☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月12日):フョードル・ルキャノフ:ジョージアの第2弾オレンジ革命。西側諸国にはまだ「カラー革命」を起こせる力は残っているのだろうか?
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
2024年11月29日、ジョージアのトビリシでジョージア、ウクライナ、EUの旗を振っている抗議者。© Davit Kachkachishvili/Anadolu via Getty Images
私たちが定義する「カラー革命」とは、外部勢力からの政治的、外交的、および財政的支援に支えられた、公式選挙結果の拒否をきっかけに起こる大衆蜂起のことである。この視点が初めて根付いたのは、2000年のセルビアでのスロボダン・ミロシェビッチの打倒劇だった。そしてこのことば自体が生まれたのは、その3年後のジョージアであり、ミハイル・サアカシビリ率いる抗議者らがバラを革命のシンボルとして採用したときのことだった。また同じ3年後のウクライナの2004年のオレンジ革命では、シンボルとされる色がオレンジに変わった。
10年前、カラー革命は頂点を迎えたように見えた。特にその様子があらわになったのは、ウクライナのユーロマイダン広場での流血事件であり、その後ウクライナは長引く一連の武力紛争に突入することになった。この事件と比べれば、これ以前におこっていた蜂起は比較的おとなしく見えるほど激しいカラー革命だった。その後、この現象は衰退したように見えたが、2018年にアルメニアで再び現れた。ただし、この動きは外部からの影響というよりはむしろ、アルメニア国内の変化を受けたものだった。いっぽう、ベラルーシでの2020年の革命は当局の厳しい抵抗とロシア側からの明確な警告に直面したせいで、カラー革命は超えてはいけない線である、と捉えられていた。
しかし、ジョージアの現在の状況は、親欧米派の野党による大規模な抗議活動があり、過去とは劇的に異なるものの、新たな大規模抗議活動が発生する可能性を示唆している。与党の「ジョージアの夢」党は、政治的な西側諸国、特に米国やEUとの激しい対立に陥っている。ジョージア政府が西側の友好諸国に対してこれほど断固とした態度を取るのは驚きだが、他に選択肢はない。歴史が示していることだが、米国主導のこの連合は、自国の利益がかかっている場合、中途半端な対応を許さない。
「ジョージアの夢」党が戦略を推進するために持っている重要な3つの計算
「ジョージアの夢」党の創設者ビジナ・イヴァニシヴィリ氏と彼の政党は、3つの主要な計算に基づいて戦略を立てている。
・その1。西欧諸国と米国はジョージアが位置する南コーカサス地方よりもはるかに重要な問題に気をとられており、過去の革命のときと同程度の政治的、物質的資源をジョージアに投入する可能性は低いだろう。現在の国際情勢では、ジョージアの問題は優先事項になっていない、と見ていいだろう。
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・その2。当時とは状況が変わっている。2003年にバラ革命が勃発したとき、ジョージアは悲惨な状況にあった。当時のエドゥアルド・シェワルナゼ大統領率いる政府は極めて不人気で、国は混乱していた。現在、ジョージアは比較的安定し、経済成長を享受している。課題は依然として残っているものの、真の繁栄を取るか、西側主導の変化というつかの間の不確実な約束を取るかの選択において、世論は前者を支持する方向に傾くだろう。
・その3、ジョージアで今政権交代が起きれば、ほぼ間違いなく混乱を招くだろう。この地域の国々の経験から、妥協や外部からの圧力に屈することは政権の崩壊につながることが分かっている。イヴァニシビリ氏による戦略は明確だ。すなわち、西側の影響への抵抗、である。西側の影響に屈することは、他国にとって悲惨な結果をもたらすことが証明されているからだ。
現状における危険性と見通される展開
しかし、ジョージア当局のこの計算は間違っている可能性もある。ジョージアで起きている出来事の重要性は、今や国境外にも拡がっている。ウクライナをめぐる緊張の高まりや米国で政権交代が起こったことを考えると、特にそうだ。西側諸国には、親ロシア派とみなす勢力を弱体化させたいという願望があるため、ジョージアは象徴的な戦場となっており、ジョージアが反抗的とみなされる行為を取れば、その対策は厳しくなる。「ジョージアの夢」が決して親ロシア派ではなく、単に中立的な立場を維持しようとしているという事実は、状況を変えるものではない。
ジョージア当局がEU加盟交渉を凍結するという決定は大胆な動きであり、西側諸国の要求に挑む意志を示すものだ。EUは加盟申請国に影響を与える能力を有していることを誇りとしており、今回ジョージアが見せた躊躇のようないかなる挫折も政策の失敗とみなしている。西側の顧客とみなされる国々は今や宣誓しなければならない。そして西側と共通の道を歩むことを望まないことは反逆罪とみなされる。
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この状況は、政府の姿勢に対する国民の支持の程度について疑問を投げかけている。ジョージア国民は、欧州統合の問題で長い間分裂している。現政府の立場は、特に西側諸国の影響が逆効果であると考える一部の人々の共感を呼んでいるが、いっぽうでEU加盟へのより明確な道筋を求める人々もいる。
この国の今後は?
