☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月15日):米国によるシリア政権の転覆は偽善の極致!「アフガニスタンのタリバンは『悪』であり、シリアのアルカイダは『善』とは!!」
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
西側諸国が「アフガニスタンがタリバンに占領されるのを防ぐには20年間占領する必要がある」という発言から「やった!シリアがアルカイダに占領された!」という発言に一気に変わったことには、驚きを禁じえない。
ケイトリン・ジョンストン
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西側諸国が「アフガニスタンがタリバンに占領されるのを防ぐには20年間占領する必要がある」という発言から「やった!シリアがアルカイダに占領された!」という発言に一気に変わったことには、驚きを禁じえない。
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イスラエル国防軍は、アサド大統領の国外逃亡を受けてシリアの安全と治安を守るという名目でシリア領内の新たな一帯を占領しようと動いているが、この事に対する西側諸国からの非難の声はほぼ皆無だ。
イスラエルについて私たちが信じるように求められている最も愚かな口実の一つに、危険が迫ったときにイスラエルが自国の安全と安心を確保するためにできることは、より多くの土地を奪うことしかない、というものである。土地の奪取が常に答えなのだ。
一言でいうと、こういうことだ。
ロシアが国境での脅威から自国の安全保障上の利益を守るという名目で他国を侵略することは、間違っていて、邪悪で、最悪の行為だ。
イスラエルが国境での脅威から自国の安全保障上の利益を守るという名目で他国を侵略する=問題ない、普通だ、何も懸念することはない。
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米国は、シリアにおけるアルカイダ系組織の勝利を受けて、指定テロ組織一覧からタハリール・アル・シャムを外すことを検討している。以前にも言ったが、もう一度言わせて欲しい。「テロ組織」というのは、戦争と軍国主義を正当化するための西側諸国の言説支配の手段として使われる、完全に恣意的な呼称だ。実際の語義は、「爆弾を落とされる必要がある不服従な人々」という意味しかない。
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米帝国支持者たちが、シリアにおける西側諸国の政権転覆介入を批判した私を「親アサド主義者」呼ばわりしているのは、とても滑稽だと思う。その呼称に意味があるかのように言っているが、アサドはもういない。彼らは、私がアサドの権力維持を助けているなどと主張することはできないのに。このことからわかることは、連中は一度も私を叱責した理由が「アサドを支持している」ことにない、ということだ。本当に馬鹿げている。連中が私に噛み付いてきた理由は常に、私が西側帝国を批判していたからだけだった。私がいつもは、連中の批判ばかりやってきたのだから。
アサドはもう存在しない。あなたたちの仲間が権力を握り、あなたたちの愛する帝国が何年も追い求めてきた政権交代を実現した。あなたたちはもう弱者の味方をしているふりをすることは許されない。帝国を擁護し続けたいのなら、今こそ公然とその姿勢を示すしかなくなった。これまではシリアでの帝国の行動を批判する者に、「お前たちは中東の指導者に忠誠を誓っているのか」という奇妙な言いがかりをつけることを、帝国へのおべっかの隠れ蓑に使ってこれたのだが、それもできなくなった。帝国を弁護するには別の口実を見つけなければならなくなったのだ。
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私は個人的に、中東における西側諸国の介入が良い結果と平和につながるとは信じていない。なぜなら、私はゆうべ地球上に生を受けたばかりの、柔らかい頭をした無垢の新生児ではないからだ。
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帝国擁護論者は、シリアについて議論する際、感情に訴えるという誤った手法に大きく依存している。その理由は彼らは真の論点を持てないからだ。彼らはシリアを破壊した西側諸国の長年の介入に対する批判に反論できないので、代わりにアサドにより生み出された犠牲者についてまくしたてている。しかし、どれだけ悲しい話を持ち出しても、どれだけ同情を引き出しても、2011年の初めから、シリア政権を転覆させるという目標を掲げて、米国とその同盟諸国がシリアを破壊しようとしていた、という広く文書化された事実に対する反論にはならない。アサドが自国民に対して樽爆弾を使ったという話しや囚人に対して酷い扱いを加えてきたことについての非難をいくら繰り出したとしても、それが論点にはならないだろう。
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私自身、シリアで長年起きていることを誤解している人々を責めようとは思っていない。私のお気に入りの分析家の中には、シリア戦争の初期の頃に誤解していた人もいる。シリアの問題は複雑なのだ。真実と虚偽を区別するのは難しく、一人間としてそのすべての道徳的複雑さと矛盾を整理して考えることは困難だ。重要なのは、自分がいま分かっていることのみを基盤にして、自分の立ち位置を決するのではなく、好奇心を忘れず、決めつけず、真実を学ぼうと真摯に取り組むことだ。
シリアでは長年、世界がかつて見たことのないような最も複雑な心理作戦や多方面戦争が繰り広げられてきた。最初から理解できなくても問題ない。世界は混乱した場所であり、急速に混乱しつつあるからだ。最善を尽くし、好奇心を持ち続け、学び続けよう。
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米国下院は、共産主義犠牲者記念財団が共産主義と権威主義の悪について米国の学生を教育するための教育過程を開発することを許可する法案「重要な共産主義教育法案」を圧倒的多数で可決した。
そうだ、子どもたちよ、米国政府は資本主義が自明の理で素晴らしいと信じているため、子どもたちに資本主義を支持するよう教え込む法律を制定する必要があるのだ。米国政府は権威主義に強く反対しているため、全面的な再教育計画をつくることで、西側の帝国諸国が唱える自由を受け入れるよう君たちの心を訓練しようとしているのだ。
