【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月30日):カザンで開催されるBRICSサミット:新たな世界的課題は何か?

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

世界は重大な地政学上の変化に直面している。また、IMFが確認しているように、地政学上の同盟関係を反映した資金調達の流れの変化にも直面している。世界的な統治機構の制度設計の欠陥を是正するためにどのような世界的な改革が必要かについては、多くの議論がなされてきた。広範な研究により、多国間主義が国連憲章の目的を達成することだけでなく、その権限を履行することにも失敗していることが確認されている。本稿では、改革と発展に向けた議論と機運を、BRICS諸国などの取り組みと照らし合わせようとする。また、BRICS諸国がその目標を達成しようとする際に直面する世界的な状況を概説し、同諸国が新たな世界的課題を推進しているかどうかを考察する

BRICSと現代の世界の課題

2024年10月22日から24日にかけて、BRICSは国家元首および政府首脳によるサミットを開催する。このサミットは、国連総会(UNGA)による「未来のための協定(PFTF)」の採択に示されるように、多国間主義とその制度を改革しようという機運が急速に高まっている中で行なわれる。この協定は、世界的な改革と開発議題の正当性が認められたことを物語っている。たとえば国連改革などのように、改革がいつ、何を、どのように行なうべきかについては明確に規定されてはいない。しかし、議論と合意に基づく協力の場であり、G20の重要な構成要素でもあるBRICS諸国には、必要な改革を交渉し推進する責任と機会が与えられている。BRICS諸国は2009年、G20について「われわれは、金融危機への対応においてG20サミットが果たす中心的役割を強調する。G20は、国際経済および金融問題に関する協力、政策調整、政治対話を促進してきたのだ(2009年BRICS首脳会議声明)」と述べた。

金融危機の影響はまだ続く可能性がある;地球は依然として回復の途上だ。COVID-19のパンデミックも収束し、世界、特に発展途上国には過酷な遺産が残された。COVID-19の経済的影響は今後も続くのだろうか(21世紀のパンデミックからの予後。国際通貨基金)。 南部アフリカをはじめとする世界中の地域に対する気候変動の厳しい影響は、引き続き不穏な傾向を示している。世界は、世界的な課題を解決するために必要な世界的な連帯を維持するために戦っており、不平等などの問題を解決する国家の(非)能力はますます市民の信頼を失っている。「多発危機」は、世界的な議論の語彙の定期的な特徴であり続けている。変化する情勢の中での地政学的緊張もまた、今日の世界と多国間主義の複雑さを増しており、IMFは地政学的同盟に応じた資金の流れの動きの変化を確認している。

BRICSと多国間主義

ロシアはカザンでBRICSサミットも主催するが、そこにおいて多極化は国際関係(IR)の議論において常に焦点となり、新たな世界的な現実となるだろう。BRICS+の拡大に示されるように、BRICS諸国の改革と発展の課題に対する関心は高まっており、少なくとも40カ国が潜在的な新メンバーとして関心を示しており、23カ国が加盟を申請している。BRICSおよび新開発銀行への参加要件のひとつは、まず加盟することである。「加盟は、新開発銀行協定の規定に従い、国際連合加盟国に開放される。借入加盟国および非借入加盟国に開放されるだろう(新開発銀行協定、第2条)」。

BRICS諸国は、あらゆる種類の多国間主義において国連の中心性を基本的なものと位置づけている。BRICS諸国は、課題はあるものの、人類の利益のための行動において大きな連帯を達成する潜在的可能性を秘めた、世界的な協力のための主要な機関や手段を明確にしてきた。2009年のエカテリンブルク・サミットにおける首脳の共同声明では、国連について次のように述べている:

「われわれは、世界的な課題や脅威に対処するにあたり、国連が中心的な役割を果たす多国間外交に強い関与を表明する。この観点から、われわれは、今日の世界的課題にもっと効果的に対処できるよう、国連をさらに効率的なものにすることを目的とした国連の包括的改革の必要性を再確認する。われわれは、国際問題におけるインドとブラジルの地位を重視することを改めて表明し、国連においてもっと大きな役割を果たしたいという両国の希望を理解し、支持する(2009年BRICSサミット共同声明)」。

2023年のBRICSサミット宣言では、ブラジル、インド、南アフリカの名前を挙げ、国連安保理の常任理事国にすることを支持している。多国間主義における国連の中心性は、BRICSが16年にわたって存在してきた中で繰り返し確認されており、その加盟要件を通じて示されてきた。しかし、改革と発展の議題には国連組織も含まれており、多国間主義のために改革され、目的にかなった国連を求める意向が表明されている。現在も将来も同様である。

