【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年11月15日):支配階級に異議を唱えたせいで、ドイツのフュルミッヒ博士と同じ運命を辿った人物がいる!

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

多くの人がその存在を騙されて信じてきた、高みから人類を照らす有名な「丘の上の都市*」がいまや風前の灯となりその存存がほぼ確認できなくなってしまった。
*丘の上の都市・・・故レーガン大統領がよく使った表現で、米国民が帰るべき場所を表す

2つの勢力に別れて争いが繰り広げられていた冷戦期の数十年間をとおして、西側にとって力強く優位に働く2つの大きな要素があった。1つ目は西側各国政府が自国民に与えることのできる快適さと繁栄であった。その点に関しては、対抗していた東側諸国はほぼ手も足もでなかった。世界から見て西側が有していた強力な競争力のある2つ目の特徴は、個人の自由を守るという点において、西側の政府機関は比較的ましな動きを見せていたことだった。

西側の繁栄と「西側は自由を尊重している」という印象が相まったおかげで、資本主義の社会体制や経済体制に対する批判的な指摘のほとんどを抑え込むことができた。見せかけであるとはいえ、西側各国政府が見せていた個人の自由に対する関与は、大きな牽引力を発揮した。政治的な武器として、この要素は西側の目的達成に効果的に作用した。法の支配や個人の権利の尊重の遵守が西側のもつ際立った特徴であると見られている限り、西側社会は対立していた東側諸国の体制とは違う、社会から求められている体制を取っている、と考えられていた。いっぽう競合していた東側社会においては、法に則った厳格な措置は通常とられず、恣意性が幅を利かせないようにする努力はほとんど見られなかった。

そのような状況が続いたのは、大雑把に言えば、1990年代までのことだった。1990年代になると、西側勢力は世界規模の覇権を手にすることに成功し、それまでの敵勢力に対して勝利を収めた、と広く考えられるようになった。それ以来、西側世界全体においては、それまで西側社会の人々にもたらされてきたささやかな快適さと安全という社会的利益が解体されつつある。これまで何十年ものあいだ西側社会の市民たちが享受してきた、「法により守られている」という実感も同様に、はかない存在になり始めつつある。不法な迫害や権力に対する脆弱性は、西側以外の地域では普通に見られる現象だが、西側社会においては長らく存在せず、西側世界の市民たちからはそのような行為があった記憶はなくなっていた。しかし、そのような状況がこれまでの復讐でもするかのように再来し始めたのだ。国内においても国外においても、「法の支配」が急速に認識不能な戯画と化してしまったのだ。そしてその変化を表すことばが、冗談のように聞こえる「ルールに基づく秩序」ということばなのだ。

内部から反発の声もほとんど上がらず、人々に気づかれることさえもないまま、西側連合の中心諸国は、固有の人権や、市民を守るために樹立された法律上の原則をどう判断するかという点に関して、恣意的な判断が取られるようになってしまった。この変節は、歴史的観点から見れば電光石火の速さで生じたのだが、無慈悲で欺瞞に満ちた政治的陰謀団が推し進めたものだった。そしてこれらの陰謀団は影から世の中の流れを指揮している。さらにこの変節は司法界の共謀により実行されたのだ。司法界は完全に腐敗しており、職務上の義務を果たすことに億劫な態度をとっているからだ。

法が果たすべき機能が停止すれば、たいていその後もっと悪いことがおこるものだ。そしてそれはほとんどすべて、非常に悪質な権力濫用の事例の増加、という形をとる。それは、かつて自由を羨望されていた西側諸国の新たな情勢の、不安を抱かせるが決して孤立した例ではない例で説明できる。読者は、「彼らは我々の自由を憎んでいる」という有名な一節を思い出すだろう。2001年になされたこの誤った主張は、自由の大義を前進させることに何の役にも立たなかったばかりか、破壊と大量虐殺の狂乱を引き起こす元となった。