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イスラエルが過激派入植者を利用して、国家としてやっても許されないことをやってのけるのは興味深い。イスラエル政府は西側諸国の支援者の前では公式にはナチスと距離を置いているが、裏ではこのナチスのような勢力にやりたいことを何でもやらせた上で、彼らが要求しているものを少しずつ、すべて与えていく。こうしてイスラエルは、理論上は、自分たちは自由民主主義国家であることを西側諸国に対して伝えながら、その本質は許容範囲から大幅に外れている極右なのだ。
この状況が最近明らかになったのは、イスラエル国防軍が過激派入植運動指導者ダニエラ・ワイス氏と協力し、将来の入植地候補地としてガザ地区の偵察を手伝った後で、その行為は「違法かつ慣例に反しており、しかるべく対処する」という声明を発表した事例だった。いずれはガザ地区にこうした入植地を建設する非公式の計画があることは誰もが知っているが、イスラエル政府の公式見解は、そんなことはありえない、というものだった。
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米帝国の支持者になるのは素晴らしいことだろう。嫌いな国家指導者が殺されたり追放されたりするのを目にできるし、戦争には連戦連勝、主流の西側諸国の評論家や政治家を信頼して彼らの言うことをすべて信じることができ、小学校で教えられた世界観をずっと持ち続けられる。
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警察は、健康保険会社の経営最高責任者ブライアン・トンプソン氏殺害の容疑者を逮捕した。興味深いことに、容疑者のソーシャル・メディアには、トンプソン氏殺害犯に同情する平均的な人々よりもかなり右寄りの政治的世界観が表れている。右寄りの人々ほど、トンプソン氏に同情する可能性が高い。
この銃撃事件をめぐる議論におけるこの共感の不均衡は、見ていて興味深い。なぜなら、それは米国の自由至上主義者が唱える「不可侵の原則」の矛盾を浮き彫りにするからだ。右翼自由至上主義者によると、人々の命を救う医療を奪って金持ちになった人物は、侵略行為を犯していない、とされる。そのような世界観では、利益の創出を何よりも優先する体系に内在する濫用は認識されない。他人の苦しみや病気、闘争を利用して富を築く暴君による暴力。そのお金がなければ医療や住居などの必需品を買うことができない人々の収入を保険料や家賃の支払いで搾取する暴君たち。生物圏を略奪し、産業界が生じさせた損失を私たち全員が依存している生態系に転嫁する暴君たち。資本主義と呼ばれる搾取的な社会政治体系を利用して労働者から法外な賃金で労働力を搾取する暴君たち。労働組合を潰し、労働者の権利を侵害し、最低賃金の引き上げに反対することで利益を最大化する暴君たち。これらの暴君たちのおこないは、完全に合法とみなされ、そのような暴君たちに抵抗する試みは完全に違法とされている。
もしあなたの世界観が、暴力が人を撃つという物理的な行為に限定されず、その力は誰かを監獄に閉じ込めるという物理的な行為に限定されないことを認めないなら、資本家階級が不平等や人間の欲求、法律を利用して大衆に惨めで不健康な生活を強いる暴力と力を見抜くことはできないだろう。あなたの目にうつるのは、平和的に事業を展開しているのに、正当な理由もなく邪悪な左翼から嫌われているように見える成功した実業家の姿だけだろう。このような実業家が富を得るために様々な良からぬ手筈を駆使している姿は、見えていないだろう。
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事態はますます予測不可能になっている。シリアで何が起こるか、あるいはそれ以前の10月7日に何が起こるかは誰も予想していなかった。かつてはイラクでもどこでも、米帝国が戦争に向かっている時には戦靴の声が聞こえた後に、戦争が始まったものだった。そんなふうにはるか以前から予測できるような展開は、今ではますます起こりにくくなっている。
今は、こうした爆発的な急激な展開に不意打ちを食らうことが定期的に起こっている。何か醜いことが起こりそうだ、と何ヶ月も警告していたことが、別の場所でまったく予想外に起こっているのだ。私はロシアとの戦争が近づいていると何年も前から警告していたのだが、まさかそれがウクライナで実際に起こるとは。私自身の偏見と盲点に愕然とさせられた。
今は、良いことであれ悪いことであれ、私は予測せずに観察する術を学びつつある。明日何が起こるかは誰にもわからない。レーニンの名言に「何も起こらない数十年もあれば、数十年が起こる数週間もある」があるが、今ではその言葉さえ控えめだと言える。数十年間何も起こらないことはもはやありえない。数年間で何も起こらないことすらない。物事はますます流動的で予測不可能になっている。どんなことも起こり得るのだ。
良い知らせは、完全に予測不可能な世界では絶望は非合理的だということだ。何でも起こり得るということは、何がおこってもおかしくない、ということだ。戦争の終結。西側帝国主義の終焉。資本主義の終焉。健全で調和のとれた世界の誕生。何が起こってもおかしくないのだ。ますます予測不可能なこの海の中では、いかなる可能性も排除する合理的な根拠は存在しない。
これまでの通説が大きく崩壊するときが私たちに迫っている。生きていくことが大変な時代に突入したのだ。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月14日)「米国によるシリア政権の転覆は偽善の極致!「アフガニスタンのタリバンは『悪』であり、シリアのアルカイダは『善』とは!!」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2862.html
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Taliban in Afghanistan Bad, Al-Qaeda in Syria good
筆者:ケイトリン・ジョンストーン(Caitlin JOHNSTONE)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年12月10日
https://strategic-culture.su/news/2024/12/10/taliban-in-afghanistan-bad-al-qaeda-in-syria-good/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授