【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月16日):2024年10月1日、ジュリアン・アサンジによる欧州評議会総会でのスピーチ、ポール・クレイグ・ロバーツによるコメント付き

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

<ジュリアン・アサンジのスピーチ>

「議長、欧州評議会の皆様、そしてご列席の皆様。

最高警備刑務所での長年の監禁から、46カ国と7億人の代表者の前でここに立っているという状況への変化は、非常に劇的で非現実的な変化です。

狭い独房で長年孤独を経験することを、言葉で伝えるのは簡単ではありません。それは自己の感覚を奪い、存在の生々しい本質だけを残します。

私は、自分が経験したことについて、まだ十分に語る準備ができていません。生き残るために、肉体的にも精神的にも必死に闘ったこと、また、絞首刑、殺人、医療の怠慢によって死亡した仲間の囚人たちのことについても、まだ語ることはできません。

私の言葉がもつれ、このような栄えある場において皆さまの期待されるような洗練された発表ができないかもしれません。あらかじめお詫び申し上げます。

孤立は私に大きな影響を齎しました。私はそれを解消しようとしており、こんな状況で自分を語るのは容易ではありません。

しかし、この機会の重大性と目前の問題の重要性を考えれば、私は自分の懸念を脇に置いて、皆さんに直接お話せざるを得ません。私は今日、文字どおり、そして比喩的にも、皆さんの前に立つために長い道のりを旅してきました。

話し合いや皆さんからの質問に答える前に、私はPACE(欧州評議員総会)の2020年の決議 (2317) [https://pace.coe.int/en/files/28508/html] に感謝したいと思います。この決議は、私の投獄がジャーナリストにとって危険な前例を作ったと述べ、国連拷問に関する特別報告者が私の釈放を求めたことを指摘しました。

また、米国当局者が私の暗殺について話し合ったという信頼できる報告に懸念を示し、改めて私の即時釈放を要求したPACEの2021年声明[https://pace.coe.int/en/news/8446/pace-general-rapporteur-expresses-se]にも感謝しています。

私は、法務・人権委員会が著名な報告者であるスンナ・エヴァルスドッティル(Sunna Ævarsdóttir)に、私の拘禁と有罪判決をめぐる状況と、それに伴う人権への影響を調査するよう依頼したことに賛辞を送ります。

しかし、私の場合、国会議員、大統領、首相、ローマ法王、国連職員や外交官、労働組合、法律家や医療関係者、学者、活動家、あるいは一般市民など、数多くの人々による取り組みの多くと同様に、そのどれもが必要なものではなかったはずです。

過去14年間の声明、決議、報告、映画、記事、イベント、募金活動、抗議、手紙などは、どれも必要なかったはずです。しかし、それらすべてが必要だったのは、それらなしでは私は日の目を見ることはなかったからです。

このような前例のないグローバルな取り組みが必要とされたのは、法的保護が存在していたにもかかわらず、その多くが紙の上にしか存在していなかったり、合理的な時間枠ではまったく効果を発揮していなかったためです。

私は結局、実現不可能な正義よりも自由を選びました。何年も勾留され、有効な救済措置もないまま175年の刑に直面した後でした。米国政府が司法取引の合意書に、私が欧州人権裁判所に提訴できないこと、また、米国政府による私の扱いについて情報公開法に基づく請求さえできないことを明記したため、私にとっての正義はもはや実現不可能となりました。

はっきりさせておかねばなりません。私が今日自由の身であるのは、この制度が機能したからではありません。何年もの投獄を経て、私はジャーナリズムを理由に有罪を認めたのです。私は情報源から情報を入手したことを有罪と認めました。そして、私はその情報を人々に伝えたことを有罪と認めました。それ以外のことについては、私は有罪を認めていません。私の今日の証言が、現行の保護措置の弱点を浮き彫りにし、目立たないものの、同様に脆弱な立場にある人々を救う一助となることを願っています。

ベルマーシュの地下牢から出てきた今、真実は識別しにくくなっているように見えます。そして、真実を表現することの土台が破壊され、攻撃され、弱体化され、縮小されてきた期間に、どれだけ多くの基盤が失われたかを思うと後悔の念に駆られます。

私は、真実を語ることに対するより多くの免罪、より多くの秘密主義、より多くの報復、そしてより多くの自己検閲を目にしています。米国政府が私を起訴したこと、すなわちジャーナリズムを国際的に犯罪化するというルビコン川を渡る行為から、表現の自由が冷え込んでいる現在の状況に繋がりを見出さないのは難しいでしょう。

