寄稿:『フード・インク ポスト・コロナ』―超加工食品の秘密に迫る―嶋崎史崇

嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

米国の食品産業に関するロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド両監督の映画『フード・インク ポスト・コロナ』が2024年12月に日本で公開されました。09年に公開され、日本を含む世界中で成功を収めた『フード・インク』の続編です。

前作では、糖分・塩分・脂肪の接種超過による健康への悪影響が強調されました。本作は、コロナ下の混乱が食料産業にもたらした混乱もさることながら、「超加工食品」が話題の中心です。ファーストフードや清涼飲料水等には、人工甘味料や人工香料、着色料をはじめ、膨大な種類の添加物が含まれ、糖尿病等様々な病気との関係も疑われています。

カロリーや成分などを全く同じようにそろえた超加工商品と、通常の食品を両方食べる実験をすると、前者の方が数百キロカロリーも多く被験者により食べられた、という結果が出たのは衝撃的です。消費者は中毒者のように、より多く食べるよう、超加工食品により、脳のレベルで誘導されている、とされます。農薬による土壌・水質汚染といった問題も見逃せません。

本作では、代替肉に対する懸念も表明されています。代替肉は一見健康そうで、動物に負担をかけないという利点は確かにあるのですが、添加物をはじめとする人工物質がてんこもりです。

寡占化が進んだ食品産業の持つ資金力はアメリカの政治家にも絶大な影響を及ぼしており、変化をもたらすのは困難にも見えます。しかし本作では、希望も描かれます。例えば海の環境を守るため、昆布の栽培を始めた漁師。米国人は日本人と違って、海草を食べる習慣がありませんが、新しい料理も考案して普及に努めています。ブラジルが推進するオーガニック給食運動も注目に値します。チリが超加工食品のリスクについて、警告するラベル貼付を義務付けたのも印象的です。

本作で直接言及されるわけではありませんが、薬害問題や環境問題の訴訟で成果を上げてきた著名な弁護士であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、トランプ次期大統領により保健福祉長官に指名され、本稿執筆中の12月下旬現在、上院で承認されるかどうかが焦点になっています。保健福祉省が管轄する食品医薬品局(FDA)はワクチン等医薬品のみならず、食品関連も担当していますので、非常に重要な役職です。

本作は新聞等一般メディアでも紹介されていますが、日本の農薬・添加物等に関する状況は米国よりも深刻な側面もあることに、触れられることは少ないように思われます。日本の場合、肥料や種子を考慮すると、実質的な食糧自給率が1割程度、という悲惨な実態もあるとされ、いざとなれば飢餓に見舞われかねません。

以下の資料を参考にしてください。

鈴木宣弘・東京大学大学院農学生命科学研究科教授:日本が直面する食糧危機と飢餓

https://isfweb.org/post-21785/

https://isfweb.org/post-21790/

「鈴木宣弘東大大学院教授が語る『食料安全保障』日本の農と食を潰す洗脳を解く」(『紙の爆弾』2024年11月号掲載)https://isfweb.org/post-45105/

山田正彦元農相:「人体実験とされる日本の農業〜報道されない食の闇」https://isfweb.org/post-24144/

https://isfweb.org/post-24149/

なお、上映を終了した映画館もある一方、新年から上映するところもあります。年が改まるのをきっかけに、生命の根本にある食という営みを見つめ直すきっかけとなる作品として、見るに値すると思います。

https://theater-list.com/foodinc2/

 

 

 

 

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嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員) 嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

しまざき・ふみたか 1984年生まれ。MLA+研究所研究員。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程(哲学専門分野)修了。著書に『ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年6月)。記事内容は全て私個人の見解。主な論文に「思想としてのコロナワクチン危機―医産複合体論、ハイデガーの技術論、アーレントの全体主義論を手掛かりに」(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』第39号、2024年)。論文は以下で読めます。 https://researchmap.jp/fshimazaki 記事へのご意見、ご感想は、以下までお寄せください。 elpis_eleutheria@yahoo.co.jp

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