☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月20日):西側報道機関による「恥知らずなシリアの惨状報道」
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
シリアと中東地域の人々は、さらなる混乱や混沌、紛争、苦しみに直面している。
バッシャール・アル・アサド大統領率いるシリア政権が劇的に崩壊してから1週間が経過したが、このアラブ諸国と周辺地域が政治的にどのような展開を迎えるのか正確な予測をするのは時期尚早だ。
しかし、すでにこの国で血なまぐさい紛争と蛮行が急増しているという暗い兆候がある。予想どおり、西側諸国は新たな壮大な恐怖を生み出した罪を隠蔽しようとしており、その報道機関は恥も外聞もなくシリアの新支配者たちを褒めちぎり、彼らがテロリスト集団であるという現実を否定している。
シリアは2011年のリビアと似た運命に直面している。この北アフリカの国は、冷笑的な「解放」という名目でおこなわれたNATOによる政権転覆攻撃によって殺戮の場と化した。NATOに支援された聖戦主義者らはリビアの指導者ムアマル・カダフィを残忍に殺害し、かつて石油資源に恵まれていたこの国は破綻国家として崩壊し、それ以来、軍閥に引き裂かれて機能する国家政府もなくなった。
シリアの元大統領アサドはモスクワに逃亡し、同盟国ロシアから亡命を認められた。その違いを別にすれば、シリアの将来はリビアと不吉なほど似ている。残酷なことに、それはむしろふさわしい。先週、このSCFの社説で論じたたように、2011年のリビア転覆は、米国とその西側同盟諸国がシリアに対する政権転覆戦争を仕掛けるために利用され、その戦争も2011年に始まった。
13年経った今、テロ集団「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)」によるダマスカス占領は、残忍な報復や内紛による軍閥主義、宗派間の憎悪を引き起こしている。米国とその西側同盟国は、以前のリビアの場合と同様に、シリアに降りかかった巨大な帝国主義的犯罪を懸命に隠蔽している。
米国とその傘下にある欧州諸国は、現実を好き勝手に否定し、シリアの「新たな始まり」を喧伝している。これは、西側諸国の凶悪な犯罪行為を世界に受け入れさせることを狙った見せかけの楽観主義である。
西側諸国の楽観論が溢れる一方で、西側諸国の支援を受けるイスラエル政権は、シリアにおける混乱をさらなる領土併合の好機と捉え、直ちに北の隣国に対する電撃戦を開始した。イスラエル軍はゴラン高原の不法占領を拡大し、シリア全土で大規模な爆撃作戦を実施した。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は今週、この地域を急いで視察したが、これは間違いなく、ダマスカスの政権転覆を目指して長年努力してきた米国政府とその同盟国トルコ、イスラエルの間でシリア領土と資源が秩序正しく分割されることを確実にするためだろう。
米国政府はシリアにおいて「宗教的少数派と女性の権利を尊重する」宗派にとらわれない政府の樹立を強く求めているが、これは広報上の恥ずべき美辞麗句だが、現地の現実は別の様相を呈している。
HTSとアルカイダ系の他の関連組織が支援するワッハーブ派イスラム主義の黒旗がダマスカスなどの都市で掲げられた。シリアのシーア派とアラウィー派のイスラム教徒、そしてキリスト教徒の間では、2011年以降の米国主導の代理戦争で異教徒や背教者の斬首などの残虐行為が見られたように、恐怖政治にさらされるのではないか、という明白な恐れがある。
信頼できる動画には、 HTS支持者が非武装の捕虜を処刑し、犠牲者の宗教的所属と思われるものについて卑猥な言葉を叫んでいる様子が映っている。死体がトラックに縛られ、路上を引きずられるという、ぞっとするような野蛮な光景もあった。虐殺された息子の遺体を抱く母親たちは、狂気じみた血への渇望に駆られた群衆に押し合いへし合いされ、虐待されている。
信じられないほどの心理作戦の波の中で、西側諸国の報道機関はシリアでの出来事を「アサド政権の暴政からの解放」のようなものとしてごまかして報じてきた。
ダマスカスとアレッポの街頭で群衆が祝賀感に沸き、バッシャール・アル・アサドとその父ハフェズの象徴を破壊したという報道が複数ある。しかし、西側報道機関は、蛮行や宗派間の殺人などの悪行を示唆する可能性のある報道を省略、または軽視している。