野党にとって、この混乱は国民の不満を利用し、抗議運動を巻き起こす好機である。与党と野党双方にとっての重要な課題は、暴力の可能性を抑制することにある。カラー革命は常に、緊張を高め、政府を独裁主義的だと決めつける力に依存してきた。いっぽう、当局は、挑発を避けつつ外部からの圧力に断固として対抗するという微妙な均衡を保たなければならない。
「ヨーロッパの一員となる未来」はジョージア国民の間で人気のある構想であり、「ジョージアの夢」党支持者の大多数もこの願望を共有している。同党自体、ヨーロッパ統合の目標に固く参画しているが、そこには独自の条件がある。野党は、「政府はヨーロッパの一員になる道を阻んで」おり、そうなればジョージア政府がロシアの影響圏に戻ることになる、と主張している。唯一の問題は、この主張がどれだけ粘り強く、情熱的に繰り返されるかということにある。
ジョージアの国家主権の将来
かつて「民主主義への願望の象徴」とされていたカラー革命は、「地政学的策略の鈍器」として利用される危険な道具と化している。これらの外部勢力が依然としてこの地域の政府を効果的に不安定化させることができるかどうかは、まだ分からない。
(様々な形をとっている)民主主義の推進に意味があったのは、社会政治的進歩という西洋の考えが唯一の基本的な選択肢とみなされているという条件のもとでのことだった。現在、世界秩序が大きく変化する中、西洋の影響力が無双状態だった時代は終わり、新しい地政学的体制の中での地位をめぐる激しい闘争がそれに取って代わった。「カラー革命」という言葉は、「民衆による民主的蜂起の象徴」から、「西洋が影響力を行使するために使用する政治工作の道具」へと進化した。今、問題は、これらのカラー革命がジョージアのような国を不安定にする力をまだ持っているのか、それとも対象の国家がこれらの圧力に抵抗し、新しい世界秩序の中で主権を確保できるのか、ということにある。
この記事の初出はProfile紙。RT編集部により翻訳・編集。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月12日)「米フョードル・ルキャノフ:ジョージアの第2弾オレンジ革命。西側諸国にはまだ「カラー革命」を起こせる力は残っているのだろうか?」
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また英文原稿はこちらです⇒Fyodor Lukyanov: Can the West still engineer a ‘color revolution’? We’re about to find out
ジョージア(旧称グルジア)は一時的な騒乱に見舞われているが、今回は2003年時の騒乱とは異なり、米国とEUは、今回はより困難な状況に直面するかもしれない。
筆者:ヒョードル・ルキアノフ(Fyodor Lukyanov)
ロシア・グローバル情勢編集長、外交防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究部長
出典:RT 2024年12月2日
https://www.rt.com/news/608595-fyodor-lukyanov-can-west-still/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授