税金を浪費して弱体化する防衛産業 防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態◉清谷信一(紙の爆弾2024年12月号掲載)
社会・経済政治#防衛省 #自衛隊 #川崎重工業 #空自C ‐2輸送機 #哨戒機P -1 #カヤバ #住友重機 #コマツ
低品質の国産装備を不当に高く調達する防衛省
防衛省の調達では、他国よりも性能や品質の劣った国産装備に対して何倍、あるいは一桁高い調達費や維持費を払っている。
問題はこのような現実を、防衛省や自衛隊への取材の機会を独占している新聞・テレビ・通信社など記者クラブ会員の媒体がほとんど報じてこなかったことだ。
これが防衛以外であれば大問題となっているだろう。
たとえばある自治体が、隣の町では10億円でつくっている小学校を、技術が低い地元の建設会社に50億円や100億円で発注し、しかも手抜き工事で雨漏りや耐震構造もいい加減な欠陥校舎が出来上がれば大問題となるだろう。だが防衛調達では、これが不思議と問題にならない。
国産機の調達をみてみよう。
財務省によれば川崎重工が開発した空自のC‐2輸送機の維持費は、ステルス戦闘機で通常の戦闘機の二倍以上するF‐35Aよりもさらに高い。
CPFH(Cost Per Flight Hour=飛行時間あたりの経費)も当然高い。
財務省の資料で公開されている、川崎重工製C‐2のCPFHは約274万円。
対して米空軍の輸送機のC‐130Jが約61.8万円、C‐17が約150.9万円(※1ドル=112円。
平成30=2018年度支出官レート)高コスト・低性能の輸送機「C-2」と哨戒機「P-1」。
ともに川崎重工製だ(※参考:再生審議会資料『防衛』平成30年10月24日)。
つまりC‐2のCPFHはC‐130Jの4.4倍、C‐17の1.8倍にもなる。
ペイロード(積載量)1トンあたりのCPFHは、C‐2は10.5万円(最大26トン)、C‐130Jは3万円(同20トン)、C‐17(同77トン)は1.96万円である。C‐2はC‐130Jの約3.5倍、C‐17の5.4倍と、比較にならないほど高いのだ。
さらに1機あたりのLCC(ライフ・サイクル・コスト)はC‐2が約635億円、C‐130Jが約94億円、C‐17が約349億円。C‐2はC‐130Jの6.8倍、C‐17の1.8倍である。
ペイロード1トンあたりにするとC‐2は24.4億円、C‐130Jは4.7億円、C‐17が4.5億円。
ここでもC‐2はC‐130Jの5.2倍、C‐17の5.4倍となり、これまた比較にならないほど高い。
C‐2の調達および維持費が、輸送機としては極端に高いことがわかるだろう。
調達単価、CPFHの面からもC‐2は極めてコストが高い。
直近の令和3(2021)年度の補正予算での調達単価は243億円。
これはペイロードが3倍近いC‐17と同等以上だ。
この極めて高額なC‐2輸送機を大量に買い、また空自は電子戦機のRC‐2やスタンドオフ電子戦機などもC‐2ベースの派生型として開発している(編集部注・電子戦とは電磁波を使った通信妨害などを伴う戦闘)。
これら派生型は、既存機と整備や訓練などを共用化、効率化できるなどメリットが大きいことはいうまでもない。
だが先述のように、C‐2はそのものが調達単価も維持費も超高額であるため、それらのメリットは消し飛ぶ。そもそもC‐2の大きなペイロードは電子戦機に必要ない。
対して米空軍はビジネス機のガルフストリーム550をベースに電子戦機EC‐37Bを開発した。
550の調達単価は70~80億円程度にすぎず、C‐2の約3分の1程度だ。維持費も一桁は違うだろう。
いったいどちらがまともだろうか。
欠陥哨戒機P‐1をめぐる海幕と石破茂長官の攻防
同じく川崎重工が開発した哨戒機P‐1も、コストがバカ高い欠陥機だ。
現首相の石破茂氏が防衛庁長官だった2002年、彼はP‐1の開発に反対した。
P‐1が低性能・高価格となることは必然だったからだ。
しかし、内局や海上幕僚監部(海幕)に詰め寄られて、最終的には開発を認めざるを得なかった。
官僚たちが一斉に反対することで、彼は孤立無援化してしまった。
海幕は、機体・エンジン・システムすべてを新規に開発する方針をとった。
米国ですら既存の双発旅客機である737をベースに開発していたにもかかわらず、新規にエンジンを4発にし、整備コストを大幅に引き上げた。
実はその当時から川崎重工がライセンス生産していきた哨戒機P‐3Cですら、整備予算が足りずに既存の機体からパーツを剥がして使う、いわゆる「共食い整備」をしていた。
同機は世界的なベストセラー機として信頼性が高かったのだが、それですらこの有り様なのに、機体もエンジンもシステムも全部専用となれば、調達・維持コストが高騰するのは目に見えていた。
海幕は石破氏に対して「4発の方が双発に比べて生存性が高いです、長官には現場の隊員の気持ちがおわかりになりませんか」と詰め寄った。
だが石破氏は「現場は信頼性の低い4発のよりも信頼性の高い双発がいいと言っていたのだが」と筆者に後に語っている。
確かに、同じ信頼性のエンジンであれば、双発よりも4発のほうが信頼性は高い。
しかし、信頼性の低いものが4発ではその理屈は通用しない。
そして現実にP‐1は低稼働率にとどまっている。主原因はエンジンの信頼性だった。
さらに、4発にすることでコストが高騰し、P‐1は整備用パーツを十分に確保できないことも予想されていた。当時のP‐3Cですら前述のように「共食い整備」を強いられていたので、それよりも維持費が何倍もかかるP‐1ではなおさらだ。
果たしてP‐1の調達費は初年度(2008年度)で予定の100億円から157億円に高騰、来年度では421億円と、当初の目論見の4倍以上に膨れ上がっている。
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