【連載】知られざる真実/2024年12月9日 (月)理念が歪んでいる日本財政
社会・経済政治日本財政の本当の問題は財政資金の配分にある。
血税の使い方がおかしいのだ。
「財政規律」という言葉が使われるが、使い方が間違っている。
政府や与党が「財政規律」を口にするとき、主張の帰結は「増税」が「歳出削減」だ。
「歳出削減」で真っ先に来るのが社会保障支出。
社会保障支出を削るか社会保険料負担引き上げが提案される。
財政運営を徹底的に切り詰めて実行しているなら理解もできる。
しかし、現実は違う。
一番わかりやすい例を示そう。
国の財政支出を包括的に知ることができるのは
「一般会計・特別会計歳出純計」
国の歳出全体像を知ることができる。
2024年度の数値を示す。
全体は259兆円。
大きいのは社会保障支出102兆円と国債費89兆円。
国と地方を合わせた社会保障給付は138兆円で80兆円は保険料収入で賄う。
公費負担は55兆円で国が38兆円、地方が17兆円。
国の社会保障支出102兆円のうち公費で賄っているのが38兆円、保険料が65兆円だ。
国債費が大きいのは満期が到来した国債の償還費が計上されているため。
償還財源の大半は借り換え国債発行で賄っている。
これ以外の支出では地方交付税交付金が22兆円、財政投融資が11兆円。
国の政策支出から社会保障支出を除いたのが「その他」で34兆円。
このうち、防衛費が7.9兆円、予備費が1.6兆円。
両者を除くと24.5兆円になる。
ここにすべての政策支出が含まれる。
この金額は22、23年度が23兆円で24年度が24.5兆円でほとんど変わらない。
一般会計・特別会計歳出純計は259兆円と大きいが、社会保障、防衛以外の政策支出は1年間合計で24兆円程度である。
すべての政策支出を24兆円でやりくりしている。
このなかにも存在意義の乏しい無駄な政府支出は含まれているが、予算査定で厳しい折衝は行われている。
問題なのはこれらの本予算とは別に編成される補正予算。
2020年度から23年度までの4年間に合計154兆円の追加支出が補正予算に計上された。
1年平均39兆円。
1年間の政府支出を24兆円に収めているなかで1年平均39兆円もの追加支出が計上された。
コロナで一気にたがが外れたと言える。
2020年度に補正予算で計上された歳出追加は73兆円。
空前絶後だ。
1人10万円の給付が実施されたが、これだけが透明公正な政府支出だった。
この金額が13兆円だが、これ以外の支出は不透明極まりないものだった。
最大の支出は「資金繰り対策」の名目で計上された19兆円。
内実は財務省天下り先への「資金贈与」だった。
「出資金」の名目だが、実態は政策投資銀行や政策金融公庫などの財務省天下り政府系金融機関への資金贈与。
どさくさに紛れて、自分たちの天下り先に法外な金を流し込んだ。
ワクチン関連に4,7兆円。
ワクチン代金は2.4兆円だったが、なんと回数にして8.8億回分だった。
ワクチン接種対象人口は1億人強だろう。
8.8億回分の算出根拠が不明だ。
接種代金が2.3兆円。
病床確保等に6兆円。
どさくさに紛れて血税の大争奪戦が展開された。
154兆円の補正予算全体が利権の塊。
この一方で社会保障支出を切り刻み、社会保険料負担の引き上げが熱烈推進されている。
このような歪んだ財政運営のことを「財政規律の欠落」と表現するのが正しい。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050