【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.10.01/櫻井春彦 : ロシアとの戦争で敗北必至の米英を中心とする好戦派はテロと核戦争で逆転を狙う

櫻井春彦

​ウクライナ軍は9月28日から29日にかけてボルゴグラードにある兵器庫を攻撃した発表​されたが、​数時間後にその発表を否定する報道​があった。9月29日に衛星が撮影した画像に兵器庫付近での火災は写っているものの、兵器庫の敷地内は燃えていない。しかも、兵器は地下深くにある。

 9月18日にはモスクワから北西約400キロメートルの地点にあるトロペツで大きな爆発があった。数百機のドローンによって兵器庫が攻撃されたと報道されている。ウォロディミル・ゼレンスキー政権によると、ウクライナの治安機関、情報機関、特殊部隊が実行したというが、ロシア軍は兵器を地下深くに保管しているため、ドローンでの攻撃では破壊できない。おそらく、兵器に損害は出ていないと見られている。

 アメリカやイギリスの好戦派はウクライナの敗北が明らかにしたくないはず。敗北が明らかにならなければ、どのように凄惨な状況でも勝利していると宣伝できる。何しろ彼らは圧倒的な宣伝マシーンを保有している。それを使い、人びとを騙し続けて時間稼ぎしたいのだろうが、戦況が大きく変化するとは思えない。

 アメリカをはじめとする西側の支援を受けたウクライナ軍だが、8年かけてドンバスの周辺に築いた要塞戦をロシア軍に突破され、敗走している。「攻撃」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人ほどの兵力でウクライナ軍はロシアのクルスクへ軍事侵攻した。

 当初、クルスクには国境警備隊しかいなかったことから装甲車両を連ねたウクライナ軍に攻め込まれたが、すぐにロシア側は航空兵力で反撃を開始、続いて予備兵力も投入されてウクライナ軍を包囲しながら殲滅している。

 侵攻軍にはドンバスから移動させたウクライナ兵のほかアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているとされているが、すでに1万数千人が死傷して戦線から離脱、投入された戦闘車両の半数以上が破壊されたようで、通常の戦闘でウクライナ軍が勝利することは困難な状況である。

 前線で戦うウクライナ兵の平均年齢は45歳と言われ、都市部では男性を拉致するチームが徘徊している。その様子はテレグラムで世界に発信されてきた。イスラエル軍に殺されたガザの子どもたちの映像もテレグラムで伝えられていた。西側がテレグラムを潰しにきたのは必然。そうした立場を理解できていなかった同社のCEOが賢いとは言えない。

 敗北が決定的なウクライナ軍はロシア領に住む住民を狙ったテロ攻撃を開始、メディアの見出しになる出来事を引き起こして戦争を演出しようとしている。全体の戦況がどうであろうと、局所的に「絵になる」出来事を引き起こせばプロパガンダ機関、つまり有力メディアで自国民を騙すことはできる。第2次世界大戦終盤の「大本営発表」のようなものだ。

 アメリカの外交や軍事の分野を支配してきたのはシオニストである。リチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚した後、副大統領から昇格したジェラルド・フォードの時代に台頭したネオコンもその一派だ。

 そのネオコンは「脅せば屈する」と信じている。1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見て確信に変わったようだ。その後、ロシア軍は南オセチアやシリアで動き、その強さを世界に示したのだが、ネオコンは今でもブラフで勝てると信じ、1992年2月に彼らが作成した世界制覇プランに執着している。

 そのプランに従い、2004年から05年にかけての「オレンジ革命」、13年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターでウクライナを植民地化することに成功、東部や南部のロシア語圏に住む人びとを殺害、追い出しにかかったのだが、抵抗にあい、その目的を達成できていない。2022年春にはドンバスに対する大規模な攻撃を計画していたようだが、その前にロシア軍が動き、計画は失敗。その直後にウクライナ政府は停戦しようとロシア政府と交渉を開始したが、それをアメリカやイギリスが潰した。

 2022年2月にロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた直後、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はイスラエルやトルコを仲介役としてロシアのプーチン政権と停戦交渉を開始、3月5日には停戦が内定、仲介していたイスラエルナフタリ・ベネット首相はドイツへ向かい、シュルツと会っている。

 ところが、その3月5日にウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。現在のSBUはCIAの下部機関だ。

 4月9日にはイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。

 それ以降、ウクライナでの戦闘はロシア軍とNATO軍の戦いという様相を強めていき、ロシア軍の報復攻撃の質も変化してきた。最近は西側が送り込んだ特殊部隊員、傭兵、オペレーターなどをターゲットにするようになっている。

 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃した際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。

 そこで、アメリカの国務省や安全保障部門、あるいはイギリス政府はウクライナに長距離ミサイルを供与し、ロシアの深奥部を攻撃させようとしているが、今のところアメリカの国防総省がブレーキをかけているようだ。そこでウクライナ軍は西側の支援を受けながらドローンなどで攻撃、メディアで勝利を宣伝している。

 彼らが最後に使う脅しは核戦争。核戦争で脅せばロシアも中国も屈服するとネオコンは今でも信じている。ルビコンを渡り、負けるわけにはいかない彼らは信じるしかないのだろうが、その先には核戦争による人類の死滅が待つ。それを黙示録カルトは願っている。

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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/

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