【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月20日):シリア新政府は平和を語っているが、シリア国民のあいだで広がる惨状

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


© RT / RT

ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)と同盟を組む反政府組織による大規模攻撃の開始以来、HTSが率いるシリア救済政府は大々的な声明を次々に発表している。

一つ目は、ロシアとシリア当局へのロシアの支援に関するものだった。進撃する反政府勢力に対抗したのはロシア軍だけだったが、反政府勢力は、そのような行動は民間人の犠牲を招くだけだとして、テロリストの拠点への攻撃をやめるようロシア軍に求めた。シリア救済政府は、その行動はロシア当局ではなくシリア当局を狙ったものであり、過激派はロシア側と相互に利益のある協力関係を築くつもりだ、と述べた。

次に、救済政府は近隣諸国に関する声明を発表した。同政府はイラクに対し、国境を閉鎖し、親イラン団体が亡命中のバッシャール・アサド大統領を支援するためにシリアに入るのを阻止するよう求めた。さらに、反政府勢力は、すべての外国大使館や人道組織、ジャーナリストを保護すると宣言した。


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化学兵器とその製造施設および保管場所については別の声明が発表された。救済政府は、これらの兵器が決して使用されることはなく、無責任な者の手に渡ることもない、と報道機関に保証し、関連する国際機関に監視を要請した。

反政府勢力の最も注目すべき約束のいくつかは、クルド人やアラウィー派、キリスト教徒、シーア派を含むシリアの少数民族や宗教的少数派に対してなされたものだ。救済政府は、少数派はシリア国家の不可欠な一部であるため、その見解や信念を理由に虐殺や迫害を受けることはない、と宣言した。また、包摂性は将来のシリアにとって弱点ではなく強みである、とも述べた。

反政府勢力はクルド人に対し、殺人や奴隷化、ジハード主義者によるクルド人住民に対するその他の残虐行為など、ISISの野蛮な行為を非難した。また、武器を捨てて降伏したシリア兵士の安全を保証した。

救済政府とHTS指導者アブ・モハメド・アル・ジャウラーニー氏のこれらの発言は、イスラム過激主義と原理主義の著名な専門家から熱烈に歓迎された。彼らはアル・ジャウラーニー氏の専門家気質や透明性、穏健な見解、そして元々はジハード主義者であったが今はそこから距離を置いている、という事実を称賛した。


関連記事:Assad’s collapse was coming – everyone just looked away

西側報道機関はこの話を取り上げ、反政府勢力の指導者の本質を隠蔽しようと、ジャウラーニー氏との独占聞き取り取材を公開した。この聞き取り取材で、アル・ジャウラーニー氏はシリア救済政府の上記の発言を繰り返し、HTSとその同盟勢力の目標はシリアに限定されており、潜在的な敵国や中東地域の主要勢力を安心させるはずだ、と指摘した。HTS の目標はバッシャール・アサドを打倒し、次に「シリア建設」を開始することであり、反政府勢力はすでに最初の目標を達成している、と彼は主張した。

しかし、よくあることだが、この反政府勢力の声明は真実とは程遠いものだった。HTSテロリストと同盟を組む反政府勢力は、すでにアラブ・クルド人部隊、シリア軍兵士(自発的に投降した者も含む)、アラウィー派、シーア派の処刑を示す動画を数十本公開している。いくつかの動画映像では、同武装勢力が捕虜の喉を切り裂く様子が映っている。

さらに、反政府勢力が元兵士を追い詰める動画もある。彼らはこの行為を「巡回」や「掃討」と呼んでいる。ほとんどの場合、標的はその場で射殺される。さらに、反政府勢力はさまざまな少数民族や近隣諸国を脅迫する伝言動画を数十本公開している。中には、シリアの軍事政変によってイスラエルを破壊し、パレスチナ領土を解放する自由が彼らに与えられた、と主張する者もいる。

元指導者と一部の構成員が現在ロシア・ウクライナ紛争においてウクライナ側で戦っているジハード主義過激派組織「ジャイシュ・アル・ムハージルーン・ワル・アンサール」と「アジュナド・アル・カフカス」のロシア語話者テロリストらは、次の標的はロシアだと脅している。

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© RT / RT

ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)と同盟を組む反政府組織による大規模攻撃の開始以来、HTSが率いるシリア救済政府は大々的な声明を次々に発表している。

一つ目は、ロシアとシリア当局へのロシアの支援に関するものだった。進撃する反政府勢力に対抗したのはロシア軍だけだったが、反政府勢力は、そのような行動は民間人の犠牲を招くだけだとして、テロリストの拠点への攻撃をやめるようロシア軍に求めた。シリア救済政府は、その行動はロシア当局ではなくシリア当局を狙ったものであり、過激派はロシア側と相互に利益のある協力関係を築くつもりだ、と述べた。

次に、救済政府は近隣諸国に関する声明を発表した。同政府はイラクに対し、国境を閉鎖し、親イラン団体が亡命中のバッシャール・アサド大統領を支援するためにシリアに入るのを阻止するよう求めた。さらに、反政府勢力は、すべての外国大使館や人道組織、ジャーナリストを保護すると宣言した。

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化学兵器とその製造施設および保管場所については別の声明が発表された。救済政府は、これらの兵器が決して使用されることはなく、無責任な者の手に渡ることもない、と報道機関に保証し、関連する国際機関に監視を要請した。

反政府勢力の最も注目すべき約束のいくつかは、クルド人やアラウィー派、キリスト教徒、シーア派を含むシリアの少数民族や宗教的少数派に対してなされたものだ。救済政府は、少数派はシリア国家の不可欠な一部であるため、その見解や信念を理由に虐殺や迫害を受けることはない、と宣言した。また、包摂性は将来のシリアにとって弱点ではなく強みである、とも述べた。

