【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年9月29日 (日)円高株安政争の具にする負け犬

植草一秀

すでに9月27日付ブログ記事
「総裁選裏側の自民長老優勝劣敗」
https://x.gd/T2c5S

メルマガ記事
「石破内閣経済政策と金融市場反応」
https://foomii.com/00050

に記述したが、自民党総裁選をめぐり金融市場が変動している。

27日の午後3時までは、高市早苗氏優勢の総裁選動向を背景に円安・日本株高が進行した。

しかし、決選投票で石破茂氏が逆転勝利したことを背景に円高が進行し、連動して日本株価が反落した。

高市氏を支援した勢力が怨嗟の声を上げ、株価下落を石破氏攻撃の材料に使う情報が流布されている。

まったく木を見て森を見ない論議。

高市早苗氏は自民党総務会長の役職を打診されたが固辞したと伝えられている。

幹事長以外は受けないとの意向を周囲の者が伝えているとの報道もある。

大人げない対応。

「敗軍の将、兵を語らず」

敗北は敗北であり、敗北を謙虚に受け止める姿勢が重要。

自民党再建に取り組む意思があるなら、どのような役職でも真摯に取り組むのがあるべき姿だ。

それでこそ未来が開ける。

 

総裁選敗北でふてくされるようでは未来が開けない。

総裁選で高市氏を推した勢力が選挙結果発表後の日本株価下落を懸命にアピールしている。

しかし、日本の経済政策は株価上昇のために存在するものでない。

筆者が発行している『金利・為替・株価特報』
https://uekusa-tri.co.jp/report-guide/

では、7月末の日銀政策決定会合後の為替市場、株式市場の乱高下について詳細な解説を執筆してきている。

そのなかで株価見通し等についても予測を示してきたが、概ね予測通りの推移を辿っている。

8月5日に株価が急落したことについて「STOCKVOICE」という専門チャンネルに登場したコメンテーターは日銀に対する恨み節を爆発させていたが笑止千万である。

日銀の金融政策正常化は適正かつ当然の政策対応だ。

私は7月31日会見で植田総裁が「引き続き政策金利を引き上げていくことになる」と発言したことは行き過ぎと論評した。

この点は日銀自身が金融市場の波乱を受けて修正したが、結果として一連の変動によって日本円大暴落が大幅に是正されたことは極めて有益だった。

日本円暴落は深刻な問題を引き起こしている。

日本円暴落で日本が外国資本に買い占められる事態が進行している。

これが日本の経済安全保障上の最大問題である。

経済安全保障担当相の高市氏が日本円暴落誘導の政策を提言している時点で経済安全保障担当相失格である。

 

為替変動に対する輸出製造業利益の感応度が高い。

このため、円安で株価指数が上昇、円高で下落の反応を示す。

高市氏だから株価が上昇し、石破氏だから株価が下落するのではない。

7月以降、顕著に観測されているのは日本株価が為替変動に過剰に反応するという現象である。

円安が進行すると日本株価が急騰し、円高に回帰すると日本株価が急落する。

これが繰り返されている。

輸出製造業は円安進行大歓迎だが、日本の経済政策は輸出製造業のために存在するものでない。

一般消費者、労働者、生活者は円安進行によって大きなマイナスの影響を受けている。

日本全体が外国資本に乗っ取られる事態も進行している。

購買力平価から激しく乖離した日本円大暴落を是正することが政府の重要な責務である。

株価下落は、石破氏が金融正常化を肯定し、金持ち優遇の金融所得課税見直しを示唆したことも影響していると見られる。

岸田首相は2021年の総裁選で金融所得課税強化を提示したが、株式市場が不安定化して、すぐに撤回した。

石破氏は9月28日のフジテレビ番組で

「今の金融緩和の方向性は、これから先も維持していかなければならない」

「金利をうんぬんかんぬんと言ってはいけない」

と述べて、政策金利の引き上げに慎重な姿勢を示した。

https://www.fnn.jp/articles/-/765577

適正な対応だ。

週明けの金融市場は徐々に落ち着きを取り戻すことになるだろう。

石破内閣は歪んだ経済政策を是正する責務を負う。

経済政策が株価上昇のために存在するものでないことを認識し、日本円暴落を回避する適正な経済政策を遂行することが求められる。

 

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スリーネーションズリサーチ株式会社
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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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