もし喧伝の賞があったら、英国国営放送局BBC が「シリアの聖戦指導者から反政府政治家へ。アブ・モハメド・アル・ジャウラーニーはいかにして自己改革をおこなったか」という見出しの記事で受賞していたかもしれない。
真実は、アル・ジャウラーニーを「再発明」したのは、BBCやCNNのような西側報道機関だ。
アルカイダやイスラム国、アルヌスラ戦線、そしてHTSの指揮官として大量殺戮を実行したアル・ジャウラーニーの数年間は突然記憶の穴に押しやられ、彼は今やシリアを明るい未来へと導く政治家として紹介されている。
宗教的少数派と多元主義を尊重するという後から取ってつけたような彼の発言は、西側報道機関によって甘ったるい騙されやすさで報道されている。米国政府と他の西側諸国政府は、HTSをテロリスト集団の一覧から外し、和解と寛容に関するアル・ジャウラーニーの美辞麗句を何とかもっともらしいものとして受け入れることで、シリアの新政権を承認する方向に動いている。
もちろん、米国政府はシリアでの明らかな成功に大喜びしている。シリア政府は、アラブ国家が独立しすぎていると考えられていた70年以上前の米国のアイゼンハワー政権時代から、長らく政権転覆の標的となってきた。
最近では、リチャード・ブラック元米国上院議員が2016年のこの記事で説明しているように、2007年に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領の政権がバッシャール・アル・アサドの退陣を決定した際、シリアは米国政府からの政権交代の新たな標的となったのだ。その違法な結果を達成するために、米国とその地域の同盟諸国は殺人的な代理人を派遣したが、その1つがシリア政府の新支配者、ハヤト・タハリール・アル・シャームだった。
秘密の代理戦争はオバマやトランプ、バイデン政権下でも続いた。同盟国シリアを守るために介入したロシアとイランは政権転覆の目的を阻止することに成功したが、今週のこのSCFの論説で指摘されているように、最終的にはさまざまな理由で成功しなかった。
10年以上にわたり、西側報道機関は、シリアに対する米国主導の帝国主義的侵略を隠蔽するため、シリアについて組織的かつ露骨に嘘をついてきた。これらの報道機関はアサドの専制政治について嘘をついてきたが、実際にはシリア人は宗教的、社会的自由を享受していた。シーモア・ハーシュが報じたように、西側が支援するジハード主義テロリストが偽旗挑発に化学兵器を使用したのに、彼らはアサドが化学兵器を使用した、と嘘をついた。
アサド政権の打倒は、西側帝国主義の計画にとって大きな勝利であり、ロシアとイランにとっては打撃であるようだ。米国政府とその同盟諸国は、勝利の戦利品を手にした祝賀感に浸っている。
しかし、血なまぐさい崩壊の兆候は、嘘をつく西側報道機関にとっても隠し切れない。短期的には、西側諸国とその喧伝報道機関は、シリアの新支配者たちを、どうにかして改心した善良な人物として描こうとしている。これは、イスラエルが領土を併合し、米国とトルコが支援する勢力が拠点をめぐって争いを始めようとしている時期におこっていることだ。
シリアは計り知れない混乱に陥り始めているのに、いつものオーウェル風の言い回しで、西側諸国の犯人たちはこの悲惨な結末をシリアの解放として売り込もうとしている。これは帝国主義による政権交代作戦の後にいつも起こる、ごまかしの典型だ。決して良い結末にはならない。
シリアとその地域の人々は、さらなる混乱や混沌、紛争、苦難に直面している。犯罪的な西側帝国主義の枢軸は勢いづいているが、嘘は決して未来への健全な基盤にはならない。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月17日)「西側報道機関による「恥知らずなシリアの惨状報道」
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また英文原稿はこちらです⇒West shamelessly whitewashes barbarism in Syria
出典:Stategic Culture Foundation 2024年12月13日
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授