【櫻井ジャーナル】2024.12.23/櫻井春彦 : 露大統領は核戦争を回避、米英に屈服するという妄想にかけている西側支配層
国際政治ジョー・バイデン大統領の健康状態は不明だが、健康だとしても任期は残り少ない。その人物を中心とする政権はここにきて好戦的な姿勢に拍車をかけている。核戦争に向かって驀進しているように見えるが、ロシアのウラジミル・プーチン大統領が最後には核戦争を回避する、つまり屈服するという想定、あるいは核戦争でアメリカはロシアに勝ているという妄想に賭けているだろう。
プーチン大統領は12月19日、モスクワで年末恒例の長時間にわたる記者会見と電話インタビューを実施した。
その中で大統領はシリアのバシャール・アル・アサド政権が倒されたことで利益を受ける国としてイスラエルを挙げ、ウクライナの問題ではアメリカが2014年2月にネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した際に傍観するのではなく、特別軍事作戦を含む反クーデター派への支援を始めるべきだったとしている。また、そうしたアメリカ/NATOの軍事侵攻に対抗するための準備ができていなかったことも反省していた。2022年2月の段階でも準備ができていたとは言い難い。
シリア情勢については様々なことが言われている。西側による経済封鎖(兵糧攻め)でシリアは疲弊、兵士も十分な食糧はない状態になっていた。
そうした中、バシャール・アル・アサド大統領はアメリカとの関係を正常化できるとするサウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)の甘言に乗り、ロシアやイランが申し出た物資援助、軍事訓練、アドバイス、あるいはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドア大統領との話し合いを拒否もしたとする情報がある。結局、ロシアやイランは西側の甘言に乗ったアサド政権を助けることはできないと判断したというのだ。
こうした動きはシリア政府内だけの問題ではなく、中東全域で始まった変動の結果だと見る人もいる。その始まりは2020年1月3日。イスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われているコッズ軍を指揮してきたガーセム・ソレイマーニーがバグダッド国際空港でアメリカ軍に暗殺されたのだ。イスラエルが協力したと言われている。その時、ソレイマーニーは「抵抗の枢軸」戦略を考え出した人物で、殺された時、サウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていたという。
今年5月19日にはエブラヒム・ライシ大統領やホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らを載せたアメリカ製のベル212ヘリコプターがアゼルバイジャンとイランの国境近くで墜落し、全員が死亡した。大統領らはダムの落成式に参加、戻る途中で、濃い霧で視界が悪かったとされているのだが、同行していたロシア製ヘリコプター2機は問題なく帰還している。7月28日から大統領を務めているマスード・ペゼシュキヤーンは親欧米派だ。
今年9月27日にはヒズボラの指導者、ハッサン・ナスララがベイルート南部にあったヒズボラの本部で会議中、イスラエル軍の空爆で殺されたが、そのタイミングでナスララがそこにいることを知っていた人物は多くない。疑惑の目を向けられているのはアサドだ。
イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師はシリアのバシャール・アル・アサド政権の崩壊について、アメリカとイスラエルの司令室で計画されたことに疑いの余地はないと12月11日に語っている。それだけでなく、アメリカとイスラエルの計画にロシアも合意したのではないかと考える人もいる。アサド体制が崩壊する直前、トルコに支援されたハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)の軍事侵攻をロシア軍が阻止しようとしていないからだ。
本ブログでも繰り返し書いてきたが、ナイル川からユーフラテス川までを支配するという「大イスラエル構想」をシオニストは放棄していない。シリアだけでなくレバノン、ヨルダン、イラク、サウジアラビア、エジプトを含む地域を「イスラエル」にするということだが、それは中東のエネルギー資源をシオニストが支配することも意味する。アサド政権崩壊後にイスラエル軍はシリアを激しく空爆、地上部隊も入れた。撤退するつもりはないだろう。
シリアへ攻め込んだHTSはウクライナから支援を受けていたと伝えられている。ワシントン・ポスト紙によると、ウクライナの情報機関GURは4、5週間前、イドリブにあるHTSにドローン約150機を供与、その本部に熟練したドローン操縦士約20人を派遣したという。
ウクライナのネオ・ナチを率いている幹部のひとり、ドミトロ・ヤロシュはCIAやMI6が組織したNATOの秘密部隊ネットワークに2007年から参加、アル・カイダ系武装集団と繋がっていると言われている。
アメリカとイギリスにイスラエルを加えた3カ国の情報機関は緊密な関係にある。ウクライナをクーデターで乗っ取ったのはアメリカだが、スコット・リッターの調査によると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はMI6のエージェントだ。彼は情報機関の工作、演出によって大統領に就任、2020年10月にイギリスを公式訪問した際にはMI6のリチャード・ムーア長官と会談している。ゼレンスキーは「人民の奉仕者」というドラマで人気を博したのだが、今もその役を演じていると言える。
日本にはアングロ・サクソン信奉者が少なくない。そうした人びとはゼレンスキー主演のドラマや悪役アサドを倒す芝居を好んでいるようだが、フィクションは所詮フィクションだ。
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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「露大統領は核戦争を回避、米英に屈服するという妄想にかけている西側支配層」(2024.12.22XML)からの転載であることをお断りします。
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