秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/13:原発事故は終わっていない
社会・経済気づいてみれば、今月で文筆家として25年目を迎え、この間20作品を著したのだが、「マルチハザード」や「ポリクライシス」などの語彙でもって、日本の重層的危機を告発し、主題として書き続けている作家は、(大変僭越だが)おそらく僕一人だけではないかと思う。
そのエレメント(危機の構成要素)の筆頭に挙げられるのは福島原発事故だが、もはやこれは「忘れさられたトピック」と化しているのだ。
政府マスコミはあたかも原発事故が収束したかの如く振る舞っているが、最悪状況を示す「レベル7」の指標は未だ解除されておらず、原子力緊急事態宣言は14年にもわたり発令されたままであり、溶融した核燃料の取り出しはことごとく失敗している。つまり「解決の目処は全く立っていない」のだ。
イギリスのタイムズ紙は福島原発の廃炉に200年を要するという記事を掲載したが(これですら楽観的な推論であり、研究者は1000年を要するとの見解であり)、この間にわたりデブリに接触した猛毒の汚染水が放出され続けるのだから、環境や人体への影響は想像を絶するものになるだろう。
すでに周辺海域で試験採取された海産物からは、基準値の数百倍もの放射性核種が検出されている。つまり生物濃縮が始まっているのだが、政府は規制するのではなく、緩和策によって流通を促しているのだ。
そしてそれが量販店や、外食産業や、学校給食などのルートに乗り消費されているのだから、(また被災地の米や野菜なども出荷されているのだから)、被曝病の蔓延はもはや避けられない状況なのである。
僕は原発事故の発生直後からブログや著書を通じ、旧ソ連政府がチェルノブイリ事故に対処したように、住民を避難させ、物流や移動を制限し(核物質が拡散しないように努め)、食品や飲料水の放射線基準を厳格にしなくてはいけない、と主張を繰り返してきたのだ。
しかしマスコミはそれをあざ笑うかのように、「食べて応援!」や「絆」などの科学性が担保されないスローガンを唱え、原発事故など大したことではないかのような印象操作を繰り返し、理性の無力化に狂奔した結果、最悪の原子力災害が亢進中である、という自明のリアリティが消滅したのだ。
そして今「仮説検証(予測した物事や状況の真偽を確かめること)」をしてみれば、被災地での(甲状腺異常、各種の癌、心臓病など)放射線由来の疾患は数百倍に増加しているが、これは旧ソ連の先行事例から全く分かりきっていたことなのだ。
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☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。