【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.12.24/櫻井春彦 : ウクライナからの軍事支援を受けたウイグルの戦闘員は次に狙うのは中国だと恫喝

櫻井春彦

 トルコに支援されたハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)がシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒した際、ウクライナの情報機関GURが支援していたと伝えられている。

 ウクライナから派遣された要員はドローン、アメリカの衛星ナビゲーション、電子戦システムを提供し、シリア内の工作員やTIP(トルキスタン・イスラム党)の協力者にそれらの使い方を教えたという。シリアのイドリブには現在2万人のウイグル人がいる。​ワシントン・ポスト紙によると、GURはHTSにドローン約150機を供与、その本部に熟練したドローン操縦士約20人を派遣したという​。

 中国政府によると、TIPの実態は新疆ウイグル自治区で破壊活動を続けてきた東トルキスタン・イスラム運動と同じ。そうした軍事的な支援の代償としてHTSは兵士不足のウクライナへ戦闘員を派遣したとも言われている。ウイグルの反中国戦闘員はシリアやウクライナでアメリカのために戦ってきたというわけだ。

 新疆ウイグル自治区は「一帯一路」のうち陸のシルクロードで重要な位置にあり、約1000万人のイスラム教徒が住んでいる。​その自治区で約100万人のウイグル人が再教育キャンプへ送り込まれ、約200万人が再教育プログラムに参加させられていると「人種差別削減委員会」のゲイ・マクドーガルは2018年に発表しているが、その情報源はCHRD(中国人権防衛ネットワーク)で、CHRDの情報源は8名のウイグル人​。その信頼性には疑問がもたれていたが、偽情報だということは決定的だ。

 CHRDと並ぶウイグル問題の情報源とされているキリスト教系カルトの信者、エイドリアン・ゼンズは「神の導き」でコミュニズムと戦っているという人物。「コミュニズムの犠牲者記念基金」でシニア・フェローとして中国問題を研究していた。

 この基金を創設したのはレフ・ドブリアンスキーとヤロスラフ・ステツコ。ステツコはウクライナのネオ・ナチOUN-Bの幹部だった。第2次世界大戦中にはナチスと関係があり、1946年にはイギリスの情報機関MI6のエージェントになった。ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長にも就任している。

 ABNは1966年にAPACL(アジア人民反共連盟/後のアジア太平洋反共連盟)と合体、WACL(世界反共連盟)になった。WACLはその後、WLFD(自由民主主義世界連盟)に改名された。

 ゼンズが「100万人説」の根拠にしているのは亡命ウイグル人組織がトルコを拠点にして運営している「イステクラルTV」。そこに登場するETIM(東トルキスタン・イスラム運動)のメンバーが情報源だ。このETIMはアメリカ政府や国連の安全保障理事会もアル・カイダ系だとしていた。その政治フロントがTIP(トルキスタン・イスラム党)だ。

 かつてチェチェンへサラフィ主義者の戦闘員を入り込ませたように、アメリカは新疆ウイグル自治区でもそうしたジハード傭兵のネットワークを築きつつあると言われている。

 中国に敵対するウイグル人の中で重要な役割を果たしている団体のひとつがWUC(世界ウイグル会議)。この団体はアメリカのワシントンDCに本部がある。

 2006年11月から17年11月にかけて議長を務めていたのはラビア・カーディル。彼女が結婚したシディク・ハジ・ロウジは1996年にアメリカへ亡命、CIAのフロント企業である「ラジオ自由アジア」や「ボイス・オブ・アメリカ」で働いている。また、WUCはUNPO(代表なき国家民族機構)をブリュッセルで創設したエルキン・アルプテキンと連携してきた。(F. William Engdahl, “Whom The Gods Would Destroy,” mine.Books, 2016)

 アメリカをはじめとする西側諸国がウイグルに関する偽情報を発信すると同時にウイグル系武装集団を育成しているのは中国を内側から揺さぶるためだが、特に新疆ウイグル自治区を混乱させようとしている。この地区は中国とヨーロッパを結ぶ重要な場所。ロシアとヨーロッパとの関係を断ち切るためにウクライナを制圧しようとしたのと同じように、破壊しようとしている。

 新疆ウイグル自治区が安定し、東西交易が盛んになるとユーラシア大陸に平和が訪れてしまう。これはアングロ・サクソンの支配層にとって悪夢だ。​シリアのアサド政権が倒れた後、ウイグル系戦闘員は中国の習近平に対して次の目的地は中国だと恫喝​、トルコの支援を受けているにもかかわらず、​彼らはシオニズムをモデルとした体制を構築するとしている​。


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【​Sakurai’s Substack​】
※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「ウクライナからの軍事支援を受けたウイグルの戦闘員は次に狙うのは中国だと恫喝」(2024.12.24XML)からの転載であることをお断りします。
https://www.youtube.com/watch?v=51gVmLAGdXU&t=141s
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