鈴木宣弘東大大学院教授が語る「食料安全保障」日本の農と食を潰す洗脳を解く(紙の爆弾2024年11月号掲載)
社会・経済政治#有事立法 #食料自給率 #輸入関税撤廃 #備蓄米 #コオロギ食 #水田稲作への攻撃 #ダボス会議 #ゲノムトマト給食 #三里四方
「紙の爆弾」4月号で残留農薬・人工肉の問題や、食料・農業・農村基本法改悪について解説した鈴木宣弘東大大学院教授が5月21日に横浜市で行なった講演「大人が学び考えよう『食の安全保障をどう守るか』」(豈プロジェクト主催)の内容を編集部でまとめた。現在のコメ価格高騰の〝真犯人〞と、事態が示す真の危険性も見えてくる。(構成・文責/本誌編集部)
米国と経産省の思惑が一致
まず、日本の食料安全保障の問題から始めたいと思います。
低すぎる食料自給率は、なぜそうなったのか。
一番の理由はアメリカとの関係です。
アメリカでは戦後、膨大な農産物が余りました。それをどこで処理するか、日本が処分場の役割を果たすことになりました。
米(コメ)以外の農産物の関税が実質的に撤廃させられ、アメリカの農産物がどんどん日本に入ってきた。
日本の麦や大豆、トウモロコシの生産は壊滅しました。
それでも、アメリカにとって都合が悪いことが1つありました。
それは日本人の主食が米だということです。アメリカの小麦が胃袋に入れられない。
そこで回し者の学者も使われて「米を食べると頭が悪くなる」という内容の本(林髞著『頭脳才能をひきだす処方箋』光文社カッパブックス/1958年刊。著者は慶應義塾大学医学部生理学教授)が出て、大ベストセラーになりました。
このような洗脳政策で、私たちはアメリカの食料への依存症にどんどん冒されました。
日本国内の勢力もこれをうまく活用しました。経済産業省(旧通産省)が中心の経済政策です。
経産省と農林水産省は犬猿の仲。農水は私が15年勤めた省ですか、まだ人がいい。
対して経産省は優秀な者は多いが、ずる賢くて手が早い(これは褒め言葉です)。
賢い経産省は「アメリカを喜ばせばいい」と考えた。
だから食料の輸入関税の撤廃を進めた。
その代わりに日本は自動車などを輸出して、そのお金で食料を安く買えばよいと考えた。
そして、これを「食料安全保障」と呼び、その流れを強めてきました。
もう1つの問題は、財務省(旧大蔵省)です。彼らは税金の取り立てばかりやっていますが、それを国民のために使っているのか?
1970年時、当時の農林省の予算は1兆円近くありました。その規模は防衛予算の2倍ほど。
それが50年以上経った現在、農業予算2兆円に対して防衛予算は10兆円規模に膨れ上がっています。
ちなみに再生エネルギーの買い取りで、事業者に支払われている金額が4.2兆円。これだけで農水省予算の2倍です。
軍事と食料とエネルギーは「国家存立の三本柱」といわれるものの、命を一番に守る大事な要かなめは食料です。その食料の予算だけがどんどん減らされてきた。
これでは、農業が苦しめられ、輸入が増えて自給率が低下するという流れは止められません。
食料は安全保障の基本
そうした中で、私が「クワトロショック」と呼んでいる4つのショック、すなわち①コロナ・ショック②中国の爆買い③異常気象の通常化④紛争リスクの高まり、が起き、食料とその生産資材が海外から調達しにくい世界的危機が続いています。
食料は武器です。ロシアやベラルーシはもう日本に農産物を売ってくれません。世界の穀倉地帯であるウクライナの土地は破壊されました。
一番深刻なのは、食料の囲い込みです。
インドのように麦や米の生産において世界で1、2位を争う輸出国が、自国民を守るために輸出を止めた。
今や世界の30カ国ほどが食料の輸出を止めています。これで大変になってきたのが日本の農業です。
まず、餌と穀物が十分に手に入らない。
酪農畜産農家は餌の価格が2倍に上がったためにどんどん倒産しています。
もっと深刻な問題は化学肥料です。肥料の原料を日本はほぼ100%輸入に頼ってきました。
それが当たり前だと思っていた。
ところが今では中国もロシアも売ってくれずお手上げです。
これで日本の慣行農業が重大な岐路に立たされています。
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東京大学大学院農学生命科学研究科教授