【連載】知られざる真実/2024年11月19日 (火)名古屋市長選広沢氏先行の理由
社会・経済政治裏金事件は政治に対する不信を顕在化させる重要な契機になった。
これ以前にも多くの不祥事が相次いできた。
モリ・カケ・サクラの不祥事は重大問題だったが責任を問われるべき者の責任が追及されなかった。
森友事件で摘発されたのは籠池泰典夫妻だけ。
籠池夫妻は真実を明らかにしたために標的にされた。
国家財産を不当な安値で払い下げたのは財務省である。
そして、財務省は虚偽公文書作成の犯罪行為に手を染めた。
その背後にあるのが安倍晋三氏の意向だった。
国家に巨大な損失を与えた背任の罪でも虚偽公文書作成の罪でも犯罪を指揮した者の責任は問われていない。
加計学園に対する獣医学部新設の許可も極めて不透明である。
加計学園理事長は安倍首相等に対して利益供与した疑いが濃厚である。
安倍内閣が便宜供与を行った疑いは強い。
桜を見る会前夜祭では選挙区有権者に対して利益供与が行われたと見られている。
しかし、これらの犯罪行為の刑事責任は問われなかった。
日本の検察には巨大で不正な裁量権が付与されている。
その裁量権とは「犯罪が存在するのに犯罪者を無罪放免にする裁量権」と「犯罪が存在しないのに無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権」である。
私は後者の被害者。
2022年7月に安倍元首相が殺害されたことを契機に自民党と旧統一協会の癒着に焦点が当てられた。
自民党は組織ぐるみで旧統一協会と癒着してきた。
政策運営が著しく歪められてきたと言える。
そして2023年秋から問題が表面化したのが裏金問題。
政治資金規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支公開等の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的として制定されたもの。
政治資金の収支公開はすべての基本である。
ところが、自民党は組織ぐるみでこの根幹を意図して破壊した。
巨大な組織犯罪を実行した。
しかし、日本の刑事司法当局は巨大犯罪のほんの一部しか摘発しなかった。
85人の議員が犯罪行為に手を染めたのに検挙したのはわずか3人だった。
統一協会との癒着も裏金犯罪も問題の核心は旧安倍派だった。
10月27日の衆院総選挙で自民党が議席を激減させたが、最大の議席減に直面したのは旧安倍派である。
このことを日本の主権者が歓迎している。
旧安倍派と密着してきたフジサンケイグループだけが、このことに反発する姿勢を示している。
10月27日の衆院総選挙では裏金問題を許さない主権者の気持ちが自民議席激減の結果をもたらした。
主権者である国民が自らの判断で投票行動を激変させ始めている。
兵庫県知事選で斎藤元彦前知事が再選された。
インターネット上への情報発信を担うスタッフが400人も存在したことが伝えられている。
SNSやYOUTUBEを活用した選挙活動が新たな票の掘り起こしに絶大な力を発揮することが確認されたと言える。
このなかで、斎藤氏勝利の要因を探ると、政策提言のなかに示される「財政資金の使い方」が極めて大きな意味を持つことが浮かび上がる。
とりわけ重要な意味を発揮したのが「新庁舎建設」、「外郭団体縮小」、「県立大学授業料無償化」だった見られる。
斎藤氏が「新庁舎建設」に関して費用圧縮の方向性を示したのに対し、稲村候補は新庁舎建設に1000億円投入との情報が広く流布されたと見られる。
1000億円投入は事実に基づく情報流布ではないと見られるが情報が氾濫して、そのまま有権者に受け取られた可能性がある。
また、「県立大学授業料無償化」は斎藤氏がアピールした政策で、これに否定的なスタンスを示せば市民の批判を浴びる項目だった。
「外郭団体の縮小」は斎藤氏だけでなく稲村氏も提示した政策だったが、県庁舎建設費用の圧縮を斎藤氏がアピールしたことが勝敗を分ける大きな要素になった点を否定できない。
24日に名古屋市長選が投票日を迎える。
河村たかし前市長から後継指名された広沢一郎候補は市長給与800万円、市民減税継続を公約に掲げる。
この二点に明確な姿勢を示さない大塚耕平氏は主権者の広い支持を集めるのが困難ではないかと考えられる。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050