【高橋清隆の文書館】(2024年08月17日): 「日本独立の一点で共闘」「多国籍企業と一体となった米国の軍産複合体・金融資本が世界をコントロール」、日米合同委員会を市民活動家と研究者が斬る isfシンポジウム
社会・経済日米合同委員会を主題にしたシンポジウムが7月21日、独立言論フォーラム(isf)の主催により東京都文京区内で開かれた。パネルディスカッションでは、2月からニュー山王ホテル前で廃止要求デモを展開する市民活動家の甲斐正康(かい・まさやす)氏が「日本独立に向けた一点で共闘」を呼び掛けるとともに、『日米合同委員会の研究』(創元社)などの著者でジャーナリストの吉田敏浩(よしだ・としひろ)氏が「世界規模での多国籍企業と一体となった米国の軍産複合体・金融資本が世界をコントロールしていく権力構造の中に組み込まれた合同委員会という視点で見ることが重要」などと訴えた。
パネルディスカッションに臨む(左から・敬称略)木村、パストリッチ、植草、吉田、甲斐、川口(2024.7.21、家電会館で筆者撮影)
シンポジウムは「日米合同委員会の存在と対米従属からの脱却を問う」と題し、第1部で鳩山友紀夫元首相(ビデオメッセージ)、政治経済学者の植草一秀氏、吉田氏、原口一博衆院議員が講演。第2部はパネルディスカッションで、isfの木村朗(きむら・あきら)編集長が司会を務め、植草氏と吉田氏のほか、ニュー山王ホテル前デモの共同主催者の川口智也氏と甲斐氏、日本在住の学者で米大統領選に無所属で立候補経験のあるエマニュエル・パストリッチ氏が意見を交わした。植草・パストリッチの両氏は3月の第2回デモに参加している。
米側代表に要求文、ゲリラデモには10倍の公安[甲斐氏]
ニュー山王ホテル前デモを始めた動機を問われた甲斐氏は「あれこれ考えるより、実際に動く主義なんで」と返答。「どうせなら、誰もやらないことをやろうと思い、日米合同委員会が浮かんだ。それで、会議の開かれる木曜日にぶつけた」と吐露し、米側代表のジョージ.B.ラウル4世准将に宛てた要求文の内容を振り返った。
要求文は、①日米合同委員会の廃止②過去行われた同委員会の全議事録の公開③同委員会で取り決められた全密約の白紙撤回――を求めている。2月1日の第1回デモで手渡すことはできなかったが、後日福生市内の郵便局で受け取られたことを確認。以後、ラウル氏に返答を求め続けている。
デモ参加者には反戦・平和主義者もいれば、民族主義者もいる。「この運動に思想は関係ない。日本独立に向けた一点で共闘しなければ」と甲斐氏は強調する。
7月11日には、警察に無届けで前夜SNS(会員制交流サービス)で告知しただけのゲリラデモを決行した。横田基地からの有機フッ素化合物(PFAS・ピーファス)漏出事故について、日米両政府が非公表とすることで合意していたことが報じられたからだ。「集まったのは総勢6人。その10倍くらいの公安が来た」と苦笑した。
今後の予定として、7月29日のヴェオリアジャパン前での水道民営化への抗議、8月25日のニュー山王ホテル前の大規模集会を挙げ、広く参加を呼び掛けた。
絶望が敵側の一番望むもの、宣伝に惑わされるな[川口氏]
川口氏も「行動する大切さ」を説いた。「SNSの中の言論人は多いが、物足りない気がしていた。2021年に竹中平蔵が教授を務める東洋大学の前でデモをやると甲斐さんに誘われ、軽い乗りで行ったのが最初」と振り返った。
豪州のある活動家が「ネットは人間を閉じ込めるもの」と仮想空間への没頭を戒めていたことを紹介。システム上、投稿人と同じ意見の持ち主だけが相互フォローすることで世論を見誤る「エコチャンバー現象」に陥ることを注意喚起した。
「チラシをつくって政党や政治家の事務局を回ることを思い付き、実際にやったら、世界が広がった。ネットだけでは意見が広まらないことを実感し、重要だと思った」と吐露した。
ネット上にあふれる誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)や、それを受けての落ち込みに触れ、「ネット工作の目的は活動させないこと。民衆に一番埋め込みたいプロパガンダは、下手なことをすると殺されるという漠然とした恐怖」と指摘。
あるスピーチライターが敵対する政治家の両方に雇われていたことを告白した例を挙げ、「民衆に無力感を抱かせることが目的では」と推論。第2回デモで植草氏が「諦めが最大の敵」と主張したことに同調し、「絶望が敵側の一番望むもの」と看破。消極化の宣伝に惑わされないよう諭した。
日米合同委員会は米国憲法違反、平和委員会の設置を[パストリッチ氏]
パストリッチ氏は、F.ルーズベルト大統領政権末期からの米国の変容に触れた。「1943年ごろから、大英帝国から権力をもらいたいと考えるようになった。マンハッタン計画は、金融・情報・軍産が関係し、今の機密行政の元になった」と指摘。
