【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年9月16日 (月)1年で実現公約なら実績で信を問え

植草一秀

9月27日に投開票日を迎える自民党の党首選は、新たに選出された党首がそのまま首相に就任することになる意味で、単なる自民党の党首選びと言えない側面を有する。

首相は行政権の長であり絶大な権限を有する。

主権者国民が重い関心を注がねばならない。

岸田首相が辞任に追い込まれた大きな理由が二つある。

ひとつは自民党と統一協会の癒着に対する主権者の批判が強まったこと。

いまひとつは政治とカネをめぐり、自民党の巨大な組織犯罪が発覚したこと。

政府は統一協会に対する解散命令を裁判所に請求した。

政府が統一協会に対する解散命令を請求した理由は統一協会の行為が宗教法人法81条1項1号及び2号前段の解散命令事由に該当するものと判断したことによる。

統一協会は長期にわたり、多数の人々に対して自由に制限を加え正常な判断が妨げられる状況で多額の損害を被らせ、生活の平穏を妨げるとともに、多数の人々に多額の損害を被らせ、その親族を含む生活の平穏を害する行為をし、教団の財産的利得を目的として、献金の獲得や物品販売にあたり、多数の人々を不安または困惑に陥れ、その親族を含め財産的、精神的犠牲を余儀なくさせ、生活の平穏を害する行為をしたと政府は認定した。

この統一協会と多数の自民党議員が深い癒着関係にあった。

岸田首相は統一協会との関係を断ち切ると述べたが、地方自治体議員を含めて、依然として多くの自民党議員が統一協会との関係を断ち切ることができていないと見られている。

安倍首相は統一協会の関係組織であるUPF(天宙平和連合)にビデオメッセージを送っていた。

 

岸信介氏の時代から岸・安倍家は統一協会と極めて深い関係を保持し続けてきたことが分かっている。

この問題に対する自民党の事後処理は依然として十分とは言えない状況にある。

他方、自民党の組織犯罪問題はより深刻だ。

政治資金規正法の根幹は政治資金の収支を公開することにある。

政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにし、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的に同法が制定された。

同法は議員立法によって制定された。

政治資金の収支を公開することは同法の根幹。

自民党は組織ぐるみでこの法律を犯した。

裏金に関しては所得税納付も行われていないと見られ、巨大脱税事件の疑いも存在する。

自民党が巨大犯罪組織であると表現できる。

違法行為を実行した議員は85名にも及ぶが日本の警察・検察当局は、このなかの3名しか摘発しなかった。

日本の警察・検察の腐敗も鮮明になっている。

問題発覚とともに政治資金規正法の巨大な抜け穴にも改めて焦点が当たった。

同法は政治家個人への寄附を禁止しているが、政党が行う寄附を例外として除外している。

 

同法21条の2の2項の規定だ。

この規定を根拠に政党が「政策活動費」などの名目で政治家個人に寄附を行ってきた。

自民党では毎年、約10億円もの資金が幹事長に寄附されてきた。

この寄附については資金使途が一切明らかにされていない。

政治資金規正法の主旨を根底から否定する巨大な抜け穴だ。

自民党巨大犯罪が発覚したことを受けて本年の通常国会で法改正が行われたが、自民党、公明党、維新が主導して、何の実効性もないザル法改定が強行された。

21条の2の2項削除、連座制導入が必須の課題だったが、もぬけの殻のザル法改定だけが実行された。

今回の自民党党首選で有力候補となっている小泉進次郎氏は政策活動費の廃止を公約に掲げた。

「決着」をアピールして1年以内に実現すると主張している。

その小泉氏が自民党党首選の直後に衆院解散・総選挙を実施すると公言している。

しかし、衆議院の任期は1年残っている。

小泉氏は公約実現の期限を1年と定めたのであるから、仮に小泉氏が新党首に選ばれ、首相に就任するなら、1年間で公約を実現し、その上で国民に信を問うのが順当だ。

「1年で実現する」との公約を掲げても、過去の自民党党首の公約を踏まえれば、その実現可能性に強い疑問が付せられる。

先に総選挙を実施してしまえば、仮に首相を続投することになった場合に1年で公約を実現できなくても、国民は不信任を表明できない。

小泉氏が1年間での公約実現を明言するなら、小泉氏が首相に就任する場合には、今後の1年間で実績を示し、その上で国民に信を問うのが当然の対応だ。

主権者は小泉氏に対して、この世論を突き付ける必要がある。

 

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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