【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月8日):バイデンが息子を恩赦したことの本当の意味とは?

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

ジョー・バイデンは自身の息子の恩赦はしないと発言していたが、結局は恩赦した。恩赦は大統領や知事の権限であり、不正を正すため、または恩赦された人物が恩赦された犯罪の損害を相殺する奉仕をおこなった場合に使われることになっている。しかし、ビル・クリントンがマーク・リッチとクリントンの異母弟であるロジャー・クリントンを恩赦したように、恩赦はしばしば正当でない理由で使われる。ロジャーについては、ビルは刑期を終えるまでロジャーを恩赦しなかった。しかし、FBIの最重要指名手配10人のうちの1人とされていた国際逃亡犯であったリッチは、政治献金とクリントン図書館への寄付と引き換えに赦免されたようだ。寄付は恩赦後15年間続いた。言い換えれば、恩赦は買収された、ということだ。https://nypost.com/2016/01/17/after-pardoning-criminal-marc-rich-clintons-made-millions-off-friends/

バイデンによる息子ハンターに対する恩赦は、ハンターの判決が出る前で、服役日が1日も経たないうちに行なわれた。多くの母親や父親が、自分の息子や娘に恩赦を与える権限があればいいのに、と思っていることは間違いない。気になるのは、バイデンが、ハンターに対する告訴は政治的な動機によるもので、バイデン大統領を傷つけるために計画されたように装っている点だ。まるでバイデンの保護に尽力するとされているFBIと司法省が彼に対して行動を起こしたかのように見せている点だ。実際のところこの告訴はバイデンを守るためのものであり、ハンターのラップトップ内のより危険な情報から注目をそらすために提起されたものだったのに、だ。政治的動機による告訴はトランプに対して提起されたものだ。たたし、私はバイデンが権力を使って息子を刑務所から救ったことについてあまり責める気はない。この行為はジョー・バイデンが自分の評判よりも息子に献身していることを示している、ともとれる行為だからだ。家族を保護することは社会の基盤であるため、今回の恩赦を保守的な行為、と見ることができるからだ。しかし、私たちの社会では法の下の平等を守る立場も重要な要素だから、この恩赦によってバイデンが打撃を受けることになったのも仕方がない。

恩赦よりも腹立たしく感じるべきことは、FBIと司法省がハンターのラップトップの証拠からバイデン大統領とその息子を保護したことだ。FBIは、ラップトップはロシアが米国大統領の信用を失墜させようとしたという話を流し、売女マスコミはすぐにそれを信じて報じた。ハンターが受けた訴追は、銃購入申請書に虚偽の記載をしたこととハンターとバイデン大統領の影響力のもとでおこなわれた事業により得られた利益に対する所得税の未払いに限定されており、今回の恩赦により、FBIと司法省(Department of Justice:justice「正義」とは名ばかりだが)はこれらに目をつぶることになった。しかし実のところ、トランプが起訴され訴追された文書容疑についてバイデンに許可を与えたのも、まさにこのFBIと司法省であったのだ。

言い換えれば、民主党政権下で米国の司法は完全に腐敗していたにもかかわらず、前回の選挙では米国の有権者の45%が民主党に投票したのだ。このことが示しているのは、有権者のほぼ半数が、あまりに無頓着か無知すぎて何が起こっているのか分かっていない、あるいは、司法機関が正義や政治的、思想的、個人的な目的に役立っているかについて興味や関心がないかのどちらかだ。

結論から言うと、米国民のほぼ半数が法律を政治的武器として受け入れているのは、非難に値する、ということだ。FBIと司法省の職員が、法律と検察の悪用に抗議して辞職しないということは、彼らも上司による法律の濫用を受け入れている、ということだ。連邦法執行機関全体が根底から腐敗しているというのに、法律が国民の盾から国家の武器へと変貌する状況を覆せるのだろうか。トランプは政府の他のすべての側面の正義を回復しようとしているなかで、このような巨大な課題を達成できるだろうか。渡るには長すぎる橋なのだろうか。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月07日)「バイデンが息子を恩赦したことの本当の意味とは?」
https://www.paulcraigroberts.org/2024/12/02/the-pardon/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒The Pardon
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:自身ブログ 2024年12月2日
https://www.paulcraigroberts.org/2024/12/02/the-pardon/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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