【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.10.26/櫻井春彦 : ウ軍を傀儡として使うNATOは兵士も兵器も不足、朝鮮兵をカモフラージュに使う

櫻井春彦

ウクライナでアメリカ/NATOの傀儡軍がロシア軍に負けていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。日本はともかく、その事実を西側の有力メディアも否定できなくなっている。兵士も兵器も枯渇し、​ウクライナの街頭では男性が拉致されて不十分な訓練で最前線に送られ、1、2カ月で83%が戦死している​とネオコン系シンクタンクのISWも伝えている。

 それに対し、ロシア軍の戦死者はウクライナ軍の1割程度だと見られ、兵士はローテーションで交代しながら戦い、予備部隊も存在している。ロシアが兵器を製造する能力はアメリカ/NATOの4倍程度だという。

 昨年8月の段階で、2022年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したと言われていた。ウォロディミル・ゼレンスキー政権は当初から18歳から60歳の男子が出国することを禁止、動員の対象にしていた。45歳以上の男性だけでなく少年兵も前線へ送り込んでいると言われていたが、最近は60歳程度の男性が街角で拘束され、前線へ送り込まれていると報告されている。その様子を撮影した少なからぬ映像が伝えられてきた。

 ​イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めたベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘している。​最近では45歳とも言われている。それだけ兵士が足りないということだ。

 こうした戦場での劣勢を挽回するつもりだったのか、ウクライナ軍は8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。この地域には国境警備隊しか配置されていなかったことから装甲車両を連ねた部隊に攻め込まれたようだが、すぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けているようだ。

 この作戦でウクライナ側はすでに2万数千人が死亡したとも言われている。この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入され、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加しているとも言われている。東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。

 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃したが、その際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊した。この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。ここで自国兵が死亡したことを隠したい政府は情報統制を強化するだろう。

 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官によると、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、勢揃いした要人を暗殺しようという計画があったという。同じことをアメリカの秘密工作機関OPCは1949年に中国で計画していたと伝えられている。

 ウラジミル・プーチン政権の要人を暗殺してロシア国内を混乱させ、その上でクルスクへ攻め込む予定だったのだろうが、失敗した。この計画を作成したチームには、反プーチン工作を指揮、アラブの春を仕掛けたグループにも属していたマイケル・マクフォール元駐露アメリカ大使も含まれていたようだ。

 ウクライナの戦況を考えると、ロシアが他国の兵士を必要としているとは思えないのだが、ウクライナ、アメリカ、韓国などの有力メディアは朝鮮の兵士がロシアへ入った、あるいはウクライナで戦っているとする話を盛んに流している。この話を口実にして韓国はウクライナへ兵器を供与する可能性を示しているが、すでにNATO加盟国はそうしたことをする余裕がなくなっている。韓国や日本に頼るしかない。

 自らが仕掛けた戦争で窮地に陥ったアメリカはイスラエルを支援して戦火を中東全域に拡大させる動きを見せ、東アジアでも軍事的な緊張を高めている。アメリカ軍が日本列島から台湾、そしてフィリピンにかけての島々にミサイル発射基地を建設、オーストラリアを軍事拠点化していることは本ブログでも繰り返し書いてきた。

 国防総省系シンクタンク​「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表したが、その前から実行に移している​。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。

 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入され、その後、朴槿恵は失脚した。また、アメリカは中国との戦争に備えて台湾を自分たち側へ引き寄せ、軍事拠点化しようとしている。そのオーストラリア、そしてイギリスとアメリカはAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めている。

 そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示した。6月にプーチン大統領は朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結している。政治経済面だけでなく軍事面でも両国は連携するということだろう。その朝鮮の部隊をロシアが訓練する可能性はあるが、ロシアには朝鮮系を含むアジア系の国民も多く、作り話はいくらでもできるだろう。

 ところで、現在の「ウクライナ体制」は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」を経て、2013年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターで成立した。東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスは反クーデター軍を編成して抵抗を始めた。オデッサもクーデターに反対する住民が多かったが、ネオ・ナチによる虐殺で制圧されている。

 オレンジ革命までウクライナは「中立」を掲げていたが、その背景には東部や南部のソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された地域の住民がウクライナからの独立や自治権獲得を要求していたことがある。その民意をアメリカやイギリスをはじめとする西側の私的権力は拒否、ロシア政府も彼らを助けようとはしなかった。

 しかし、ウクライナでクーデターに反対する人は多く、軍人や治安機関隊員の約7割は新体制を拒否したと言われている。クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、米英を後ろ盾とするネオ・ナチ体制はこの半島を制圧することができなかった。そのように離脱した兵士や隊員の一部は反クーデター軍に合流、当初はクーデター軍を圧倒していた。そこで欧米諸国はクーデター政権の戦力を増強し、戦争の準備をするために時間を稼いた。それがミンスク合意にほかならない。8年間に兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を中心とする要塞線を築いている。

 2022年に入るとキエフ政権がドンバス周辺に配置した部隊は住民に対する砲撃を激化させ、近いうちに大規模な軍事作戦が始まると少なからぬ人が予想していた。

 そうした中、2月24日からロシア軍はウクライナをミサイルなどで攻撃し始め、ドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させたほか、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を攻撃している。

 この段階でロシア軍の勝利は確定的。そこでイスラエル政府やトルコ政府の仲介で停戦交渉が始まり、ほぼ合意に達したという。仲介役を務めていたイスラエルのナフタリ・ベネット首相は3月5日にモスクワへ飛び、ウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合ってウォロディミル・ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会う。

 ところが、​その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを裏切り者だと称して射殺​。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。

 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と昨年6月17日に会談しているが、その際、​プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している​。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。

 こうした交渉を潰すため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令し、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるために戦い続けさせてきた。「総玉砕」を求めたのだ。

 この段階ではロシアに勝てるとアメリカやイギリスの好戦派は信じていたようだが、工業生産力や兵器の性能、兵士の戦闘能力でロシアはウクライナやアメリカ/NATOを圧倒する。戦場からウクライナ兵は減り続け、武器弾薬も枯渇している。こうしたことはロシアが軍事介入した直後から明白で、だからこそゼレンスキー政権も停戦交渉を始めたのである。

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