【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.10.17/櫻井春彦 : 兵器だけでなく兵士も底を突いたウクライナは自らの惨状をロシアへ投映

櫻井春彦

​ ​朝鮮が兵士1万人をロシアへ派遣したとウクライナのメディア、キエフ・インディペンデントが伝えた​。「この問題に詳しい西側外交官」の情報だというのだが、その話を裏付ける証拠や根拠は示されていない。その怪しげな話をウォロディミル・ゼレンスキーも主張している。

 アメリカが東アジアにおける軍事的な緊張を高める中、ロシアは朝鮮との関係を強化しているが、そうした朝鮮軍派兵の話をウラジミール・プーチン大統領の報道官は否定、ドミトリー・ペスコフ外相は偽情報だと一蹴している。

 ウクライナにおける戦闘はアメリカ/NATOの傀儡軍とロシアとの間で行われているのだが、戦況は圧倒的にロシアが優勢。ウクライナ軍だけでなくアメリカ/NATO全体の兵器が枯渇している。

 当然のことながら多くのウクライナ兵が死傷、​イギリスのベン・ウォレス前国防大臣は昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘​。街中で兵士にできそうな男性が徴兵担当者に拉致される様子が撮影され、世界に発信されている。西側諸国はウクライナ人に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦え、つまり「総玉砕」しろと命じているが、それでは追いつかない。

 アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵がウクライナ軍へ加わり、相当数の死傷者が出ている。アメリカのやり方を考えると、朝鮮の名前を出してきたのは東アジアからも戦闘員がウクライナ軍へ参加しているのかもしれない。

 8月6日には1万人から3万人ほどの兵力でウクライナ軍がロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、この作戦は西側でも無謀だと言われていた。戦力不足を補うため、この侵攻部隊にもアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているが、壊滅的な状況だ。

 ウクライナ軍はクルスクでの作戦に参加させるため、残り少なくなった精鋭部隊を投入しただけでなく、ドンバスから部隊を回したのだが、ロシア軍はドンバスから部隊を移動させることなく予備部隊を投入して対応。その結果、ドンバスでロシア軍の進撃スピードが高まった。8月以降、ウクライナ軍の死傷者数はそれまで以上に膨らんでいる。それを誤魔化すため、アメリカ政府は主語を入れ替え、「ウクライナ」を「ロシア」にしているようだ。ロシア軍はクルスクに侵攻したウクライナ軍を包囲し、ドンバスの接触線沿いの村や町を数多く占領している。

 バラク・オバマ政権が始めたロシアとの戦争は悲惨なことになっているのだが、オバマ政権の副大統領はジョー・バイデンにほかならない。そのバイデンが大統領に就任してから対ロシア戦争を本格化させた。ルビコンを渡ったのだ。その戦争にアメリカが負けていることを選挙前に認めることはできない。

 アメリカのニューズウィーク誌によると、ウクライナでロシア軍が発射している砲弾の数はウクライナ軍の4倍だというが、これは生産力の差でもある。現在、ロシアの生産力はアメリカ/NATO諸国の数倍だと言われている。必然的にウクライナ兵の死傷者数はロシア兵の死傷者数より多くなる。ロシア兵の死傷者数はウクライナ兵の1割程度というのが常識的な見方だ。

 ロシアが朝鮮やイランから兵器を調達する必要はないのだが、ロシアが両国との関係を強化していることは事実だ。プーチン大統領は6月に朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結した。政治面だけでなく軍事面でも両国は連携することを定めている。

 アメリカはオーストラリアやイギリスとAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めているが、そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示したとも言える。

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