【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年11月5日):パレスチナ人全員抹殺がイスラエルの方針

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

ハンニバル指令からダヒヤ協議に至るまで、イスラエル当局によるこれまでの数々の恐ろしい戦争犯罪戦略も、イスラエルが新たに繰り出す「将軍計画」の下で直面しているパレスチナ人の実存的危機に比べれば何でもない。その「将軍計画」とは、パレスチナ地区の民族浄化とパレスチナ人居住区へのユダヤ人の再定住に向けた体系的な青写真を示している。

ガザ地区のパレスチナ人を巻き込んだ大虐殺は、想像を絶する規模の恐怖に達している。ソーシャルメディア上で広まった、点滴につながれたまま焼死した19歳のシャアバン・アル・ダロウさんの恐ろしい動画がその象徴だ。この事例は孤立した悲劇ではなく、大量虐殺が激化している状況を象徴するものだった。

10月13日、イスラエルの空爆により、デイル・アル・バラのアル・アクサ殉教者病院の中庭に数十のパレスチナ人家族が仮設テントで避難していたが、そのテントが炎上した。炎の真っ只中、ダロウさんの17歳の弟モハメッドさんは、自身の苦しみを次のように語った。「言葉では言い表せない気持ちです。目の前で兄が燃えているのを見ました。母も燃えていました。」

モハメッドさんは爆撃音を聞いてなんとか逃げることができたが、兄のシャアバンさんと母親は逃げられなかった。ニューヨーク・タイムズ紙によると、彼の父親は 10歳の弟を炎から救ったが、その子も数日後に火傷で亡くなった、という。

北ガザでは医療手当や防衛業務が停止

この恐ろしい動画が流れた1週間後には、兵士たちが銃を突きつけて半壊した住宅街からパレスチナ人を追い出す様子を捉えた写真が流れた。

イスラエルの公共放送カンが公開したイスラエルのドローン映像には、パレスチナ人が集められ、何も持たされないままでガザの壊滅的な風景の中を南へ歩かされる様子が映っていた。

移動する命令(その命令は主に、空を飛び交うクワッド・ローター式ドローンから発せられている)に従わなかった多くのパレスチナ人は、イスラエル軍の砲撃と空爆によって虐殺された。

救助隊員や、他者を救おうとする民間人は、イスラエル軍に銃撃されたり、あるいは単に一斉に逮捕されて「行方不明」になったりしている。負傷者を助けようとしたパレスチナ人が標的にされた事例が数多く報告されている。このため、ガザの人々は医療手当や救急手当を受けられなくなり、医療手当や民間防衛業務は完全に停止せざるを得なくなった。

病院さえも例外ではなかった。重傷を負った患者も患者を治療する医師たちも、同様に受け入れ難い最後通告を受けた。それは、避難するか死ぬかどちらかを選べ、という二択だ。

ガザでボランティア活動をしていた西洋の医師たちは帰国後、心臓と頭を直接1度だけでなく2度も撃たれて病院に運ばれてくる子どもたちの数に衝撃を受けたと述べた。

「『世界最高の狙撃手』に誤って幼児が二度撃たれるようなことはありえません。しかも、その狙撃はまさに身体のど真ん中に当たっているのですから」と外科医のマーク・パールマッター氏は米国のCBSニュースに語った。

イスラエルの狙撃兵とドローンは、子どもたちだけでなく、子どもたちを救おうとする人たちにも故意に発砲した。

逃げるパレスチナ人家族は検問所を通過することを余儀なくされ、兵士らは男性と女性、子どもを隔離した。

兵士らはその後、男性たちに白いジャンプスーツを着せ、手を縛り、目を覆い、軍用トラックの荷台に乗せて、夜の間にイスラエルの悪名高い拷問キャンプへ連行した。

過去1年間、スデ・テイマンなどの収容所では、イスラエル軍兵士がパレスチナ人被収容者を飢えさせ、殴打し、肛門を強姦した。被収容者の手足に非常にきつく鎖をかけたため、刑務所の医師は定期的に被収容者の手足を切断せざるを得なかった。