私がウィキリークスを創設したとき、それは単純な夢からでした。世界がどのように機能しているのかを人々に教育し、理解を通じてより良い何かをもたらそうという夢です。

今いる場所の地図があれば、どこに行くかもわかります。

知識は私たちに力を与え、権力者を監視し、正義が存在しない場所で正義を要求することを可能にします。

私たちは、戦争による何万人もの隠れた犠牲者や目に見えない恐怖、暗殺、国家間秘密移送、拷問、大規模監視の計画についての真実を入手し、公表しました。

私たちは、これらの出来事がいつ、どこで起こったのかを明らかにしただけでなく、その背景にある政策、合意、構造を明らかにしたのは一度や二度ではありません。

米国のアパッチヘリコプターの乗組員が、イラク人ジャーナリストとその救助者を前のめりに粉々に吹き飛ばしている悪名高い銃カメラ映像 「巻き添え殺人」 を発表したとき、現代戦争のこの視覚的現実は世界に衝撃をあたえました。

しかし、私たちはまた、この動画への関心を利用して、米軍がイラクで致死的な武力を展開する時期や、上部組織からの承認を得なくても何人の民間人を殺すことができるかについての機密政策に人々の意識を向けることになりました。

実際、私が受けることになっていた175年の刑期のうち、40年はこれらの政策を取得し公開したことに対するものでした。

世界の汚い戦争や秘密工作にどっぷりと浸かった後で私が抱いた現実的な政治的展望は単純なものでした。お互いに箝口令を敷いたり、拷問をしたり、殺し合ったりするのはやめましょう。この基本を正しくすれば、他の政治的、経済的、科学的プロセスが残りの部分を処理する余地ができるでしょう、というものです。

ウィキリークスの活動は、この欧州評議会が掲げる原則に深く根ざしたものでした。

情報公開と国民の知る権利を向上させたジャーナリズムは、ヨーロッパで自然な活動の場を見出しました。

私はパリに居住し、フランスとアイスランドで正式な法人登録を行なっていました。ジャーナリストや技術スタッフはヨーロッパ各地に散らばっていました。フランス、ドイツ、ノルウェーに拠点を置くサーバーから世界に向けて発表していました。

しかし、14年前、米軍はイラクに駐留していた米国の情報分析官で、内部告発者とされるマンニング上等兵を逮捕しました。

米国政府は、私と私の同僚たちに対する調査も同時に開始しました。

米国政府は、違法に工作員をアイスランドに派遣し、情報提供者への賄賂を支払って、ウィキリークスの法的およびジャーナリズムの成果物を盗み、正式な手続きを経ることなく、銀行や金融サービスに圧力をかけて、ウィキリークスの口座を凍結し、契約を解除するように仕向けました。

英国政府もこの報復の一部に加わりました。欧州人権裁判所で、英国政府は、この期間に私の英国顧問弁護士(複数)を違法にスパイしていたことを認めました。

結局、この嫌がらせは法的に根拠のないものでした。オバマ大統領の司法省は、犯罪がなかったことを認め、私を起訴しないことを選択しました。

米国はこれまで、政府情報の公開や入手を理由に出版社を起訴したことは一度もありません。そのようなことを行なうには、米国憲法の根本的な、そして厄介な再解釈が必要となります。

2017年1月、オバマは、同時に、私の情報源の1人であるとして有罪判決を受けていたマニングの刑期も短縮しました。

しかし、2017年2月、状況は劇的に変化しました。トランプ大統領が選出されたのです。彼は、カンザス州選出の下院議員で、元軍需産業幹部のマイク・ポンペオをCIA長官に、また、元CIA局員のウィリアム・バールを司法長官に任命しました。彼らは、MAGA(Make America Great Again)帽子をかぶった2匹のオオカミでした。

2017年3月の時点で、ウィキリークスはCIAによるフランスの政党への浸透、フランスおよびドイツの指導者に対するスパイ行為、欧州中央銀行、欧州経済省に対するスパイ行為、そしてフランス産業全体に対するスパイ行為の常態化を暴露していました。

私たちは、CIAによる膨大な不正ソフトウェアやウイルスの作成、供給網の破壊、アンチウイルスソフトウェアの破壊、自動車、スマートテレビ、iPhoneの破壊を明らかにしました。

CIA長官ポンペオは報復キャンペーンを開始しました。

ポンペオの明確な指示の下で、CIAがロンドンのエクアドル大使館内で私を誘拐し暗殺する計画を立て、私のヨーロッパの同僚を追跡することを許可し、私たちがやっていることは窃盗であり、ハッキング攻撃であり、虚偽だとの情報を広めたことは、今や公になっています。

