事要塞化」の中に、「辺野古新基地建設」は組み込まれています。県民の貴重な海洋自然遺産の保存、県民の命、県民の誇りをかけた闘いとして、私たちは諦めるわけにはいかないのです。
「銃剣とブルドーザー」
10日の沖縄タイムス「オピニオン」蘭に、「代執行訴訟の判決に負けない」の投稿が載りました。投稿者は沖縄戦を体験した名護市の82歳の男性。沖縄戦の激戦の後、避難先から焼け野原に戻った住民は「テント小屋を作り、苦しいながらも細々と生活を始めた。そこに銃剣を持った米兵が押し寄せ、有無を言わさずブルドーザーで小屋や畑をならし広大な基地にした。それが今の普天間飛行場だ」。強権で普天間基地や嘉手納基地を造った米軍は沖縄本土復帰後も沖縄に居座り続け、いま日本政府は米軍のために辺野古新基地建設を強行する。投稿には「政府は銃剣とブルドーザーの威力を思いついた」「司法を国家権力で追認機関として利用した」と書きました。
辺野古新基地建設を米軍の「銃剣とブルドーザー」に例えています。本当にその通りだと思います。県民の7割以上の反対を無視し、マヨネーズ状の軟弱地盤の工事設計や環境破壊を検証もせずに司法がお墨付きを与えました。戦後に国際法に反して造られた嘉手納、普天間基地はそのままに、新たな基地建設を政府が強行する。米軍になり替わった国による「銃剣とブルドーザー」政策にほかなりません。
本土の無関心
10日琉球新報は「那覇空港100人に聞く」「代執行知ってますか?」「県民8割、知っている」「県外、知らない、半数」の記事。県知事になり替わって国が埋め立て工事を承認し、工事を強行する。県外の多くの人が「代執行」を知らず、「沖縄ごと、他人ごと」の「無関心」を記事は浮き彫りにしています。知っていても、「仕方がない」、知らなかった人も「県外の感覚からすると(新基地建設に)賛成」と容認する声もありました。南彰記者は「代執行の異常な先例を許すのは、99%の有権者がいる本土の情報不足。本土メディアもこれ以上、不作為を続けてはいけない」と書きました。
南彰記者が指摘する「不作為」とは、「伝えるべきことを伝えない本土メディアの不作為」ということでしょう。ただ、本土の方々の回答には「安全保障のためには(沖縄の犠牲も)仕方がない」というニュアンスが滲んでいるように感じられます。「日本の安全保障のためには沖縄が犠牲になっても仕方がない」という考え方を多くの国民が抱いているとすれば、そこに大きな問題があると私は考えます。
沖縄の犠牲やむなし
その背景には、「日本の安全保障のためには米軍基地が必用」、特に昨今の情勢の中では、
(本土メディアは、「中国の海洋進出により日本の安全保障環境が厳しさを増している」のまくら言葉を記事に多用しています)、日米政府があおる「中国脅威論」がメディア報道に浸透し、「軍備拡張する中国に日本が攻撃されないためには防衛強化(特に沖縄の)が必用」という考え方が国民に広がっている現実があると思います。安保3文書以降の政府の防衛強化政策を、国民の過半が支持する世論調査結果が出ています。
中国の脅威に対抗する「軍備強化やむなし」、中国にも届く長射程の敵基地攻撃ミサイルの配備、とりわけ最前線となる沖縄・南西諸島への配備も「仕方がない」、日本を守る「安全保障」のために、「辺野古新基地建設もやむなし」という考え方が、多くの国民の間にあるのでは、と私は考えるのです。それは次の戦争で「沖縄の犠牲やむなし」の底流になってはいまいか、と。
鍵にぎる「99%の本土有権者」
南記者は「99%の本土有権者」と書きました。核心を突いています。国民の1%でしかない県民が反対し抗い、国策に踏みにじられても、「本土の99%の国民」が容認するままでは、辺野古新基地も、沖縄の「新たな戦争準備」も止めようがありません。本土の「無関心」、「沖縄ごと、であり、自分ごとではない」という傍観者的な見方を転換していかない限り、辺野古新基地も戦争準備も止めようがありません。
「沖縄問題」は「沖縄だけの問題ではない」こと、「沖縄問題」は、本土の方々にとっても「自分ごと」であることをメディアが伝え、国民が共有すること。そのために「事実を知ること」が問題解決の第一歩です。
辺野古・大浦湾工事執行承認の国による「代執行」は、国と地方を対等とする地方自治の原理を覆すもの、と批判されています。それを国民が容認すれば、「安全保障」に名を借りた日本各地の軍備強化が歯止めもなく進んでいくことでしょう。日本の民主主義、地方自治、国民がものを言う権利、国策のために地方や住民が犠牲にならない「生きる権利」の主張が、ないがしろにされるはずです。
辺野古新基地建設や沖縄の軍備強化を「日本の安全保障のため」、「台湾有事に備えるため」と国民が容認する雰囲気が蔓延しています。「台湾有事」を名目とする「戦争をする国」の軍事(安保)政策が偽りであることを、国民が正しく認識する必要があります。
麻生発言「潜水艦を使って台湾海峡で戦う」
麻生太郎自民党副総裁は8日、「われわれは潜水艦などを使って台湾海峡で戦うことになる」と発言しました。同氏は昨年8月にも台湾で、「日米、台湾は戦う覚悟を」と発言しました。台湾有事は確実に起こる、と危機感を煽りつつ、「台湾有事は日本有事」とみなして、「台湾を守るために日米はともに戦おう」と鼓舞し続けています。政権政党ナンバー2の発言を、麻生氏流のいつもの放言と看過するわけにはいきません。
「台湾を守るために中国と戦う」ことに国民は納得しているでしょうか。「台湾有事に在沖米軍が関与すれば、沖縄、嘉手納基地がまっさきに標的になる」(我部政明琉大名誉教授)、「米軍が中国軍と交戦すれば、安保法制により自衛隊は自動参戦せざるをえない」(石井暁共同通信社専任編集委員)。そして自衛隊が参戦すれば「日中戦争になり、沖縄だけでなく日本全土が戦場になりかねない」(軍事ジャーナリスト小西誠氏)、米軍、自衛隊基地だけでなく「全国の民間空港や港湾も軍事化により攻撃目標となる」(小西氏)と多くの有識者が、警鐘を鳴らしています。
「台湾を守るために中国と戦う」のか
「台湾を守るために中国」と戦うことは、「日中戦争」を覚悟することであり、核ミサイル大国の中国との戦争は、日本全土が焦土なることを覚悟することにほかなりません。ジャーナリストの布施祐仁氏は「国民は岸田政府からそのような説明を受けていないし、合意していない」と指摘しています。
あたかも中国が沖縄、日本に攻め込んでくるかのような日米政府のプロパガンダに騙されてはなりません。「台湾を守るために中国と戦争をする」ことが日本の国益に反し、国民の命を犠牲にする偽りであることを国民が正しく見据えて、反対の声を上げねばなりません。「辺野古新基地建設」を容認することは、日本が無益な戦争に突き進むことを容認することになる。そのことを重ねて強調します。
新垣邦雄(当会事務局長)
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