【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月17日):やはりアルカイダを育てたのは米国で、イスラエルは裏で支援

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

アルカイダ系組織ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)が先頭に立つシリア反政府勢力がアレッポを制圧した後、領土拡大を狙って攻勢を強める中、米国政府はこの攻撃から距離を置いている。イドリブに拠点を置くいわゆる「穏健派反政府勢力」の武器化を長年支援してきたことを考えると、これは注目すべき転換だ。

バラク・オバマ大統領の政権下で、米国政府はバッシャール・アル・アサド政権を打倒するための秘密作戦に何十億ドルも密かに注ぎ込んできた。CIAによるアサド打倒作戦のティンバー・シカモア計画はCIAの最も高額な事業の一つで、最盛期には訓練を受けたシリア人戦闘員1人当たり10万ドルが注ぎ込まれていた。彼らの多くは最終的にアルカイダ系勢力の旗印の下で戦うことになった。

米国政府が共謀していた全容は、漏洩した電報で明らかにされた。2012年に当時のジェイク・サリバン副大統領補佐官が当時のヒラリー・クリントン国務大臣に「アルカイダはシリアでは我が国の味方である」という驚くべき告白をした内容だった。国家安全保障会議のブレット・マクガーク中東調整官は後にイドリブを「9.11以来最大のアルカイダの避難場所」と呼んだ。

2020年の下院外交委員会小委員会公聴会で、後にバイデン政権下で中東担当国防次官補(DASD)となるダナ・ストルール氏は、「ロシアとイランはシリアを安定させたり再建したりする資源を持っていない」と主張した。彼女は、すでに混乱しているシリア経済は「悪化の一途をたどって」おり、レバノンの経済危機と米国主導の制裁体制によって状況は悪化している、と主張していた。

ストルール氏はさらに、「今が好機だ」と述べ、積極的に取り組むよう提唱した。同氏は米国が「次の暴力の発生を政治展開の再活性化につなげる」ための計画を始めることを提案した。さらに同氏は、この戦略には米国とトルコの和解、政治問題、制裁、復興支援の拒否に関する断固たる姿勢の維持が含まれるべきだ、と強調した。

米国側の目的は揺るぎない。それは、シリア領土からイランを追い出し、シリア政府にレバノンのヒズボラとの同盟を放棄させることだ。この野望は単なる戦略ではなく、イスラエルと米国の利益に有利になるように地域の力の均衡を作り変えることを見通したものだった。

HTSがアレッポを占領した後、アラブ首長国連邦と米国は、この機会をとらえ、しっかりと将来を見通した上での新たな中東構想を推進しようとし、シリア国内の戦闘の核心に触れるような提案をおこなった。その提案とは、シリアにとって長年の同盟国であるイランとの関係を断絶するのと引き換えに制裁を解除する、という提案だ

今年初め、米国・シリア連合と名乗る政権転覆を支持する圧力団体連合は、毎年恒例の宣伝活動の日、ワシントンで米国当局者らと会合を開き、アルカイダ系組織への資金援助を訴えた。ニュースサイト「グレイゾーン」が発表した記事によると、リック・スコット共和党フロリダ州上院議員の首席補佐官はシリア反体制派の支持者らに対し、「イスラエルはあなたたちに政権を握ってほしいと思っている」と安心させたという。

ワシントン近東政策研究所(WINEP)などの親イスラエル系政策研究所の分析によると、「アラブ連盟」はシリア支援に姿勢を変えたという。しかし、この支援には計算された目的がある。それは、米国とイスラエル双方の目的と完全に一致する反イラン政策を推進することだ。

全体的な目標は明確だ。シリアで交渉による解決を実現し、バッシャール・アル・アサド大統領にイランとの関係を断ち切らせ、ヒズボラへの武器の流入を止めさせることだ。

ここ数年間、シリアでの戦争が膠着状態に陥るなか、西側諸国の外交政策当局は、ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)の印象を一新する取り組みに乗り出した。この取り組みの中心となったのは、HTSの指導者、アブ・モハメド・アル・ジュラーニの印象を変えることだった。軍服を着ていることで知られるアル・ジュラーニは、米国のテレビに劇的に異なる様相で再登場した。スーツを着て、洗練された正式な指導者として登場したのだ。

ワシントンに拠点を置く政策研究所、戦略国際問題研究所はHTSの分析で 次のようにHTSを分析している。

「HTSは、シリア国民に受け入れられるような措置や国際的なイスラム主義組織に対する対テロ作戦、イドリブ北部の統治構造構築の試みを明確に宣伝している。この持続的な宣伝行為と、HTSが支配する地域以外で軍事作戦がおこなわれていない点は、同組織が国際的な援助や資源、そして最終的には承認を得るために、シリアで比較的穏健な統治勢力としての地位を維持し続けようとしていることを示している。」

トランプ政権下で元米国大使およびシリア関与担当特別代表を務めたジェームズ・ジェフリー氏は、ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)をイドリブにおける米国の戦略にとって「資産」と評した。

ハヤト・タハリール・アル・シャム氏率いるHTSの印象を変えようとする行為は、拷問や人権侵害の非難が報告されているにもかかわらず前進しており、同組織はその大義に共感するイドリブのジャーナリストさえも標的にしている。2020年の国連報告書はこのような状況にさらに暗い影を落とし、HTSを含むシリアのあらゆる主要派閥が、その勢力を強化するために子ども兵士に依存している点を指摘している。

米国はシリアにおける最近の緊張激化への直接的な関与から公式には距離を置いているが、現実はもっと複雑である。公式にテロ組織に指定されている組織を公然と支援することには、米国政府が受けたくない恥辱を被る危険がある。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月17日)「やはりアルカイダを育てたのは米国で、イスラエルは裏で支援」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2864.html
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒How the U.S. and Israel Quietly Revived Al-Qaeda Allies in Syria’s Idlib Offensive
筆者:ロバート・インラケシュ(Robert INLAKESH)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年12月5日
https://strategic-culture.su/news/2024/12/05/how-us-and-israel-quietly-revived-al-qaeda-allies-in-syria-idlib-offensive/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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