メールマガジン第210号:辺野古大浦湾埋立工事強行をめぐる県内の声
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沖縄防衛局は1月10日、辺野古大浦湾の埋め立て工事を強行しました。11日付、沖縄タイムス、琉球新報の紙面から玉城デニー知事コメントほか、遺骨収集ボランティア具志堅隆松さん(ノーモア沖縄戦の会共同代表)、県民の怒りの声、両紙社説を抜粋して紹介します。沖縄選出の野党国会議員、県議会与党は「地方自治、県民無視」「国家権力を総動員して強行」「沖縄の再戦場化につながる」などと批判し、工事中止を要求。維新も「県民の思いを踏みにじる」と批判。これに対し自民党国会議員は「東アジアの平和維持に資する」(西銘恒三郎衆院議員)、「厳しい国際情勢下で抑止力維持」(国場幸之助衆院議員)ど南西諸島の防衛強化の視点に立って辺野古新基地推進に賛同しました。
政府、「きわめて乱暴で粗雑な対応」
【玉城デニー知事コメント】要約
林官房長官は記者会見で「地元の皆さまへの丁寧な説明を行なう」と発言され、また木原防衛大臣も「地元の皆様方に丁寧な説明」を行なうと発言されておりますが、私はこれまで、辺野古新基地建設問題を含む基地問題について、一度たりとも、林官房長官とも、木原防衛大臣とも面会する機会をいただいておりません。
沖縄県がこれまで再三求めてきた真摯な対話に応じることなく、一方的な文書の送付が重ねられるばかりで、知事の権限を奪う代執行に至り、さらに本日、工事の着手が強行されたことは、「丁寧な説明」とは到底真逆の、きわめて乱暴で粗雑な対応がなされたものと、申し上げざるを得ません。
政府においては、必要性・合理性のない埋立工事の強行がもたらしている甚大な問題を直視した上で、沖縄の苦難の歴史に一層の苦難を加える辺野古新基地建設を直ちに中止し、問題解決に向け、沖縄県との真摯な対応に応じていただくよう求めます。
「諦め感」は大きな間違い
【玉城デニー知事 一問一答】
―沖縄の声が聞き入れられていない。
「日本全体の7割の米軍基専用施設面積を押し付けられている側の声がどう届いているか、国民にも問うべき。世論調査でも政府の姿勢に疑問を持っている人は少なくない。政府が辺野古が唯一という考えに固執するのが正しいのかという政治的責任も問われる」
-打つ手はあるのか。
「例え政府が工事を進めても、法定受諾事務の手続きにのっとり、県知事に求めなければならない変更承認はたくさん出てくる。手だてがなくなったわけではない。厳正に検討を重ねていくことが可能だ」
-代執行から2週間ほどで着手した国の対応について。
「正直な感想として、たたみかけるように工事を進めることで諦め感を醸し出そうという考えがあるなら大きな間違いだ。事務手続きが進んでも、多くの県民は辺野古新基地建設反対の民意を明確にしている。それを軽んじては、日米安保体制にも大きな影響が及び続けると懸念せざるを得ない。しっかりと受け止めて欲しい」
辺野古の行き着く先は第二の沖縄戦
【県庁前ハンガーストライキ】具志堅隆松さん(遺骨収集ボランティア)
「ウチナーンチュは国のいいなりにならない。辺野古の行き着く先は第二の沖縄戦だ」。(琉球新報)
「米軍も自衛隊もミサイルを持って出て行ってもらいたい」(県庁前での抗議表明)
「遺骨が埋もれている南部の土砂を重機で掘り起こせば、収集が不可能になる。さらにその土砂を埋立に使うとすれば、戦没者への冒涜だ」。(沖縄タイムス)
「辺野古に基地ができても関係ないと思っている人もいるかもしれない。だが基地が攻撃され、沖縄が再び戦場になったら得をする県民は誰もいない」(同)
詩人の高良勉さん(74)は、沖縄戦で兄を亡くし、父母は小石3つを墓に入れた。「遺族にとっては石が遺骨だ。兄のためにも埋め立てに使わせる訳にはいかない」。(12日、琉球新報)
糸満市の上原常子さん(75)は「南部の土には肉体が染み込み、ばらばらになった遺骨が眠っている。石を取ることは許されないと、みんなで声を上げてほしい」。(12日、琉球新報)
環境破壊加速、世界潮流に逆行
【環境団体が抗議 首相らに声明発表】
