【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ウクライナ情勢シンポ㊤ 市民記者桑原亘之介さんのブログ

本記事は、2024年9月30日に開催されました、ISF主催公開シンポジウム「ウクライナ情勢の深刻化と 第三次世界大戦の危機」に出席された 桑原亘之介氏ブログ「ウクライナ情勢シンポ㊤」の転載原稿です。


 

2022年2月に表面化したウクライナ危機・紛争は現在も大きな犠牲を伴いながら続いている。状況はさらに深刻化しており、いまや核兵器の使用なども取りざたされている。
ISF独立言論フォーラムが主催する「ウクライナ情勢の深刻化と第三次世界大戦の危機」と題する公開シンポジウムが2024年9月30日(月)、全国家電会館(東京都文京区湯島3ー6ー1)で開かれたのに出席した。
登壇者は以下の5人:鳩山友紀夫元総理大臣、元外務省国際情報局長・孫崎享さん、一水会代表の木村三浩さん、青山学院大学の羽場久美子名誉教授、立命館大学の安斎育郎名誉教授。

上下二回にわけてレポートする。上ではウクライナ、ガザ、台湾を巡る紛争について、下では石破新政権の外交安保とりわけ対米関係、米大統領選と日本のメディアの問題についての話をお伝えする。
オンライン参加した立命館大学の安斎育郎名誉教授は「ウクライナ戦争はロシアによる侵略戦争ではなくアメリカの戦略戦争なのです」という。


安斎育郎・立命館大学名誉教授

「西側情報を信じてはいけません。いかにフェイクが多いことか」と警戒すべきだと述べた。
米国はウクライナへの支援を通じてロシアを戦争に巻き込んだが、「それはエネルギーをロシアに依存する欧州経済を混乱させ、結果として欧州諸国がアメリカにエネルギーを依存するようにした」と安斎名誉教授。
「米国の軍需産業はぼろもうけです」。

ウクライナの敗戦は必至

安斎名誉教授は「戦局をみるとロシアが優越しており、ウクライナが敗北することは必至です」。
先週中国で行われている国連の平和サミットに行ってきた羽場久美子・青山学院大学名誉教授は「平和を作るのは長年犠牲になってきた我々ですというグローバルサウスの人たちの熱い声を聞いてきました」と話す。

「オーストリアやヨーロッパの人たちからは我々はアメリカのslave(奴隷)に成り下がってしまったとの声がありました」。
「G7の時代はもう終わっているのです。新興国、グローバルサウスが戦争を止めようと思っても、そんなに簡単に米国や英国は潰れない」。
「米英は生き残りをかけてロシアと中国を潰そうとしています」。
ウクライナ、ガザ、台湾ーーすべての戦争はつながっているという。

羽場久美子・青山学院大学名誉教授

そもそもウクライナ戦争は止められたのだと元外務省国際情報局長の孫崎享さんはいう。安倍晋三首相(当時)はもしウクライナがNATO拡大にくみしないこと、東部2州の自治権を認めるならば戦争は起こらないと発言していたと孫崎さんは指摘。
「安倍さんは当時、日本で一番力を持っている人だったのに、彼の発言はほとんど報道されず、マスコミはこれを封じてしまった。安倍さんより力がある者(の意向だった)からです。それはアメリカです。これは非常に大きなポイントです」と孫崎さんは強調した。

孫崎享・元外務省国際情報局長

和平の機会を潰してきた米英

その後も和平・停戦の機会をことごとく潰してきたのは米英だという。
羽場名誉教授によると、2014年から15年にかけてドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領の提案でロシアとウクライナの間で両国間での緊張状態を止めるミンスク合意がなされた。
その時、ウクライナは時間稼ぎをしたのだが、背後にはアメリカがいて、ウクライナへの軍事支援を増強したと羽場名誉教授。
「アメリカの軍事援助によってウクライナ戦争は行われているのです」。
そして2022年3月、トルコが停戦提案をする。ウクライナが中立を宣言すれば戦争は終わるとしてプーチン露大統領もウクライナのゼレンスキー大統領もそれを認めた。しかし、それも実らなかった。

そしてガザを舞台にして悲惨さを増すイスラエルとパレスチナの戦争。
これはジェノサイドにほかならないとの声が上がった。
そして、「アラブ諸国がみなイスラエルに反対したら、情勢は非常に厳しくなる。アメリカが支援すれば決まるという時代は終わっている」と孫崎さんはいう。
「第三次大戦ということになると台湾情勢だが、これは簡単に解決するんです」と孫崎さん。
1972年の日中共同声明とそれを尊重するとした78年の日中平和条約、これらを守れば解決するので日本がこれを尊重し、アメリカも尊重すれば台湾海峡を巡る情勢は解決するというのだ。

つまり2つの中国を認めない、台湾は中国の一部であることを70年代に認めたことを再度確認するということだという。
「中国は2つの視点で見ています。中国のかつての版図、ここには台湾も含まれますが、ここには武器を使います。しかし、それ以外には使わない。つまり沖縄には武器を使わないということです。そういうことを曖昧にして中国に対する勢力を作ろうとしている」。

アメリカ追随の本質は損得勘定だけ
1989年の冷戦終戦後に日本は自分の頭で考える外交安保政策に転換する機会があったがダメにしてしまったと一水会の木村三浩代表。


一水会の木村三浩代表

自民党を下野させた細川護熙内閣でアサヒビールの樋口廣太郎会長率いるプロジェクトで安全保障政策を自前のものに変えていこうと検討していたが、「ちょっとすると潰された」という。
「自分の頭で考えていこう、自分たちの国と国民そしてアジアにおける平和を自分たちで考えるという方針だったが壊されてしまった。細川内閣が潰れて自民党が復権するとアメリカと取引してしまった」。
軍事費に大枚をつぎ込まなければ社会保障や教育にそのお金を回すことができるが今、岸田文雄政権がやっていることはその反対だと木村さん。「アメリカのように日本はやっていきますという覚悟を示している」。
その後の小泉純一郎首相などが米国追随一辺倒になったのは「実は、その本質は損か得かということであって、大義とか公平とかじゃないんです。アメリカの言っていることを後生大事に信じちゃう。だから平和は進まないんです」と木村さんは主張した。

同じ民族同士を争わせる米国

「世界は大きく変わりつつありますが、そうさせないために紛争を(アメリカは)作るのです。そして日本にその先頭を切らせようとしています」。
鳩山友紀夫元首相は「アメリカの意図は同じ民族同士を闘わせて弱体化させるというものです。ロシアとウクライナがそうだし、中国と台湾もそうなのです。どんなに人が亡くなろうとも軍産複合体が潤うから」と話す。
今、検討されているというロシア内深くまで届くミサイルの配備の問題についても発言が相次いだ。


鳩山友紀夫元首相

それはモスクワを直接攻撃出来ることになるが、そうしたらウクライナだけでなくミサイルを置くドイツもロシアを攻撃したとみなされるので絶対やってはいけないとドイツのシュレーダー元首相は鳩山元首相に今年3月に強く主張していたという。
羽場名誉教授も「アメリカはそれによってロシアの喉元にナイフ、銃を突きつけるようなことをやろうとしている」と話す。
すべての戦争はつながっており、ウクライナやガザの問題を解決できなければ次は東アジアだという見方を共有していた。
羽場名誉教授は「ガザへの攻撃を容認したら次は東アジアです。これはガザ以上に悲惨なものになる。AIの戦争となる。今後の東アジアの安定のためにはグローバルサウスとつながることが不可欠です」と話す。

ウクライナ情勢シンポ㊦ 市民記者桑原亘之介さんのブログ に続く

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