【櫻井ジャーナル】2024.11.13/櫻井春彦 : シオニストを次期政権の要職につけ始めたトランプ次期大統領
国際政治ドナルド・トランプはホワイトハウスから新自由主義の信奉者を排除し、1973年頃のアメリカを復活させようとしていると言われているのだが、そうした話に反することも行われている。
トランプが嫌っているというこの経済イデオロギーを広めたのはミルトン・フリードマンやフリードリッヒ・フォン・ハイエク。一部の私的権力へ富を集中させることになるが、必然的に貧富の差が拡大、国は疲弊する。
ハイエクは1929年にアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだと主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突した学者だ。ハイエクの教え子にはデイビッド・ロックフェラーも含まれている。
フリードマンは1962年に出版された『資本主義と自由』の中で、企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」へ通じていると主張、70年9月にはニューヨーク・タイムズ・マガジンで企業の経営者は社会的な責任を無視するべきだとしていた。この政策を推進すれば富はシステム上優位な立場にある一部の人びとに富が集中、政府を上回る力を持たせることになる。
1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトは1938年4月、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。新自由主義はファシズムの別名だと言えるだろう。この経済イデオロギーはネオコン(新保守)と呼ばれる政治イデオロギーと結びついている。
ネオコンはシオニストの一派で、好戦的だ。ジェラルド・フォードが大統領だった1970年代に台頭した。フォードはリチャード・ニクソン大統領が失脚した後、1974年8月に副大統領から昇格した人物だ。
ネオコンが台頭する前からシオニストはアメリカの外交や安全保障分野を仕切っていた。シオニストと対立したジョン・F・ケネディ大統領も選挙期間中は慣例に従う姿勢を見せていた。
シオニストとユダヤ人を混同する人が少なくないが、シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったキリスト教のイデオロギー。その当時、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れ、「ユダヤ人の国」を作らなければならないと信じるグループが現れた。ブリティッシュ・イスラエル主義だ。このカルトにはユダヤ教のエリートも加わったものの、一般のユダヤ教徒からは相手いされなかったようだ。
こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。こうした動くと連動する形でオカルトが支配層の内部で広がっていく。
イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)
シオニズムという用語はナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされているが、近代シオニズムの創設者とされているのは1896年に『ユダヤ人国家』を出版したセオドール・ヘルツル。ユダヤ教に興味はなかったとされている。
ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという戦略を立てていたイギリスにとってスエズ運河は重要な意味を持つ。その運河近くにイギリスがサウジアラビアとイスラエルを作ることになる。
イギリス外務省アラブ局はエージェントを後のサウジアラビア国王でワッハーブ派のイブン・サウドに接触させ、1916年6月にアラブ人を扇動して反乱を引き起こした。トーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」もその部署に所属していた。オスマン帝国を解体し、中東を支配することが目的だ。
ローレンスが接触していたフセイン・イブン・アリにイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンは書簡を出し、その中でイギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束した。フセイン・マクマホン協定である。このイブン・アリを追い出したイブン・サウドを中心として1932年に作られた国がサウジアラビアにほかならない。
その一方、イギリスのアーサー・バルフォア外相はロスチャイルド卿に宛てに出した書簡の中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。1917年11月のことだ。
また、イギリスとフランスは石油資源に目をつけ、サイクス・ピコ協定を1916年5月に結んでいる。フランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスが中心的な役割を果たしたことからそう呼ばれている。
イギリスは1919年、石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にし、その2年後に陸軍の将校だったレザー・ハーンがテヘランを占領する。そして1925年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになった。
第2次世界大戦後、そのイランは独立の道を歩み始め、1951年4月には議会での指名を受けて国王が首相に任命したムハマド・モサデクがAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決める。それはイギリスにとって死活問題だったことからアメリカに頼み込み、クーデターを実行することになる。
米英やその属国がイスラエルと緊密な関係にあるのは、こうした歴史的な背景があるからだ。「ユダヤ人が世界を支配している」という見方は正しくない。「ユダヤ人」は欧米の私的権力、古い表現を使うならば帝国主義者がカモフラージュのために使ってきたと言うべきだ。
ユダヤ系シオニストはそうした帝国主義者の手先として活動してきたのだが、ここにきて問題が起こっているように見える。帝国主義者の手先だったイスラエル人の一部が暴走し始めている。
トランプは新自由主義や新保守主義者を排除するとしているが、アメリカの有力メディアはシオニストが政府に入ると伝えている。中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツ。
ステファニックは親イスラエルの下院議員で、国連大使のポストが提示され、受け入れたとされている。国務長官になると言われているルビオ上院議員はキューバ系アメリカ人で、シオニスト。出世欲はあるものの、外交面の能力はないとみなされている。ロシアや中国に対して好戦的な姿勢を見せてきたが、「風見鶏」とも言われている。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的。シオニストでもある。
トランプもシオニストから離れられないようだが、そのシオニストが作ったイスラエルからアムステルダムへ乗り込んだフーリガンは乱暴狼藉を働いた。有力メディアはそのフーリガンを被害者だと宣伝しているが、その嘘は現地の少年ユーチューバー、ベンダーが撮影した映像でもわかる。しかもフーリガンは何者かの指揮の下で行動、警官隊も連携しているように見える。フーリガンの一行にイスラエルの情報機関、モサドが同行していたことをエルサレム・ポストが紹介していたことは本ブログでも紹介した。
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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
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