日本自然保護協会は10日、岸田首相や防衛大臣り対する抗議声明を発表した。生物多様性豊かな大浦湾の保全を訴える研究者からも「環境破壊が加速」「環境保護を進める世界的な潮流に逆行」と批判の声が上がった。(沖縄タイムス)
子供たちの未来のため闘う
【米軍シュワブ基地前ほか】
プラカードを手にデモ行進した喜納洋子さん(83)は「辺野古の自然環境が破壊されている現実に多くの国民が無関心だ。私たちは子供たちの未来のために闘い続ける」。(沖縄タイムス)
抗議船の船長を務めた女性(64)は「ここは政府も推進する生物多様性が詰まった場所だが、工事で木っ端みじんになる。地球全体に対する暴力だ」。(沖縄タイムス)
知念則男さん(74)は「政府のやり方は相変わらず。沖縄県民を平気でだましてくる」。
親盛節子さん(71)は「国のやり方が許せない。やりたい放題だ」。辺野古に足を運んで約10年。「定年後にやりたいことがたくさんあったが、未来の沖縄のためにも抗議し続ける」。八重瀬町の女性(72)は「復帰して50年余、沖縄だけ違う扱いを受けている。差別を感じる」。埋め立てに使用される土砂の採取場所に糸満市と八重瀬町があることに、「基地そのものも嫌だが、南部の土が使われるというのがさらに嫌だ」。(琉球新報)
沖縄市からゲート前に来た仲井間小夜子さん(95)は、大浦湾に石材が投げ入れられたことに「あまりにショックで言葉で出ない」。15歳のときロタ島で空襲に遭い、同級生が命を落とした。「生き残ってごめんねという気持ち。供養のためにも戦争につながる基地は造らせない」と涙を流しながら話した。(12日、沖縄タイムス)
ゲート前路上で抗議する宮古島出身の芳沢あきこさん(73)は「辺野古で死ぬまで抗議するために来た」、「戦争のための基地建設でなく、能登半島地震の震災支援など、国民のために膨大は国費を使ってほしい」。(12日、琉球新報)
【県関係国会議員コメント】琉球新報
沖縄の再戦場化につながる
伊波洋一参院議員(沖縄の風)「沖縄県民を無視して工事を強行することに抗議する。沖縄への基地強化はミサイル配備を含め、沖縄の再戦場化につながり許すことはできない」
屋良朝博衆院議員(立民)「合理性も経済性も有用性もない間違った事業が岸田政権によって代執行された。地方から自治を取り上げ、世界からサンゴの海を取り上げ、残るのは営々と続く巨額で無駄な公共工事と利権だけだ」
高良鉄美参院議員(沖縄の風)「『基地のない平和な沖縄』への県民の願いを踏みにじり、地方自治、『法の支配』を蔑ろにする政府の蛮行に憤りを禁じ得ない」
東アジアの平和に資する
西銘恒三郎衆院議員(自民)「知事は県民の平和と安全を守ることが第一。これ以上の分断は避けねばならない。辺野古移設が進むことは東アジアの平和維持に資すると確信する」
国場幸之助衆院議員(自民)「厳しい国際情勢下で、抑止力の維持と嘉手納基地以南の返還日の具体化等の負担軽減のあり方を、沖縄の尊厳を尊重し叡智を重ねる機会も必要」
【社説】
民主主義否定、将来に禍根
「政府の暴走、禍根を残す」-「政府の暴挙は民主主義の否定であり、後世に深い禍根を残す。岸田首相は沖縄の民意を足蹴にし、国策を強行した民主主義否定の内閣として歴史に刻まれよう。(普天間返還まで長期間を要し)その間は危険性が放置されるならば、県民にとって受け入れ難い不条理だ。しかも、在沖米軍高官は新基地完成後も普天間を使い続ける可能性を示唆している。2017年に、当時の稲田防衛相も国会で米側との返還条件が整わなければ、普天間の継続使用があり得ることを認めている」。(琉球新報)
「宝の海」失うもの大きい
「海と自治を壊す愚考だ」-「玉城デニー知事は埋立を承認していない。自治体の権限を奪う前例のない『強権』である。沖縄戦で激戦となった本島南部の土砂には戦没者の血が染み込んだ遺骨が混じっている可能性がある。『新たな基地建設に使用することは人道上許されない』との切実な声に国は耳を傾けるべきだ。米国の海洋学者らのNGOは辺野古・大浦湾一帯を生物多様性豊かな「ホープスポット」に選んだ。新基地建設はその生態系に不可逆的な変化を与える。世界有数の「宝の海」が代執行で埋め立てられようとしている。失われるものはあまりにも大きい」(沖縄タイムス)
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