【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月31日):BRICSは、いまや民主主義の砦となっている

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

編集部特選記事―民主主義の砦となるBRICS

米国の他国に対する対応は、国連の非民主的な本質を如実に示すものである。米国は、自国のやり方を押し通すために、軍事力、経済力、文化的な影響力を駆使して、他国をいじめたり、強制的に服従させたりすることで知られている。例えば、米国はドイツが米国に保有する金準備を引き出すことを阻止し、欧州の大国であるドイツをまるで年下のパートナーであるかのように扱っている。

また、米国がSWIFTシステム*を利用してロシアを罰し、ロシア産石油の購入を検討したインドをまるでいたずらっ子のように叱責したことも世界は目撃している。さらに、米国は、テロ行為を非難されることの多い国であるイスラエルに、国連安全保障理事会(UNSC)において外交特権を与えるために、一貫して拒否権を行使してきた。
SWIFTシステム*・・・Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略。国際銀行間通信協会とも呼ばれる。1973年に世界の金融機関が出資して設立された非営利法人で、本部はベルギーにある。

それゆえ、多くの国々がインド、ドイツ、ブラジル、日本、南アフリカを常任理事国として加えることを求め、国連安保理の改革を訴えているのは当然である。これにより、世界的な意思決定において、より大きな代表性と多様性がもたらされることになり、より民主的で包括的なシステムへの一歩となるだろう。しかし、米国は自国の権力を維持することを好み、このような動きをほとんど歓迎していない。

国連の失敗の核心には、拒否権を他の国々に対するダモクレスの剣のごとく振りかざす国連安保理の常任理事国5か国の不公平な体制がある。少数の者たちに権力が集中した結果、説明責任が欠如し、国連は強者が弱者の犠牲のもとに自らの利益を追求するための舞台と化している。

国連安保理の常任理事国は、国際社会を代表するものではなく、国家や文化の多様性を反映しているわけでもない。この非民主的な体制により、これらの強力な国々は、議題を決定し、反対意見を封じ、他国の利益を顧みずに自国の利益を追求することが可能となっている。

さらに、協力の促進、紛争の防止、人権の保護を目的とするはずの国連の法に基づく秩序は、民主主義と平和をもたらすことに失敗している。むしろ、国連は「人道的介入」や「民主主義の促進」という名目で、強国が自国の意思を弱小国に押し付けるための道具となっている。

米国が覇権を握る、「ルールに基づく秩序」のシステムは、軍事力、経済力、金融力を組み合わせることでその優位性を維持しようとするものであり、米国が他国の犠牲のもとに利益を得る不公平な競争環境を作り出している。ドルが世界準備通貨としての地位を維持していること、SWIFTシステム、そして米国が他国を説得または強制できるということは、すべて米国の権力と影響力の地位を確たるものにすることにつながっている。米国はすでにその本性を明らかにしている。ロシアとの戦争の資金調達としてウクライナに渡すために米国の銀行にあるロシアの資産を差し押さえているからだ。また、イランの資産のうちたった60億ドルを食料や医薬品の購入に充てることを許可したが、その資金は米国が完全に管理し、実際にはイランには渡らない。

これに対し、BRICSが構想するような複数の強力な影響力センターが存在する多極体制は、よりバランスの取れた権力分配を実現し、グローバルな意思決定における多様性と代表性も高めることができるだろう。しかし、現在の国連の構造は、常任理事国の拒否権に重点が置かれているため、より民主的で包括的な体制を実現することは困難だ。

国連は民主主義と平和を実現するという使命を悲惨なまでに果たせずにいる。その非民主的な構造と少数の人間に権力が集中していることが、説明責任の欠如と現状の永続化につながっている。今こそ国連の抜本的な改革が必要であり、より大きな代表制、包括性、説明責任を促進し、より民主的で平和な世界秩序を可能にするような改革である。BRICSのドアを叩いて参加を求める国々があとを絶たないのは当然である。ロシアや中国のような、強大な軍事力と経済力を備えた国々が、他国を支配する覇権主義のない多極的な世界において、他国を尊重し、尊厳をもって平等に扱うパートナーとなることを期待しているからだ。

すでにBRICSは、世界銀行やIMFの融資条件を受け入れられない国々を支援するために、新開発銀行を立ち上げた。また、BRICS銀行間決済システムにより、各国はドルを使用せざるを得ない状況に追い込まれることなく、自国通貨で互いに支払いをすることが可能になる。ドルで支払いがなされるたびに、米国のみが他国からの赤字補填による恩恵を受けているため、これは米国のみに利益をもたらすのである。

この記事を執筆している時点で、191カ国中159カ国がすでにBRICS決済システムへの参加を表明している。ドルを準備通貨として使用したくない国々に対して、トランプが制裁をちらつかせるのも当然だ。

2024年のBRICSサミットは、2024年10月22日から24日にかけて、ロシアのモスクワ東部に位置する美しい都市カザンで開催される予定だ。すでに、加盟申請を提出した多くの国がサミットへの参加を希望している。

BRICSはまた、イランがボーイング機を飛ばし続けるために海賊版部品を購入しなければならないといった米国の懲罰的かつ幼稚な制裁から各国を解放するだろう。また、トルコなどに、部品を代わりに購入してもらい、それをこっそりとイランに密輸してもらっていることからも解放するだろう。

ロシア、中国、ブラジルなどからBRICS諸国が利用できる素晴らしい長距離旅客機が存在する今こそ、世界はボーイングやエアバスから解放されるべき時である。世界は米国の覇権から解放される必要がある。

* マシボンゲ・シララは、独立系ライター、政治評論家、社会正義活動家。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年10月31日)「BRICSは、いまや民主主義の砦となっている」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2765.html
の転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒BRICS: a bastion of democratic power
筆者:マシボンゲ・シララ (Masibongwe SIHLAHLA)
出典:Strategic Culture 2024年10月18日
https://strategic-culture.su/news/2024/10/18/brjcs-bastion-of-democratic-power/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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