【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年10月9日 (水)衆議院解散で10月27日投開票

植草一秀

10月9日、党首討論実施後に衆議院が解散される。

日本国憲法第7条に基づく衆議院解散については疑義が持たれている。

〔天皇の国事行為〕
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
(中略)
三 衆議院を解散すること。
(後略)

衆議院解散の根拠はもう一つある。

〔不信任決議と解散又は総辞職〕
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

衆議院で内閣不信任案が可決された場合、内閣は衆議院を解散することができる。

他方、第7条は天皇の国事行為を定めた条文で、歴代内閣はこの条文を用いて衆議院解散を実行してきた。

衆議院の任期は4年だが、内閣が内閣の都合で勝手に衆議院を解散できるのかどうか。

疑義が示されてきた。

とはいえ、歴代内閣が7条の条文を用いて衆議院解散を実行してきたことは事実であり、現時点でこの問題を蒸し返しても意味はない。

今後、国会で議論を整理すべきである。

衆院総選挙は10月15日に公示され、10月27日に投開票日を迎える。

 

石破内閣が発足してメディアが新内閣攻撃を展開しているが、そこには大きな背景があることを見落とせない。

本来、新政権が発足する場合には、その政権に対する一定の敬意を示すのが習わし。

米国でも大統領就任直後の100日間は新大統領が提示する政策に一定の敬意を示す風習が存在した。

ハネムーンの100日と呼ばれる。

日本でも新たな総理大臣が誕生すると、とりあえずは新総理を好意的に紹介することが多かった。

ところが、いくつかの例外がある。

鳩山由紀夫氏が総理大臣に就任した際、メディアは好意的な報道を展開しなかった。

記録的に高い支持率を記録した政権であったのに、鳩山新総理を攻撃する報道が多かった。

今回の石破新総理に対しても新総理を攻撃する報道が目立つ。

最大の背景は日本の宗主国である米国の新総理に対するスタンスだ。

小泉純一郎氏が総理に就任したときはメディアが一斉に新総理を絶賛した。

宗主国米国にとって最善の総理が誕生したからである。

鳩山総理誕生をメディアが歓迎しなかったのは鳩山新総理が宗主国米国の意に反する総理だったからだ。

この文脈で考えると石破新総理を宗主国米国が歓迎していなということ。

米国は米国の命令に絶対服従の日本の総理を歓迎するのである。

 

重要なのは日本国民がこの背景を認識すること。

宗主国米国が歓迎しない総理は日本国民にとって貴重な存在である側面がある。

メディアに洗脳されて安易な判定を下すべきではない。

「アベノミクス」は異常な金融緩和政策を強行して日本円を暴落させた。

日本円暴落を歓迎しているのがハゲタカ資本である。

日本の優良な資産を半値で買い取ることができる。

安倍内閣が異常な金融緩和で日本円暴落を誘導したのはハゲタカ資本に対する利益供与の側面がある。

この面でも石破新内閣はにらまれる。

日銀による金融政策正常化を肯定している。

日本円暴落が是正されれば、日本の優良資産を半値水準で買い占めることができなくなる。

石破内閣の経済政策が激しく攻撃されているのは、このことが背景であると思われる。

総選挙に際して石破首相は一部の裏金議員を公認しない方針を示した。

当初、裏金議員も公認すると報じられたが、これに対して批判が沸騰。

結局、石破内閣は一部の裏金議員に公認を出さない方針を示した。

世論は一定の評価を与えることになるだろう。

野党は主権者の支持を得ていない。

自民党は議席を多く減らすと思われるが壊滅的敗北にはならないのではないか。

石破首相としては総選挙後に自民党を掌握することが重要になる。

石破自民惨敗と決めつけない方がよいと思われる。

 

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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