妻と幼い息子も狙われました。私の妻を追跡するためにCIAの要員が永続的に割り当てられ、生後6カ月の息子のおむつからDNAを入手するよう指示が出されました。

これは、米国の報道機関に語った30人以上の現職および元米国情報当局者の証言であり、さらに、関与したCIA工作員の一部に対する起訴で押収された記録によって裏付けられています。

CIAが、積極的な超法規的・治外法権的手段を通じて、私や私の家族、私の仲間を標的にしたことは、強力な諜報機関が国境を越えた弾圧にどのように関与しているかについての、普通では知り得ないようなことも教えてくれます。このような抑圧は珍しいことではありません。特異なのは、多くの内部告発者とスペインの司法調査のおかげで、私たちはこの件について非常に多くのことを知っているということです。

この欧州評議会は、CIAによる国境を越えた権限乱用と無縁ではありません。

ヨーロッパにおけるCIAによる「身柄引き渡し」に関するPACEの画期的な報告書は、CIAがヨーロッパの地で秘密収容所を運営し、違法な身柄引き渡しを行なっていたことを暴露し、人権と国際法を侵害していたことを明らかにしました。

今年2月、CIAに関するいくつかの暴露情報の情報源とされる元CIA職員ジョシュア・シュルテは、極度の隔離状態のもとで40年の実刑判決を受けました。

彼の房の窓はすべて遮光カーテンで覆われ、ドアには24時間、騒音発生装置が取り付けられており、大声で叫んでも外には聞こえないようになっています。

これらの状況は、グアンタナモ刑務所で見られるものよりもさらに厳しいものです。

国境を越えた弾圧は、法的手続きを悪用することでも行使されます。

このことに対する有効な保護手段がないため、欧州は、欧州内の反対派を追及するために、外国勢力によって相互法的支援や引き渡し条約が乗っ取られる危険にさらされています。

マイク・ポンペオの回顧録を私は刑務所の独房で読みました。その中で、CIAに関する私たちの発表を受けて、ポンペオ前CIA長官が司法長官に私に対する身柄引き渡し訴訟を起こすよう圧力をかけたことを自慢していました。

実際、ポンペオの執念が実り、オバマが終結させた私に対する捜査を米国司法長官が再開し、マンニングを証人として再逮捕しました。

マニングは1年以上も刑務所に収監され、私に対する不利な証言を強要しようとする正式な試みとして、1日あたり1,000ドルの罰金を科せられました。

彼女は結局、自らの命を絶とうとしました。

通常、私たちはジャーナリストに情報源を証言させるよう強制する試みを思い浮かべます。しかし、この場合、情報源であるマニングが、ジャーナリストに不利な証言を強制される立場となりました。

2017年12月の時点で、CIA長官のポンペオは自分の思いどおりに事を運び、米国政府は私の身柄引き渡しを英国に要請する令状を発行しました。

英国政府は、さらに2年間、この令状を国民に秘密にしておき、英国政府、米国政府、そしてエクアドルの新大統領は、私の逮捕に向けた政治的、法的、外交的な基盤を整えるために動いていました。

強力な国家が自国の国境を越えて個人を標的にする権利があると考える場合、強力な保護策が整備され、それを執行する意思のある国家が存在しない限り、その個人に勝ち目はありません。それらがなければ、国家による侵略者が投入できる膨大な物的資源に対して、個人が自分自身を守る望みはありません。

私の事例がまだ十分に悪いとはいえないにしても、アメリカ政府は危険な新たな国際法的立場を主張しました。アメリカ市民だけが自由な発言の権利を持っているとされ、ヨーロッパ人や他の国籍の人々には自由な発言の権利がないというのです。しかし、アメリカは、そのスパイ法がどこにいても彼らに適用されると主張しています。したがって、ヨーロッパにいる人々は、アメリカの秘密法に従わなければならず、アメリカ政府に関しては何の防御もないのです。パリにいるアメリカ人は、アメリカ政府が何をしているかについて話すことができるかもしれません。しかし、パリにいるフランス人がそれについて話すことは、いかなる防御もなく犯罪となり、私と同様に引き渡される可能性があります。

今、ひとつの外国政府が公式に「ヨーロッパ人には言論の自由はない」と主張したことで、危険な前例が作られてしまいました。他の強力な国家も、必然的にこれに追随するでしょう。

