【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.10.30/櫻井春彦 : ウクライナでロシアを勝たせたくない欧米は朝鮮の話を使って軍事介入の可能性

櫻井春彦

 朝鮮軍の兵士がウクライナへ部隊を派遣したという話を広げようという動きが強まっているが、いつものように、証拠や根拠は示されていない。ロシアとの戦争に積極的な姿勢を見せているNATOの新しい事務総長、マーク・ルッテはロシアに派兵された朝鮮軍部隊がロシアのクルスク地域に配備されたことを確認したと主張しているのだが、どのように確認したのかは不明。そもそもクルスクはロシアだ。

 この怪しげな話を流し始めたのは韓国のようだが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やアメリカ政府の好戦派も同調している。ウクライナでの戦闘でアメリカ/NATOがロシアに敗北したことは明確で、東部戦線ではロシア軍の進撃が続いている。

 1万人から3万人ほど兵力でウクライナ軍は8月6日にクルスクへ軍事侵攻したが、ロシア軍の反撃により、すでに2万数千人が戦死していると見られ、残った部隊はロシア軍に包囲された。

 兵器も兵士も不足しているウクライナ軍にはアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドなどの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているのだが、クルスクのケースでも基本的に同じだ。クルスクの北西にあるブリャンスクではウクライナ軍の破壊工作/偵察部隊がロシア軍の待ち伏せにあい、4名が戦死した。そのうちのひとりの腕にはアメリカ軍のレンジャー連隊を示す刺青があった。そのほかカナダ国旗、ポーランドの祈祷書、英語で戦術を記したメモ帳などもFSB(ロシア連邦保安庁)は公開している。

 すでにウクライナ軍は降伏するか殺されるかという状態。2004年にオレンジ革命という形でウクライナ制圧プロジェクトを始めたネオコンは2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、ウクライナを植民地化するのだが、クーデターに強く反発した東部と南部の住民は戦い続けてきた。

 その戦闘でキエフ政権は敗北が必至の状態だが、ロシアに戦争を仕掛けた欧米の勢力はロシアに勝利させないと主張し、NATO諸国をロシアとの戦争へ引き摺り込みつつある。

 ​2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブは2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている​。

 NATOの新事務総長に選ばれたルッテはオランダで首相を務めた経験があるが、独身で親しい友人も少ない。本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、NATOは米英の支配層がヨーロッパを支配するために作り上げたシステム。そうした支配層はルッテのことを熟知しているのだろうが、一般人は彼の私生活について知らない。

 そうしたルッテは事務総長に就任した当日、ウクライナがNATO諸国から受け取った兵器をロシアの深奥部を攻撃するため、自由に使用できると主張。ウクライナをできるだけ早くNATOに加盟させるともしている。ロシアと戦争をすると宣言したわけだ。そうした考えはルッテを新事務総長に選んだ人びとの意思でもある。

 彼らがロシアと戦わせるウクライナ人は不足、​イギリスの国防大臣を2023年8月31日まで務めたベン・ウォレスは同年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘​。最近では45歳とも言われている。国外から兵士を連れてきたいのはロシアでなくアメリカ/NATOだ。

 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロットだった。​韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留している​と言われている。韓国はアメリカに従属している国の中でウクライナへ兵器を供与する余裕がある国のひとつでもある。

 NATOを含む西側諸国から兵士をウクライナへ送り込まなければロシアとの戦争を継続できない。地上部隊も韓国を含む東アジアの国から派遣されているとする噂もある。そうした戦力増強策を正当化するために朝鮮軍兵士の話が流された可能性もあるが、韓国内部の事情もあると言われている。

 韓国の尹錫悦大統領は検事時代の2016年、大統領だった朴槿恵を巻き込む崔順実スキャンダルの捜査を指揮、朴大統領弾劾につながった。2017年5月から19年7月までソウル中央地方検察庁検事長を、また19年7月から21年3月まで検事総長を務めているが、その間、アメリカから嫌われていた文在寅政権を攻撃し、文大統領に近い曺国法務部長官を起訴、曺を辞任させた。

 アメリカの支配層は文在寅だけでなく朴槿恵も嫌っていた。彼女が中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたからだ。尹の働きがなければTHAADを韓国へ搬入することは難しかっただろう。

 尹錫悦は大統領に就任してからアメリカ政府の好戦的な政策に従い、中国やロシアとの関係を悪化させ、国民の支持率は20%台に低下したと言われている。韓国をアメリカの戦争マシーンに組み込み、経済を悪化させているからだろう。

 尹錫悦は妻の金建希が引き起こしたスキャンダルでも苦しんでいる。税金を払わず賄賂を受け取ったと言われ、輸入車販売会社ドイッチェ・モーターズの株価を操作した疑惑で捜査対象になっている。さらに論文の盗作も指摘されている。検事総長や大統領の権限を使っても揉み消しきれない何かがあるのかもしれないと言う人もいる。
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