法秩序の崩壊を顕著に表すのが、ドイツ系アメリカ人弁護士ライナー・フュルミッヒ博士が横領の罪をでっち上げられ、ドイツで不法に拘束され投獄された事件だ。ドイツの司法制度はこのおぞましい茶番に完全に加担している。ディープ・ステート(影の政府)の陰謀団がフュルミッヒ博士を激しく憎んでいるのには、多くの確固たる理由がある。フュルミッヒ博士は、2020年に社会統制の実験が勢いを増していたまさにそのときに、大胆にもコロナパンデミック研究委員会を設立し、この実験を妨害しようとした人物だった。同委員会はフュルミッヒ博士の先導のもと、 偽りの医療緊急事態を画策した者たちの卑劣な動機と殺人目的を暴露する、という素晴らしい仕事をした。それは影の政府にとって大きな打撃だったが、ほぼ完全な情報封鎖の状況下で首尾よく遂行されただけになおさら大きな打撃となった。フュルミッヒ博士には究極の、そしておそらく野心的すぎる、世間知らずとも捉えられるべき目標があった。それは、ニュルンベルク医療綱領を盾にして、この実験の犯人を裁こう、というものだった。残念ながらこの目標は達成されなかった。しかし、同博士のこのような考え方に対してだけでも、彼が起訴しようとしていた人々は激怒したに違いない。

「この計画は長い間計画されてきた。この計画の先駆者となったのは、最終的には失敗した約12年前の豚インフルエンザであり、人々を憎み恐れ、共感力がなく、私たち世界の人々を完全に支配したいという欲望に突き動かされている、超金持ちの精神異常者および社会異常者からなる一団によってでっち上げられたものだ」とフュルミッヒ博士は委員会の調査結果を要約した。

しかし、その精神異常者たちが痛快な復讐を果たす時が来た。そして、彼らはたまたま権力機構を支配していたため、その作戦はさほど困難ではなかった。11か月前、フュルミッヒ博士は、治安機関によってコロナ委員会に潜入していた可能性のある元同僚による、彼が組織の資産を私的利益のために不正使用したという虚偽の申し立てにより、ドイツで投獄された。ドイツの法律ではこの罪は軽犯罪であるにも関わらず、この容疑により同博士は前例のない長期の公判前拘禁を強いられ、現在400日以上投獄されている。まるで、イラクではなくドイツにおけるアブグレイブ刑務所のような話だ。同博士の拘禁状況の衝撃的な描写については、ここを参照。また、現在進行中の裁判自体の不名誉な手続き上の欠陥については、ここを参照。この訴訟手続きは、これまで流布されてきた法治国家(Rechtsstaat)というイメージとは相容れない状況を作り出している。なおそのイメージは、ドイツや「法治国家」であると思われてきた残りの西側諸国の政権によって誤解を招く形で醸成されてきたものなのだが。

フュルミッヒ博士に対する無法な迫害は、実際のところは、COVID「パンデミック」の不正な性質と不吉な背景を明らかにし、文書化することで、注目すべき公共奉仕活動をおこなった、という「罪」によるものである。しかし、この迫害は、自らを法の擁護者と称する社会における法の支配の崩壊の氷山の一角にすぎない。合法性の崩壊とそれが市民の基本的自由に及ぼす悲惨な影響は、説明責任を取る気のない権力の要求に対して市民をまったく無防備にしていることを、さらなる例で説明することができる。

アイルランドでは、多様な性を尊重せよという命令に屈することを拒むキリスト教徒のバーク一家全員が、報復的な迫害の標的となっている。息子の一人、学校教師のエノクさんは、ドイツのフュルミッヒ博士のように、これまで400日以上を独房監禁で過ごしている。彼の「罪」は、かつてキリスト教とカトリックの国であったアイルランドで、生物学的性別とは異なる性別を主張する生徒の一人が好む代名詞の使用を拒否したことにあった。エノク・バークさんは、多様な性の自認という茶番劇に同意することは彼の宗教的信条に反すると考えているため、法律違反者とされたのだ。実際、エノク・バークさんは、迫害者たちの圧力により、2+2= 5であるかのような虚偽の自白をすることで、職業教育者として、また自由な人間として自らを貶めることを拒んだために罰せられているのだ。良心に基づいて抱いてきた信念を撤回すること以外に、明らかに狂気に陥っているアイルランドの法務・教育当局を満足させる方法はないだろう。そのため、エノクさんは アイルランドの刑務所に収監されたままだが、当局の狂気の要求に服従する合図さえ出せば、即時釈放が保証されている。当局が見せるこの狂気の全体像に関する考察ついては、ここを参照。

エノクさんの弟シメオンさんは、法律学を優秀な成績で修了しているが、アイルランド弁護士会への登録を剥奪されている。その理由はまだ完全には明らかにされていないが、シメオンさんがもつ兄と同じ堅固な宗教的世界観と関係しているようだ。現代のアイルランドでは、このような資質は専門家としての資格を失うことを意味するようだ。さらに、エノクさんとシメオンさんの父エノク・バーク・シニアさんも、アイルランドの郵便車両にLGBTの象徴が描かれていることに反対したため処罰されている。そのため、バークさんは納税者でありながら、今後は郵便物は自宅住所には配達されず、受け取りたい場合は地元の郵便局にいかなければならないと、通知された。