ウクライナでの戦争により、ロシアではすでにジャーナリストが犯罪者扱いされていますが、私の身柄引き渡しで示された前例に基づき、ロシアやその他の国が、秘密保持法が侵害されたと主張して、ヨーロッパのジャーナリスト、出版社、さらにはソーシャルメディア利用者を標的にすることを止めるものは何もありません。

欧州域内のジャーナリストや出版社の権利は深刻な脅威にさらされています。国境を越えた弾圧が、欧州で当たり前になってはなりません。

世界に2つある重要な基準設定機関の1つであるPACEは行動を起こさなければなりません。報道収集活動の犯罪化は、あらゆる場所での調査報道に対する脅威です。

私は、ヨーロッパに滞在中に、ある外国に関する真実の情報を求めたこと、受け取ったこと、そして公表したことで、その強国(アメリカ)によって正式に有罪判決を受けました。

根本的な問題は単純です。ジャーナリストは、仕事をしているという理由で起訴されるべきではありません。
ジャーナリズムはけっして犯罪ではなく、自由で開かれた社会の柱です。

議長、そして各国代表の皆様、もしヨーロッパに、真実を語る自由や真実を公表する自由が一部の特権ではなく、すべての人に保証された権利となる未来が欲しいのであれば、私の事例で起こったことが二度と誰にも起こらないよう行動しなければなりません。

私は、この試練の期間中、私を支援してくださった保守党、社会民主党、自由党、左派、緑の党、無所属の議員の方々、そして、私の釈放を粘り強く主張してくださった数え切れないほどの個人の方々に、この場を借りて心より感謝申し上げます。

イデオロギーや利害によって分断されがちな世界にあって、人間にとって不可欠な自由を守るという共通の誓いが残っていることは心強いことです。

表現の自由と、そこから派生するあらゆるものは、暗い岐路に立たされています。PACEのような規範設定機関が事態の深刻さに目を覚まさなければ、手遅れになるのではないかと危惧しています。

自由の光が決して消えないように、真実の追求が生き続けるように、そして多くの人の声が少数の利益によって沈黙されないように、私たち全員が自分たちの役割を果たすことに尽力しましょう」 。

https://youtu.be/Aj0pD5k9uLw

<PCRのコメント>

ジュリアン・アサンジがスウェーデン、英国、米国の政府の手で苦境に立たされた長年にわたる期間、私は、アサンジに対するすべての告発が虚偽であることを、私が持っていた情報の範囲内で暴露してきた。これらのでっちあげの告発や攻撃は、彼がスウェーデンの女性2人をレイプしたという嘘から、汚職にまみれたエクアドルの後任大統領が米国からの多額の融資と引き換えに、亡命とエクアドル国籍を取り消したこと、英国の「司法」がアサンジに対して人身保護令状の保護を否定したこと、そして、 そして、多くの人々と同じく、私見では、罪状も有罪判決もないにもかかわらず、アサンジを何年も独房監禁にすることで彼を殺そうとしている英国の「正義」、CIAがトランプ大統領の任命した2人の腐敗した高官であるポンペオとバールを利用して、ジャーナリストであるという罪でアサンジを起訴したことなど、すべてにまたがっている。

アサンジのスピーチを読んで、私はこれが氷山の一角に過ぎないことに気づいた。米国政府がアサンジに行なったことは、ディストピア小説にも登場しないほどひどい。

アサンジのスピーチを読み、そして、自分が自由で民主的な国に住む自由な人間であり、説明責任のある政府があり、正義、慈悲、誠実さ、道徳、法の支配がある国に住んでいると、どうして信じることができるのか、自問してみてほしい。

また、彼の起訴のための法的根拠がないので、アサンジを起訴するすべての試みを取り下げたのはオバマ政権下の司法省であり、CIAの圧力の下で事件を再開したのはトランプ政権下の司法省であったことも忘れてはならない。記憶が正しければ、西側ジャーナリズムを構成する売春婦のような輩はアサンジに反対し、つまりこの愚か者たちは自分たちの職業に反対し、保守派の評論家たちはアサンジをロシアのスパイだと非難した。裏切り者を捕まえろ、裏切り者を捕まえろ、と売春婦のようなマスコミや保守派の評論家は叫んだ。

欧州評議会からの圧力と、個人からの寄付によるアサンジの弁護士への資金提供により、CIAはアサンジが「ジャーナリズムを行なったことで有罪」であるという彼の嘆願を受け入れた。私たちは笑うかもしれないが、CIAがやったことは、真実で客観的なジャーナリズムを犯罪化し、それを正式な言説の強制に置き換えるための前例となる可能性がある。アサンジ自身は「ジャーナリストであることに罪を認めた」と言っている。この有罪申し立ては、ジャーナリズムが犯罪である、と言っているのだ。