イスラエルと米国の報道機関に提供された、流出した動画や看守や釈放された被拘禁者からの証言によってこれらの行為が明るみに出ると、イスラエル社会はすぐに嗜虐的な兵士たちを擁護し、1人の捕虜がハマスの構成員であったという指摘を理由に、「人の肛門に棒を突き刺す」ことを含め、「すべての行為は合法的である」と発表した。

このような運命になることを恐れるパレスチナの人々は、イスラエル軍が1948年のナクバでの蛮行を繰り返すつもりであり、自分たちが故郷や土地に戻ることは決して許されないことを分かっていたので、ガザ北部の多くのパレスチナ人は逃げることを拒否した。

強制的に追放された人々は、占領軍が自分たちのアパートの残骸に火をつけ、誇らしげに自撮りや集合写真を撮影し「戦利品」として様々なソーシャルメディアのプラットフォームに投稿する様子を目にした。

「将軍の計画」

ガザで起こっている言葉では言い表せないほどの恐怖は、「将軍の計画」として知られるイスラエルの綿密に計算された戦略の一部である。

この計画は、現地の「現実を変え」、北ガザに残る30万人のパレスチナ人を可能な限り強制的に追放し、抵抗して残る人々を飢えさせたり殺害したりすることを目的としており、9月に退役少将のジオラ・アイランドがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の内閣に提出したものだ。アイランドの言葉はぞっとするほど明快だった。

「我々はガザ北部の住民に対し、1週間以内にこの地域から避難するよう伝えなければならない。その地域はその後軍事地域となり、あらゆる人物が標的となり、最も重要なことは、この地域にいかなる物資も入ってくることがなくなることだ。」

ネタニヤフ首相はクネセト外交防衛委員会との非公開会議でこの詳細を説明された後、この計画は「非常に理にかなっている」と明言した。

「将軍の計画」を開始する取り組みは、イスラエル軍報道官が10月7日、10日、12日に北ガザ地区の都市やキャンプにいるパレスチナ人に対して「避難」命令が出されたと発表したことから始まった。

その後イスラエルはガザ北部、特にジャバリア難民キャンプを包囲したが、アムネスティ・インターナショナルはこの事象を「2023年10月以来、ワディ・ガザ北部の地域に住む人々に課せられた一連の恐怖の恐ろしい激化である」と表現した。

イスラエル当局は、ジャバリアを戦車で包囲し、空爆で激しく攻撃するだけでなく、あらゆる人道援助の流入を即座に阻止した。この行為の意味は、パレスチナ人に北ガザから立ち去るか、飢え死にするかの選択を迫っている、ということだ。

米国政府からの空虚な脅し

飢餓を戦争の武器として利用したことは、ネタニヤフを支援しているホワイトハウスの住民らにとって恥ずべきことだった。彼らは大量虐殺を熱烈に支持しながら、米国の有権者からの反発を避けたい、と考えている。そうなれば、来たる米国大統領選挙で政権を失う原因となる可能性が生じるからだ。

10月13日、ホワイトハウスは、ネタニヤフ首相にガザへの援助を増やすよう公的に要求する書簡を発表した。さもなければ、ワシントンによるイスラエル軍への「攻撃用兵器の継続的な供給」が危険にさらされることになる、と。

アントニー・ブリンケン米国務長官が書いたこの書簡によると、提供された援助の額が春以来「50%以上減少」しており、「9月に提供された額は過去1年間のどの月よりも最低だった」とのことだった。

しかし、ブリンケン国務長官は書簡の中で、ネタニヤフ首相には30日以内に従うよう命じると記し、同イスラエル首相が何の罰も受けずにこれを無視できるように意図的に配慮した。

タイムズ・オブ・イスラエル紙が指摘したように、「この書簡は11月5日の米国大統領選挙のわずか数週間前に送られた」のだ。その結果、「11月13日という期限は、政治的影響をいくらか緩和することになるだろう。というのも、その時にはジョー・バイデン米大統領が既に何の役にも立たない存在になっているかもしれず、その時点で米国の要求に従うようイスラエルが必要な措置を講じたかどうかを判断することになるからだ」。

