☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月16日):米国の国家テロ政策が13年間も続いた後のシリア…何が待ち受けているのか?
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
© 写真:パブリックドメイン
シリアの破壊は、米国主導の帝国主義的西洋による新たな広範な犯罪である。
13日足らずで、米国が支援するジハーディスト(聖戦士)武装集団の連合がシリアを占領した。11月27日に始まったこの攻勢は、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が急遽退陣し、ロシアに亡命するという結末を迎えた。アサド大統領と大統領夫人は12月9日までにモスクワ入りしたことが確認された。
アサド大統領は、シリアの平和を維持するために決断を下したと述べた。ロシアは、同大統領の決断には関与していないと発表した。
アメリカやヨーロッパの政治家たちがほくそ笑んでいるのは、シリアの政権交代をめざして西側諸国が長年投資してきた成果の反映である。その投資がようやく実を結んだようだ。
アサドとその同盟国であるロシアやイランが、シリアを見捨てるような裏切りや「取引」があったと推測するのは見当違いである。確かに、シリア軍と当局はあっという間に降伏した。しかし、ロシアやイランが同盟国のシリアを見捨てて反政府勢力のなすがままに任せるなどと、裏でより悪辣な動きがあるのではないかと推測するのは早計である。
シリアは、長年にわたる欧米諸国の侵略と消耗により、単に疲弊し、消耗しただけである。同盟国を救うためにロシアやイランができることはほとんどない。
シリアの最終的な崩壊は、13日間の電撃作戦の後に起こったわけではない。米国と欧州のNATO同盟国による13年間にわたる絶え間ない国家テロの後に起こったのだ。米国が支援する代理テロの初期段階(2011年から2020年)は、ロシア、イラン、ヒズボラの介入によって阻止された。しかし、欧米の代理人は完全に敗北したわけではなかった。振り返ってみると、これは戦略上の致命的な誤りであったと言えるかもしれない。
2020年以降の代理戦争の継続は、米国と欧州連合(EU)によるシリアに対する経済・貿易制裁の実施に依存していた。その他の手段による戦争では、米国とトルコの軍隊がシリアの北、東、南の領土を不法占領し、シリアの石油と小麦の輸出を盗むことを可能にした。トランプ前大統領は「シリアの石油を盗む」ことを公然と自慢していた。
つまり、オバマ政権がシリアを政権交代の標的にした2011年から、週末のダマスカス陥落まで、同国は13年間にわたる消耗戦に耐えてきたのだ。2020年頃からロシアとイランの介入により相対的な平和が訪れてからも、シリア人は食料、医薬品、燃料の不足に苦しんできた。人口の半分以上が家を追われた。シリア経済は崩壊状態にあった。通貨は無価値となり、インフレは刻々と進行していた。11月27日、欧米が支援する反体制派がイドリブ北部の飛び領土から攻勢を開始したとき、抵抗できるシリア国家の組織はもはや何も残っていなかった。アレッポ、ハマ、ホムス、そして首都はドミノ倒しのように陥落した。
反体制派の主要派閥は、モハメド・アル・ジャウラーニーが率いる「ハヤト・タフリール・アル・シャーム(HTS)」である。HTSは、米国政府が公式に非合法組織と指定し、国際的に禁止されているテロ組織である。その指導者には、米国務省から1000万ドルの懸賞金がかけられている。
しかし、米国の代理戦争という詐欺行為において、HTSとその指導者はワシントンの手先である。2011年以降、米国と欧州のNATO同盟国は、リビア、トルコ、そして世界中から武器と戦闘員を密輸するルートを使い、アルカイダ、ISIS、ヌスラ戦線(後にHTS)をシリアに送り込み、恐怖を振りまいてきた。欧米メディアは、皮肉にもテロリストの代理勢力を「穏健派反政府勢力」と呼び、茶番劇を宣伝した。シリア南部のアル・タンフにある国防総省が運営する軍事基地は、「穏健派反政府勢力」の訓練用だと言われているが、実際には、その穏健派とは武装したジハーディストの過激派であった。
シリアの首都ダマスカスへの最終的な攻撃の直前、先週、HTSの司令官であるアル=ジャウラーニーは、米国のニュース専門チャンネルであるCNNのゴールデンタイムのインタビュー番組に出演し、指名手配中のテロリストではなく、政治家のような指導者としてのイメージを回復しようとした。アル=ジャウラーニーは、彼と彼の組織がISISやアルカイダと関係を持っていた時代はとっくに終わったと主張している。CNNやその他の欧米メディアは、この主張をもっともらしく見せるために全力を尽くしている。ああ、なんとハッピーエンドなことか!
シリアが、米国が支援するシリアでの代理戦争の初期段階のような殺戮の混乱に陥るかどうかは、現段階では不明である。初期には、宗派間の流血、報復、そして「背教者や異教徒」として処刑されたシーア派、アラウィ派、キリスト教徒たちへの殺戮があった。
不吉にも、米国とイスラエルは直ちにシリアへの空爆を開始し、皮肉にも「事態を安定化させようとしている」と主張した。
シリアで急速に展開する出来事は、世界を驚愕させた。わずか2週間前、アサドがモスクワに亡命する結末を迎えるなど誰が予想できただろうか?米国、イスラエル、その他の西側諸国の指導者たちの反応は、自分たちが大きな幸運を手にしたと思っているが、それは信じられないことだ。
ロシアとイランは、まさに不意を突かれたようだ。ロシアの玄関口であるウクライナでNATOが代理戦争を仕掛けてきたことで、ロシアの軍事資源が損害を受けていることは間違いない。イランは自国をイスラエルの侵略から守ることで手一杯だ。
アメリカのジョー・バイデン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、シリアにおける新たな「機会」について興奮気味に語った。両者とも、テロリストの反乱の勝利に一役買ったと主張した。ネタニヤフ首相は、シリアの同盟国であるヒズボラとイランを弱体化させるために、ガザ地区とレバノンでジェノサイド戦争をおこなったことを自分の手柄だと主張していた。
バイデン大統領はさらに恥知らずにも、米国の国家テロがシリアを破壊し、テロリストの代理勢力によるシリア占領への道筋を作った経緯を詳しく説明した。同氏は次のように述べた。「我々の取り組みは、同盟国への支援、制裁、外交(原文のまま)、そして的を絞った軍事力の結合により、中東における勢力バランスを変化させた」と。
ワシントンの二枚舌では、「同盟国への支援、制裁、的を絞った軍事力」は、国家にトラウマ(心的外傷)を与えるためのテロリスト支援、経済戦争による国家の弱体化、最終的な服従を強いるための違法な侵略と解釈される。
シリアの破壊は、米国主導の帝国主義的西洋による新たな大規模な犯罪である。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月16日)「米国の国家テロ政策が13年間も続いた後のシリア…何が待ち受けているのか?」
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また英文原稿はこちらです⇒The destruction of Syria is another vast crime by the U.S.-led imperialist West.
筆者:フィニアン・カニンガム (Finian CUNNINGHAM)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年12月10日:
https://strategic-culture.su/news/2024/12/10/syria-after-13-years-of-us-state-terrorism-what-do-you-expect/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授