関連記事:BRICS After Expansion by Dmitry Suslov

BRICSと経済協力

2023年の、効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会(HLAB)[実効的多国間主義に関するハイレベル諮問委員会 (HLAB)]。2023年。「人類と地球のための突破口:今日と未来のための効果的かつ包括的な世界統治」。国連大学。ニューヨーク] は、その多くの提言が2009年のBRICS設立の動機の中心となっており、世界経済発展が直面する課題を詳述している (HLAB、2023年) 。それは6つの変革を詳述しており、その中で世界的な金融構造の変化が重要な特徴となっている。BRICS諸国は、世界統治における改革と開発、民主化、代表性、公平性を追求する旅に、2009年、出立した。この目的のために、必要とされている改革を説得するために、他の世界が奮闘するとともにその勢いは加速されている。BRICSは第15回首脳会議で、財務相と中央銀行総裁に対し、追加的な決済システム(2023年BRICSヨハネスブルグ2宣言)の実現可能性を調査するよう指示した。

そのため、2024年のサミットには多くのことが期待されており、新たな決済システム、その規模、再開時期の発表の可能性に大きな期待が寄せられている。これは、ドル安、BRICS域内の貿易と協力の拡大、BRICS+拡大の利点に関する議論を考えると、その期待もうなずける。BRICSは、2008年の世界金融危機の際に浮上した多国間問題を中心に協力するとの見方もある。例えば、PradoやPrado and Hoffman (Prado, M。M.&Hoffman, S。J. (2019年)。『国際的な制度的迂回の約束と危険:新しい概念の定義と世界的統治へのその政策的含意』https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/20414005.2019.1686866
。Transnational Legal Theory, 10(3-4), 275-294.)は、BRICSなどの同盟を生み出した課題への対応策として、国際制度迂回(バイパス)の利用について調査している。クバイは、世界統治の目的に適った制度設計への改革を達成し、それを共同所有する受動的革命を達成するための、マルクス主義/グラムシ主義的な「陣地争奪戦」の概念を特定している。BRICS諸国を検証する際にどのような視点を用いるにせよ、発足から16年を経て、BRICS諸国は新開発銀行(NDB)という形で多国間開発銀行(MDB)を実現し、公式には新たな世界的決済システムの開発を進めている。

金融面でのこの2つの展開は、BRICSの介入の中でも最も顕著なものだ。BRICSシンクタンク評議会による長期的なステップと計画を提案する提言の発表など、「BRICS長期目標:ロードマップと経路(2017年)」の実現に向けた進展については、まだわからないことが多い。しかし、G20や国連、より広範な社会改革や開発に関する議論における活動も考慮すると、その総体的な取り組みはそれをはるかに超えるものとなる。特にグローバル・サウスにおける発展途上国に対する責任は常に注目されており、開発や貧困、不平等、その他の苦しみからの救済の緊急性を踏まえ、強い期待を持ってその動向が注視されている。

BRICS諸国は「新たな世界秩序」を追求しているのか

Zondiらは、BRICSの目的を達成するために、集団的な利点と強みを活用するために、BRICS内の協力を深めることを主張している。これは、特に人口と経済成長を利用しているZhongxiu や Qingxにも反映されている。これらの文書はいずれも、BRICSの強みを活用することを示唆している。BRICSの強みは、多国間主義(Stuekel、2013)において、特に開発途上国の利益のために大きな価値を持ち得る。より大きな世界的状況はよく知られており、集中的かつ広範に文書化されている。この状況に対する世界的な対応が注目を集め始めている。このことは、未来サミットに向けた機運やPFTF.99の採択後にも明らかである。

世界的な改革と発展の課題は昔から存在し、さまざまな場面でさまざまな形で現れてきた。例えば、1974年5月1日に国連で採択された宣言「新国際経済秩序」などである(www.unctad.org)。この取り組みは、他の取り組みと同様に、登場したかと思うとすぐに勢いを喪失した。しかし、70年代には、BRICS諸国の経済は現在ほど発展しておらず、先進的でもなく、冷戦とその後の時代において現在のような影響力も有していなかった。今日では、あたかもジム・オニールがBRICSの存在に責任を負っているかのように、2001年の論文「より良い経済的BRICsの構築」に関する論評が存在する。また、グローバル・サウスの台頭を語る人もいる。BRICS諸国を含む多くの人々は、それが新たな現実であり、世界的な統治の目的にかなった改革された制度構造に反映されるべきだと主張している。

すでに議論された内容を超えて、新たな世界的課題を定義する必要があるかもれない。しかし、確実に明らかなのは、多極化への移行であり、その基盤となるのは、現在の国際システムの不備と、発展途上国、不平等、その他の問題に苦しんできた世界人口の大多数が経験してきた苦悩の歴史である。おそらく多極化ともっと公平な世界統治システムへの移行こそが、2009年よりBRICSが主張してきた「新たな世界的課題」なのだろう。新たな決済システムの採用、NDBの拡大、その他のBRICS構想の成果は、新たな世界的課題、少なくともBRICS改革開発課題が何であるかを最も明確に示すものとなるだろう。

 


関連記事: Russia’s BRICS Presidency: Life on the Eve of the Kazan Summit 15.10.2024

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月30日)「カザンで開催されるBRICSサミット:新たな世界的課題は何か?」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
空の転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒BRICS Summit in Kazan: A New Global Agenda?
筆者:ミカテキソ・クバイ (Mikatekiso Kubayi)
出典:valdaiclub 2024年10月16日
https://valdaiclub.com/a/highlights/brics-summit-in-kazan-a-new-global-agenda/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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