「偉大なる自由民主主義国家、世界の光」であるアメリカで、今回のアサンジへの措置を理解しようとする人がどれほどいるだろうか。ワシントンがロシアを核戦争寸前まで挑発していることを理解している人はほとんどいないし、アメリカ人の大半は、イスラエルが「イスラム教徒のテロリスト」と再定義したパレスチナ人に対するイスラエルによる容赦ない虐殺を支持しているようだ。

もし人々が無頓着さから解放され、真実と理解に辿り着くことができたとしよう。そのとき人々は、政治的指導者なしで何ができるだろうか?

人々の指導者たちはどこにいるのか? 私が名前を知っているのはドナルド・トランプとマリーヌ・ル・ペンの2人だけだ。 これらの国民の代表者たちに対して、支配体制はどのように反応したのか? トランプは「自由と民主主義」の米国政府によって、4件の刑事告発を受け裁判にかけられている。ル・ペンはフランス民族の代表者として裁判にかけられている。公式の罪状は資金横領だが、彼女のフランス民族国家擁護の主張は、DEI*という支配的イデオロギーでは人種差別主義者となる。それが彼女に対する本当の罪状である。
DEI*と・・・多様性・公平性・包括性 (Diversity, equity, and inclusion)は、すべての人々、特に歴史的に過小評価されてきたグループやアイデンティティや障害に基づいて差別を受けてきたグループのフェアな扱いと完全な参加を促進するための組織的なフレームワークである。(ウィキペディア)

この2人の指導者はどの程度優秀なのだろうか? ル・ペンはかなり優秀なのは間違いない。彼女は長年、激しい攻撃に耐えてきたし、その政党は成長している。おそらくフランス最大の政党だろうが、支配層はそれを政権に就かせない段取りをしてきた。ル・ペンは毎年、裁判にかけられているような感じだ。

トランプは新参者だ。彼は1期目に、打倒するつもりだと思っていた支配体制の代表者たちに愚かにも囲まれて、自分自身が負けてしまった。反対に支配層が彼を倒した。

トランプは、ポンペオやバールのようなゲシュタポ工作員を任命し、唯一まともな人事であったフリン将軍の弁護を拒否したことで、ワシントンを学んだと主張している。しかし、彼は何を学んだのだろうか? 彼は、支配層は大統領よりも権力があり、2度目の大統領選に出馬するなら支配層と仲良くすべきことを学んだのだろうか?

指導者というのは稀にしか現れない。たとえ現れたとしても、民衆の支持を当てにすることはできない。キケロは、ローマの財務官、元老院議員、法務官、法務顧問として、自滅の危機に瀕したローマ市民をまとめようとしたが、その代償として命を落とした。

トランプはアメリカ国民に権力を戻そうとしたが、そのために4件の刑事起訴という罰を受けた。

ル・ペンはフランスの民族性を代表しようとしているが、常に法的な嫌がらせを受けている。

人々自身が自分たちの権利への関心を失い、それを取り戻すために戦う気になれないとき、彼らは自由を失う。

今日、米国では、そして西側諸国全体でも、支配体制の言説や政策に公然と反対するすべての人々に対して、法律が武器として使用されている。法律が国家の手に落ちた今、なぜ民主党は、その武器を手にしているにもかかわらず、選挙でそれを自分たちの手元から奪われることを許すだろうか?

沈没船は進路を変えることはできない。

もし民主党が3度目の国政選挙を盗み、アメリカ国民が再びそれを容認するようなことがあれば、もう次の選挙は行なわれないだろう。アメリカ人は暴政のルビコン川を渡ってしまうのだ。高齢のアメリカ人は遅ればせながらもそれに気づくだろう。暴政のもとに生まれた若い世代は、自由を経験したことがないため、失われたものが何なのかもわからないだろう。こんな風に自由は死んでゆくのだ。

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※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月20日)「2024年10月1日、ジュリアン・アサンジによる欧州評議会総会でのスピーチ、ポール・クレイグ・ロバーツによるコメント付き」http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2745.html
空の転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Julian Assange’s Address to the Parliamentary Assembly of the Council of Europe on October 1, 2024, with Comment by Paul Craig Roberts
出典:PCRブログ 2024年10月1日
https://www.paulcraigroberts.org/2024/10/06/julian-assanges-address-to-the-parliamentary-assembly-of-the-council-of-europe-on-october-1-2024-with-comment-by-paul-craig-roberts/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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