【櫻井ジャーナル】2024.10.14櫻井春彦 : ヒズボラがイスラエルの軍事施設を攻撃
国際政治ヒズボラは10月13日にもイスラエルの軍事施設を攻撃した。ヒズボラの力が衰えたようには見えない。
イスラエル軍は9月27日に南レバノンを約85発のバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)で攻撃、ハッサン・ナスララを含むヒズボラの幹部を殺害した。その報復としてイラン軍は10月1日に180機以上の弾道ミサイルを発射、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部などを攻撃している。
ミサイルが衛星で誘導されていなければ精度は落ちるが、モサドの本部から約300メートルの地点にミサイルが着弾していることは確認されている。軍事基地にも被害が出ているようだ。イスラエルが宣伝してきた防空システム、アイアン・ドームは機能していない。
イランの攻撃はイスラエルによる挑発攻撃への報復。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。
10月1日の攻撃に対し、アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「イランの攻撃には重大な結果が伴う」と語っているが、イランに対する報復は行われていない。攻撃の相手はレバノンばかりだ。しかも、イスラエル軍は地上部隊をレバノンへ軍事侵攻させたが、ヒズボラの待ち伏せ攻撃に苦しんでいる。
アメリカ主導軍は1991年1月にイラクへ軍事侵攻したが、サダム・フセイン体制を倒す前に停戦。欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、その直後に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツは怒り、イラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。(ココやココ)
ウォルフォウィッツが属すネオコンは1980年代からイラクのフセイン体制を倒して親イスラエル体制を樹立させ、イランとシリアを分断してシリアを体制を転覆させ、イランを弱体化させるというプランを持っていた。裏では、イラクをイスラエルの植民地的にして石油を確保するつもりだったとも言われている。現在でもアメリカ軍はシリアの油田地帯を不法占領しているが、その目的も同じだ。
2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、その出来事を利用してジョージ・W・ブッシュ政権は1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて世界制覇戦争を本格化させる。
この攻撃から10日ほどのち、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。そこのスタッフは攻撃する理由がわからないと口にしていたという。その6週間ほど後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。
そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。5年間に7カ国を破壊することになっていた。リストのトップに書かれているイラクが攻撃されたのは2003年3月、そして今、イランに矛先を向けている。
しかし、アメリカはイランに勝つことはできない。圧倒的に戦力が不足しているからだ。イラクでの経験から考えて、イランを占領するためにアメリカ軍は約240万人を投入する必要があると推計されている。予備役を投入してもアメリカ軍にそれだけの戦力はない。
イギリスの首相がリシ・スナックからキア・スターマーへ交代してからキプロスにあるイギリス空軍の基地からイスラエルへアメリカ特殊部隊を運ぶ頻度が倍になったと言われているが、それでイランに勝てるわけではない。
しかし、アメリカはイギリスの戦略を引き継ぎ、中東全域を掌握しようと考えている。その手先として機能しているのがイスラエルだが、今後、どうなるかは不明だ。アフガニスタンの管理を任せるために組織したタリバーンは自立し、アメリカの命令に従わなくなった。イスラエルではカルトが影響力を強め、コントロールが難しくなりそうだ。ウクライナではネオ・ナチを使っているが、ウクライナの敗北が避けられない状況の中、ネオ・ナチのコントロールが難しくなっている。
しかも、イランの場合はロシアや中国と同盟関係に入っている。イランがイスラエル/アメリカに攻撃された場合、ロシアや中国が傍観する可能性は小さい。すでにイランへはロシアの防空システムが持ち込まれている可能性が高く、イスラエル/アメリカの軍事侵攻を待ち構えているのだろう。
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