日米合同委員会は、米国が自由と民主主義を尊ぶ共和制国家の追求と「違う役割」を担う表れだという。「言論の監視、ワクチンを含む秘密協定を管理する大企業との関係、ナノ兵器や空気・水を介した人体攻撃、中国・ロシアとの戦争を準備している」と非難した。
米国は戦時経済体制を続けているとして、日米合同委員会の代わりに「日米平和委員会」の設置を提案した。「一般市民が専門家と協力し、双方の利益を討論し、米国側の深刻な状況も公に話せる場を」と主張した。
もう一つの側面として、「多国籍企業・投資銀行の争い」を挙げた。バイデン大頭領の背後にいるブラックロックは株・証券による資産運用会社。トランプ元大統領の背後にいるのはブラックストーンで、実物資産である不動産を使った投資ファンド。
「両者の争いの上に、何人かの金持ちによる地球全市民に対する戦争がある」と強調した。
その上で、「日米合同委員会は米国憲法違反。共和国に戻るべきで、大英帝国に倣って全世界を支配するのは間違い。この文脈で、日米合同委員会には米国人として反対する」と訴えた。
天皇制も反共方針も米側との結託、いびつな関係の原点[植草氏]
政治経済学者の植草一秀氏は、第1部でわが国の支配構図を「サンフランシスコ平和条約-日米安保条約-日米行政協定(≒日米地位協定)-日米合同委員会=密約」と描いて説明している。甲斐・川口両氏主催の山王ホテル前デモについて「市民が行動することが大事」と称賛した。
7月7日の都知事選に触れ、「日本の選挙の構造は、有権者の半分が投票に行き、その半分が自公に入れる。つまり、25%が政治を私物化している。東京都の有権者は1150万人で、25%は290万人。この290万人は小池都政の利権絡み。残りに対する工作として、①政治に関心を持たせず②残りの候補を分断する――ことを挙げた。
日米合同委員会に象徴される日米のいびつな関係の根源について、当然米側に責任があるとしながらも、「こちら(日本)側にも問題がある」と提起。「日本サイドが米国に『いてください』と言った。米側は『いてくれと言うならいてやろうか、守るとは言えないが』となった」と指摘した。
1947年昭和天皇「沖縄メッセージ」によれば、「米国による沖縄占領は日米双方に利し、共産主義勢力の影響を懸念する日本国民の賛同も得られる」などとしている。これを受け、池田勇人蔵相は訪米し、「米軍が日本に駐留することを日本側からオファーしてもよい」と述べた。51年のダレス・天皇会見で「根本方針」に結実する。
「天皇制も反共の方針も、米側とタイアップ(結託)した。これが安保条約と行政協定が作られた原点」と強調した。
世界的大株主が経団連の要求=自民党の政策に[吉田氏]
吉田氏は第1部で、日米合同委員会で決まった、分かっているだけでも12の密約を紹介。うち、横田空域や岩国空域の航空管制を委任する「航空管制委任密約」は航空法によるものではなく、外務省機密文書『日米地位協定の考え方・増補版』に基づいても無効であると指摘した。
パネルディスカッションでは、ニュー山王ホテル前行動について「2人がストリートから声を上げたことはとても重要で、共感する。ネットの枠から出て街頭から生の身で伝えた」と評価。
自身が取材した沖縄・宮古島の迎撃ミサイル配備や弾薬庫建設への反対運動を振り返り、「米国の対中戦略に追随してやっていることで、島が戦場にされかねない。命を脅かす権力に対し意思表示することは、世界的に普遍的なもの。抵抗の人類史の一コマであり、自信を持って共感の輪が広がれば」と期待を示した。
その上で、「米帝国主義の侵略の中での位置付けを考えなければ」と、パストリッチ氏が言及したブラックロックのような大株主が経団連の要求となって自民党の政策になっていると指摘し、佐々木憲章(ささき・けんしょう)著『日本の支配者』(新日本出版)を紹介。
米国の世界戦略のための日米合同委員会と、『年次改革要望書』の規制緩和要求に象徴される経済的支配が並行していることを説明し、「世界規模での多国籍企業と一体となった米国の軍産複合体・金融資本が世界をコントロールしていく権力構造の中に組み込まれた合同委員会という視点で見ることが重要」と強調した。
※なお、この記事は「高橋清隆の文書館」2024年11月1日のブログ記事
「日本独立の一点で共闘」「多国籍企業と一体となった米国の軍産複合体・金融資本が世界をコントロール」、日米合同委員会を市民活動家と研究者が斬る isfシンポジウム」http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/2063513.htmlからの転載であることをお断りします。
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反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/