言い換えれば、どれだけ多くのパレスチナ人が焼死したり、引き裂かれたり、飢えたりしても、ブリンケンはイスラエルへの爆弾供給が妨げられることなく継続することを保証する役割を果たし続けることになる、ということだ。

ここ数週間にわたる北ガザでのイスラエルの残虐行為は、すべての政治的、軍事的制約が解除されたときにイスラエル指導部がどんな蛮行をおこなえるかを示している。ロイター通信は、10月18日に控えめに次のように報じた。

「米国の選挙が近づく中、イスラエルはガザ地区のハマスとレバノンのヒズボラに最大限の打撃を与えようと急いでおり、1月に米国の新大統領が就任する前に取り返しのつかない現実を作り出すために、この機会を利用して事実上の緩衝地帯を設定しようとしている。」

ガザの最終解決に向けた競争が始まっている

イスラエルは現在、昨年10月7日を起点として生まれた機会を最大限に活用している。

ハマスがアルアクサ洪水作戦を開始したとき、イスラエル軍は攻撃用ヘリコプターやドローン、戦車を使用して、襲撃してきたハマスや他のパレスチナ抵抗戦士を殺害しただけでなく、ハンニバル指令の下、入植地(キブツ)や ノヴァ・レイブで何百人もの自国のイスラエル国民を焼き殺してきた。

ミスガブ国家安全保障・シオニスト戦略研究所の言葉を借りれば、イスラエルはこれらの恐ろしい死をハマスの仕業とし、そして自国が独自の9.11を経験したと主張することで、「ガザ地区全体から撤退する唯一無二で稀な機会」を作り出したのだ。

同研究所は2023年10月7日直後に発表した政策文書で 、「この計画が施行されるためには、多くの条件が同時に整う必要があることは間違いない。現時点ではこれらの条件は整っており、このような機会が再び訪れるかどうかは不明だ」と記していた。

ガザで徹底的な大虐殺が繰り広げられる中、イスラエルの与党リクード党や宗教シオニズム党、「ユダヤの力」党の活動家や政治家たちは、パレスチナ人の大量追放と民族浄化の完了を見守っている。

ガザへの移住

ガザを見下ろす丘の上で、イスラエル人入植者たちは 爆弾の落下を見守りながら、ガザ地区に再侵入し、米国製のミサイルと大砲によって引き裂かれているパレスチナ人の土地と財産を没収する機会を今か今かと待っている。

同時に、イスラエルの与党議員らは、ガザ地区の人口減少都市や難民キャンプとなる予定の廃墟にユダヤ人を再定住させる計画を立てるための会議を開いた。

入植者運動の指導者ダニエラ・ワイス氏は群衆に対し、ガザのパレスチナ人はまもなく「消え去る」だろうと語った。

「私たちには政治的な支援があり、国民の支援があり、経験もあります…私たちはユダヤとサマリアに入植するために何年もかけて得たものを活かして、ここガザでも同じことをするつもりです。」

ネタニヤフ首相は「将軍の計画」が実行されていることを否定し続けているが、彼自身のプロパガンダ機関であるチャンネル12の記者アミット・シーガル氏は その逆を認めることを恥ずかしがらなかった。

(北ガザで)起きていることが「将軍の計画」の実行であるということを我々は否定し続けることができます。それはガザ地区を空にし、テロリストを飢えさせ、排除し、捕らえるという計画です。私に言わせれば、それはここで起きていることです。

イスラエルの政治・報道機関関係者は、「将軍の計画」の実施を祝ういっぽうで、ドナルド・トランプが米国大統領に選出され、正式に「ガザ地区の境界線が永久に変更される」のを待っている。

これは単なる地域紛争や戦争ではなく、いまこの瞬間に実行されている意図的な抹殺と民族浄化の試みである。そしてこの状況を、西アジアの抵抗軸を除く全世界は黙って見守っている。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年11月5日)「パレスチナ人全員抹殺がイスラエルの方針」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
の転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Kill Them All: Israel’s Extermination of Palestinians in Gaza
筆者:ウィリアム・ヴァン・ワゲネン(William Van Wagenen)
出典:Internationalist 360° 2024年10月24日

Kill Them All: Israel’s Extermination of Palestinians in Gaza

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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