反政府勢力はクルド人に対し、殺人や奴隷化、ジハード主義者によるクルド人住民に対するその他の残虐行為など、ISISの野蛮な行為を非難した。また、武器を捨てて降伏したシリア兵士の安全を保証した。

救済政府とHTS指導者アブ・モハメド・アル・ジャウラーニー氏のこれらの発言は、イスラム過激主義と原理主義の著名な専門家から熱烈に歓迎された。彼らはアル・ジャウラーニー氏の専門家気質や透明性、穏健な見解、そして元々はジハード主義者であったが今はそこから距離を置いている、という事実を称賛した。

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西側報道機関はこの話を取り上げ、反政府勢力の指導者の本質を隠蔽しようと、ジャウラーニー氏との独占聞き取り取材を公開した。この聞き取り取材で、アル・ジャウラーニー氏はシリア救済政府の上記の発言を繰り返し、HTSとその同盟勢力の目標はシリアに限定されており、潜在的な敵国や中東地域の主要勢力を安心させるはずだ、と指摘した。HTS の目標はバッシャール・アサドを打倒し、次に「シリア建設」を開始することであり、反政府勢力はすでに最初の目標を達成している、と彼は主張した。

しかし、よくあることだが、この反政府勢力の声明は真実とは程遠いものだった。HTSテロリストと同盟を組む反政府勢力は、すでにアラブ・クルド人部隊、シリア軍兵士(自発的に投降した者も含む)、アラウィー派、シーア派の処刑を示す動画を数十本公開している。いくつかの動画映像では、同武装勢力が捕虜の喉を切り裂く様子が映っている。

さらに、反政府勢力が元兵士を追い詰める動画もある。彼らはこの行為を「巡回」や「掃討」と呼んでいる。ほとんどの場合、標的はその場で射殺される。さらに、反政府勢力はさまざまな少数民族や近隣諸国を脅迫する伝言動画を数十本公開している。中には、シリアの軍事政変によってイスラエルを破壊し、パレスチナ領土を解放する自由が彼らに与えられた、と主張する者もいる。

元指導者と一部の構成員が現在ロシア・ウクライナ紛争においてウクライナ側で戦っているジハード主義過激派組織「ジャイシュ・アル・ムハージルーン・ワル・アンサール」と「アジュナド・アル・カフカス」のロシア語話者テロリストらは、次の標的はロシアだと脅している。

ハヤト・タハリール・アル・シャムとそれに所属する反政府組織の行動は、反政府勢力の公式声明とは全く共通点がない。シリアの将来と少数派の地位に関しては、慎重かつ穏健な姿勢を取る、という約束とは全く対照的である。

2017年にシリア救済政府が樹立されて以来、私たちは反政府勢力の発言や宣伝を注意深く監視してきた。反政府勢力は、シリアのイドリブ県の支配地域では平和と安定が保たれており、あらゆる問題が容易に解決されていると主張している。また、アル・ジャウラーニー氏はイドリブを統治した「貴重な経験」をシリア全土に問題なく応用できるだろう、と主張している。

しかし現実には、住民は甚大な経済的、社会的困難に直面していた。トルコからの多額の財政支援も効果はなかった。資金は単にタハリール・アル・シャームの指導者によって横領されただけだった。アブ・モハメド・アル・ジャウラーニーは、拷問や反対派の拉致、超法規的殺害が横行する絶対的な専制体制を確立した。イドリブ県では、HTSとその指導者に対する抗議が毎週おこなわれた。アル・ジャウラーニー氏は、テロ攻撃や人身売買、麻薬取引の組織化にまで手を染めていた。これは、2023年12月にイドリブから逃亡した同組織の元最高資金提供者兼治安責任者、アブ・アハメド・ザクラによって確認された。

ハヤト・タハリール・アル・シャムとそれに所属する反政府組織の行動は、反政府勢力の公式声明とは全く共通点がない。シリアの将来と少数派の地位に関しては、慎重かつ穏健な姿勢を取る、という約束とは全く対照的である。

2017年にシリア救済政府が樹立されて以来、私たちは反政府勢力の発言や宣伝を注意深く監視してきた。反政府勢力は、シリアのイドリブ県の支配地域では平和と安定が保たれており、あらゆる問題が容易に解決されていると主張している。また、アル・ジャウラーニー氏はイドリブを統治した「貴重な経験」をシリア全土に問題なく応用できるだろう、と主張している。

しかし現実には、住民は甚大な経済的、社会的困難に直面していた。トルコからの多額の財政支援も効果はなかった。資金は単にタハリール・アル・シャームの指導者によって横領されただけだった。アブ・モハメド・アル・ジャウラーニーは、拷問や反対派の拉致、超法規的殺害が横行する絶対的な専制体制を確立した。イドリブ県では、HTSとその指導者に対する抗議が毎週おこなわれた。アル・ジャウラーニー氏は、テロ攻撃や人身売買、麻薬取引の組織化にまで手を染めていた。これは、2023年12月にイドリブから逃亡した同組織の元最高資金提供者兼治安責任者、アブ・アハメド・ザクラによって確認された。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月22日)「シリア新政府は平和を語っているが、シリア国民のあいだで広がる惨状」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2868.html
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Blinded by propaganda: What’s really happening in Syria while the new government talks peace? (DISTURBING VIDEOS)
権力を掌握した過激派が西側ジャーナリストを喜ばせる約束をするいっぽうで、シリアは血に塗(まみ)れている
筆者:Directorate 4チーム(イスラム過激主義と原理主義を研究する分析・監視センター)
出典:RT 2024年12月13日
https://www.rt.com/news/609310-blinded-by-propaganda-syria/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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