【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年10月31日 (木)消費税減税が税負担軽減最善策

植草一秀

10月27日実施の衆院総選挙での無所属当選者のうち、自民党から公認を得られなかった4名と自民党系の無所属当選者の2名が自民会派に入ることを明らかにした。

この結果、会派別当選者数は以下の通りになる。

自民   197
公明    24
与党計  221

立民   148
維新    38
国民    28
れいわ    9
共産     8
参政     3
保守     3
社民     1
野党計  238

無所属    6

衆議院過半数は233。

無所属議員は野党系無所属の「有志の会」当選者4名と野党系無所属で当選した者2名を合わせて6名。

数の上で非自公が勝っている。

石破首相が政権を維持するには特別国会での総理大臣指名選挙で勝利することが必要になる。

憲法54条の規定により総選挙から30日以内に特別国会が召集され、内閣総理大臣が指名される。

 

内閣総理大臣指名選挙では、1回目投票で議員の過半数を得た議員が内閣総理大臣に指名される。

衆参が異なる指名を議決したときは両院協議会が開催されるが、最終的には衆議院の議決が国会の議決とされる。

1回目投票で議員の過半数を得る議員がいない場合は、上位2者による決選投票が行われ、多数を得た者が当選人になる。

得票数が同じときはくじで当選人が決まる。

キャスティングボートを握っているのが国民民主党と維新。

国民民主党は総選挙で「手取りの増加」を訴えた。

具体的には所得税・住民税の基礎控除額の大幅引き上げが提案されている。

現行制度では年収が基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計である103万円を超えると所得税が発生する。

国民民主党は所得税と住民税の基礎控除を現行より75万円引き上げて178万円にすることを提案している。

この措置を実施した場合、年間で7.8兆円の減税になる。

減税の恩恵は年収が103万円を超える給与所得者が享受する。

高額所得者の限界税率が高いため、減税額は高額所得者ほど多くなる。

他方、年収が103万円に満たない給与所得者には減税の恩恵がない。

国民民主党の提案は103万円以上の給与所得を得る労働者にアピールするものだった。

また、103万円の壁を意識して労働を手控えてきた層にもアピールした。

 

SNSなどを活用してこの所得階層に強くアピールした結果、20代、30代の有権者が国民民主党に多く投票する結果がもたらされた。

しかし、現在の日本の所得分布と課税状況を踏まえたときに、より重大な問題が存在することを見落とせない。

消費税だ。

所得税の場合、基礎控除や給与所得控除などの制度により、収入金額が一定水準に達するまでは可能税額がゼロになる。

夫婦子二人片働き世帯では収入金額が280万円程度に達するまでは無税である。

ところが、消費税は違う。

年収が100万円でも年収がゼロでも10%の税率で課税される。

生鮮食品などは軽減税率が適用されるが税率は8%で10%と大差がない。

所得が少ない者は収入金額の全額を消費に回すケースが圧倒的に多い。

その全額に10%の税が課せられることの重みは想像を絶する。

したがって、より優先度の高い課題は消費税減税だ。

消費税率を2014年以前の5%に戻す。

国民民主党も消費税減税を公約に掲げた。

自民党にすり寄っても自民党が多数を握っているのだから、政権運営は自民主導になる。

自民党は消費税減税を受け入れないだろう。

野党が結束して新政権を樹立して消費税5%を実現すれば2025年夏の参院選で新政権が勝利することは間違いない。

野党結束で消費税率5%を実現できる千載一遇のチャンスが到来していることを見落としてはならない。

 

 

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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