【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.12.07/櫻井春彦 : ウクライナも中東も戦乱の原因を作っている勢力は同じ

櫻井春彦

 シリアで軍事作戦を開始、アレッポやハマを攻撃しているハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)はかつてアル・ヌスラ戦線と呼ばれていた武装組織。シリアで活動を始める前にはAQI(イラクのアル・カイダ)」と呼ばれていた。​故ロビン・クック元英外相は2005年7月、アル・カイダはCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだと説明している​が、これは事実である。

 アメリカはベトナム戦争で自国軍を投入して敗北、1973年1月に調印されたパリ和平協定で停戦になるが、アメリカは大きな痛手を被った。それを反省したのか、アフガニスタンでは傭兵を使う。

 パキスタンのベナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールが1989年に語ったところによると、アメリカは73年からアフガニスタンの反体制派へ資金援助しはじめている。その時に目をつけられたのがクルブディン・ヘクマチアルだが、その選定はパキスタンの情報機関ISIのアドバイスに基づくとされている。ヘクマチアルはカブール大学で学んだ後、ムスリム青年団のリーダーになったが、この組織はCIAから支援を受けていた。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)

 アメリカでこうした工作を指揮していたズビグネフ・ブレジンスキーはヘクマチアルを中心とする武装勢力を組織する。戦闘員はサウジアラビアの協力でサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団の協力で集められた。

 武装勢力の資金源はベトナム戦争の時と同じように麻薬が利用され、そうしたカネを扱うためにBCCI(国際信用商業銀行)やオーストラリアのナガン・ハンド銀行などが使われた。いずれもCIAの銀行とされているが、一般的な金融機関もそうした資金を扱っている。​国連の麻薬犯罪局長を努めていたアントニオ・マリア・コスタによると、麻薬取引の利益は2008年の時点で3520億ドルあったと推定されている​。こうした流動性の高い資金に救われた銀行がいくつかあるという。

 CIAとISIがアフガニスタンで進めていた秘密工作には政治的な障害があった。ベナジル・ブットの父親、ズルフィカル・アリ・ブットの政権だ。そのブット政権は1977年に軍事クーデターで排除され、ブット自身は79年に処刑された。クーデターを主導したのはムハンマド・ジア・ウル・ハク陸軍参謀長だ。ハクはムスリム同胞団系の団体に所属、ノースカロライナ州のフォート・ブラグで訓練を受けた経験がある。その一方、イギリスはソ連の中央アジア地域を混乱させ、イスラエルのために中東をバルカン化、つまり分割して対立させようと活動していた。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Pregressivepress, 2019)

 ブレジンスキーの教え子の中にはマデリーン・オルブライトやバラク・オバマも含まれている。オバマは大統領時代の2011年春にムスリム同胞団やアル・カイダ系武装集団を利用してシリアやリビアを攻撃し始めている。現在、HTSはトルコ政府に雇われているが、そうした傭兵の仕組みを作ったのはブレジンスキーにほかならない。

 このHTSの背後にはアメリカやイスラエルも存在しているが、ウクライナの情報機関がこの武装勢力にドローン、アメリカの衛星ナビゲーション、電子戦システムを提供すると同時に、シリア内の工作員やTIP(トルキスタン・イスラム党)の協力者にそれらの使い方を教えたという。

 ウクライナの現体制は2014年2月、ネオ・ナチによるクーデターで成立した。黒幕はアメリカのネオコンだが、スコット・リッターによると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はイギリスの情報機関MI6のエージェントであり、そのハンドラーはリチャード・ムーアMI6長官である可能性が高い。

 CIAとMI6はNATOの内部に作られた秘密部隊を動かしているが、そのネットワークはウクライナへも伸びている。ウクライナの組織を統括していると言われているドミトロ・ヤロシュはネオ・ナチの幹部。

 ウクライナのネオ・ナチはステパン・バンデラの後継者。バンデラを中心にOUN-Bなるグループが作られた。MI6(イギリスの対外情報機関)とゲシュタポ(ナチスの政治警察)のハイブリッドだとも言われている。

 この人脈はのちにKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)を生み出し、バンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコが指揮する。1986年に彼が死亡すると妻だったスラワ・ステツコが引き継ぎ、2003年に死ぬまで率いることになる。

 KUNの指導者グループに所属していたひとりにワシル・イワニシンなるドロボビチ教育大学の教授がいたが、その教え子のひとりがヤロシュにほかならない。イワニシンが2007年に死亡するとヤロシュが後継者になった。このタイミングでヤロシュはNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。

 ウクライナも中東も背後にはアメリカやイギリスの人脈が存在している。その人脈が侵略、破壊、略奪、虐殺を繰り広げている。ウクライナも中東も構図は同じだ。

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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
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