フュルミッヒ事件と同様に、バーク一家に下された集団的かつ警告的な懲罰は、可能な限り世間の目に触れないようにされている。政治家や宗教関係者でさえ、この件について立場を表明したり発言したりすることを拒否しており、統制された報道機関は、この問題について議論することを慎重に避けている。

文明の衰退という複雑な図についてまとめるためではなく、ただ単にもう一つの不吉な詳細を付け加えることにしかならないのだが、ジョージ・オーウェルの小説に描かれた思想犯罪制度は、かつては単なる文学的架空話に過ぎないと考えられていたが、現在そんな制度が英国の法律に定められているようだ。その法律は今のところは試験的な取り組みに過ぎないが、今後さらに恐ろしい事態が起こる前兆かもしれない。具体的な話をすると、英国の「中絶クリニック」の周囲に指定された立ち入り禁止区域内で、祈るという行為が禁止された件だ。罪に問われたこの祈りは、おそらくこれらの施設で受けた医療処置が原因でこの世を去った子どもたちの魂のためになされたものであろう。このような許可されていない宗教儀式を個人的におこなうことは、「クリニック」の従業員とその顧客に「嫌がらせや苦痛」を引き起こす可能性があるため、現在禁止されている。そして不吉なことに、内務省によると、「法律違反で有罪となった者は、無制限の罰金に直面する」とのことである。このような期限のない罰則制度について、欧州人権裁判所が何も抗議しないのだろうか、と疑問に思う。文明社会の法律でこのような法律が存在した歴史はあっただろうか?

もちろん単に「命令に従っている」だけの思想警察と、精神的に「法律」に違反していると疑われる市民とのやりとりは、自由と人間としての尊厳を大切にする全ての人々のためにここで確認することができる。

英国のひどい司法制度(そのことを疑う方はここも参照)は、思想犯罪者に対する初の有罪訴追を誇ることができるようになった。英国陸軍の退役軍人アダム・スミス=コナーさんは最近、中絶「クリニック」の緩衝地帯内で中絶によって死んだ息子のために静かに祈った罪で有罪となった。その罪で彼は条件付きの懲役2年の判決を受け、彼を起訴するために国王の裁判所が要した費用と手間に対する罰金9000ポンドを科せられた。裁判所は依然として内務省が定める「無制限の罰金」を科していないが、スミス=コナーさんのように家族を養わなければならない退職者にとっては、おそらくそれでさえ相当な金額である。

なお、スミス=コナーさんは英国における中絶関連の思想犯罪による嫌がらせを受けた唯一の被害者ではない。また、記録のために言っておくと、ここで問題とされていることは、新型コロナウイルスやトランスジェンダー、中絶に対する個人の立場ではない。ここで引用したすべての事例、そして数え切れないほど多くの同様の事例の中心的な問題は、西側諸国全体で法秩序が明らかに崩壊していることを示すものである。この状況により、非難されている行為とはまったく釣り合いが取れないほど厳しい刑罰を平和的な市民に課すことが可能になる。刑罰の厳しさはどこまで及ぶのだろうか? あるいは、英国内務省が公の場で胎児のために静かに祈る人々に課す用意のある金銭評価の脅しと同じくらい「無制限」の厳しさになる可能性があるのだろうか?

多くの人々が、高所から人類を照らしていると騙されて信じてきた有名な「丘の上の都市」は、今や寂しく、ほとんど人が住んでいない。その光は次第に暗くなり、そこでの生活はますます耐え難いものになっている。騙された住民と熱烈な崇拝者は、四方八方に散り散りになっている。そんな中で、非常に明るく、人を惹きつける新しい都市が別の場所に建設され、その建築家たちが間もなくカザンで一堂に会する、という噂が広まっている。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年11月15日)「支配階級に異議を唱えたせいで、ドイツのフュルミッヒ博士と同じ運命を辿った人物がいる!」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2797.html
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Lights out for the city on the hill
出典:Strategic Culture Foundation 2024年10月20日
筆者:ステファン・カルガノビッチ(Stephen Karganovic)
https://strategic-culture.su/news/2024/10/20/lights-out-for-city-on-hill/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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