登校拒否新聞書評欄:原口一博著『プランデミック戦争 作られたパンデミック』(青林堂、2024年10月)

藤井良彦(市民記者)

テレビを持たない生活を始めてからもうかれこれ20年以上になる。原口氏といえば、「ビートたけしのTVタックル」という番組によく出ていた印象がある。大学生になり独り暮らしを始めてからテレビの視聴者ではなくなって、バラエティー番組で政治家の姿を見ることもなくなった。八王子に住んでいたものだから民主党政権誕生の際には阿久津幸彦氏が某裏金議員を打ち負かす場面に際会した。いくらノンポリだとはいえ、鳩山内閣の印象がネクタイの色くらいしか残っていないというのはひどい。菅さんは気の毒だった。なにせ世界で唯一の被爆国における世界最大の原発事故である。そしてドジョウ内閣。調べてみると、原口氏は鳩山内閣で初入閣。総務大臣として菅内閣に留任。しかし内閣改造により閣僚ポストを失い、野田内閣が倒れてからは党代表選挙でドジョウの親分と争っている。七花八裂の乱世においては選挙戦を無所属で乗り切り立憲民主党に収まった。

政争の勝者とは言えないのに、1996年に初当選して以来、野に下ったことはない。人徳である。だいたい政治家の癖に童顔だ。バラエティー向けなんである。それがすっかり髪の抜け落ちているのを見て驚いた。ここに紹介する氏の著作『プランデミック戦争 作られたパンデミック』にはなくもがなの副題「悪性リンパ腫との闘病より」がついている。青林堂から出版された『ガンになった原口一博が気付いたこと』は歯科医の吉野敏明氏との対談である。今作は青林堂からの2作目となる。闘病生活中も国会を休むことはなかった。チャンネル登録者数14.2万人を誇るユーチューバーであるのに上がってる動画の半分は朝ご飯を映したものだ。負け戦とわかっていながら自民党が始めた解散総選挙。佐賀県第1区はふさふさと髪の戻った原口氏を信任した。

トランプ政権の再起動は近い。USスチールはあきらめよう。エンパイアステートビルを買収した日本人の話は本にまでなっている。お金があるからと言って、よその国の物に手を出すべきではない。日本ではなぜかトランプに対する印象が悪いらしい。金持ちの不動産王を好きになれないのはバブル世代の僻みだ。そんなことよりも、注目されるのは11月14日にトランプが保健福祉省長官としてケネディ・ジュニアを指名したこと。国立アレルギー・感染症研究所の元所長のファウチ博士を批判してきた人物でanti-vaxxerと知られている。12月19日、リベラリストとして有名な上院議員のランド・ポールは旧ツイッターにケネディとの写真を載せてdetox the place after the Fauci eraとツイート。ケネディが民主党から鞍替えしてまで保健福祉省の長官に収まるのであれば毒抜きどころの騒ぎではない。この動きに対しては、77名のノーベル賞受賞者が連署で書簡を上院に提出。彼の指名を承認しないよう訴えた。この書簡は『ニューヨークタイムズ』誌によってスクープされ有料記事にて紹介されている。そういう魂胆がデモクラットのがめついところだ。ノーベル賞受賞者といえば故リュック・モンタニエはコロナウイルス人工説を唱えた。彼が生きていたとして署名したか?

本年1月20日の大統領就任日にはトランプが世界保健機関からの脱退を表明する模様。それまでにケネディが予定通りに就任できるかどうか。そう言えば、我らが原口氏は旧ツイッターを通じてケネディ氏にメッセージを送ったことがある。@RobertKennedyJrさま、として2023年3月27日付。その最初の一節に“I am suffering from malignant lymphoma after receiving the Messenger RNA vaccine three times. I am a member of the Japanese parliament. A video of me discussing the effects of the vaccine with Professor Yasumasa Inoue, an expert in molecular biology, was banned by Google„とある。つまり3回もRNAワクチンを打ったおかげで悪性リンパ腫に苦しんでいる。自分が闘病生活に入ったのはそのためであると。井上正康氏は大阪市立大学医学部名誉教授で、2024年の3月5日には『なぜ、医師の私が命がけでWHO脱退を呼びかけるのか?』という本を出している。その井上氏とワクチンについて対談した動画がユーチューブの「原口チャンネル」に公開されたところ親会社のグーグルによって公開禁止となった。現職の国会議員の配信が止められる。

原口氏はもともとイベルメクチン派であった。だから別に反ワクということではない。もちろん、イベルメクチンを推してる時点で主流派ではない。それでも、3回もRNAワクチンを打ったのは政治家として参加しなければならない国際的な集まりがあったからだ。職場の求めでワクチンを接種せざるを得なかった。そういう人は多くいるはずだ。それが2022年末のこと。ところが体調不良となり受診。越して2023年1月26日に病院から連絡を受けた。扁桃腺肥大かと思っていたところが検査結果は悪性リンパ腫。6月12日には国会にて超過死亡について質問。悪性リンパ腫は7月頃には寛解した。この間、原口氏は治療を受けながらも細胞を調べていた。以下、その結論を本から引用する。

3回打ったワクチンの影響があるのではないかと、複数の医師の方からも言われていました。ちなみに3回のワクチンはすべてファイザー製。1番目と2番目が、非常に問題とされるものでした。(70-71頁)

この書評を書いている時点で、原口氏が訴えられたという情報が入った。12月25日にメイジセイカ・ファルマ社が彼に対する1,000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした旨、記者会見を行った。法廷で争うとなると、この引用文に出ている「複数の医師」のうちの何人かが証人として立つ可能性がある。井上氏はもちろんのこと、イベルメクチンの件で原口氏が知己を得たという花木秀明氏。明記されてはいないが、悪性リンパ腫がターボ癌ではないかとの見解を示した識者の中にはテス・ローリー氏も含まれているはずだ。彼女については本サイトに連載のある寺島隆吉氏の著作『コロナとウクライナをむすぶ黒い太縄3』(あすなろ社)の5章に詳述されてあるので参照されたい。

訴訟は直接には「生物兵器」という原口氏の発言に向けられている。しかし、その妥当性を検討するとなると一筋縄ではいかぬ。原口氏は学者や研究者の立場からワクチンの危険性について発言しているのではない。自らが悪性リンパ腫を発症したという被害者の立場からその危険性を訴えている。少なくとも人工説についてはモンタニエのような第一線の学者の認めるところであり否定するのは難しい。

では、「生物兵器」なのか?

それに関しては本を読んでいただこう。原口氏の基本的なスタンスとしては、

ワクチンに対しては、安全保障的にも常に懐疑的であるべき(89頁)

という一節に尽きる。

HIVウイルスを発見しノーベル賞を受賞したリュック・モンタニエ博士も、「mRNAワクチンは科学的にも医学的にも過ちだ」と警鐘を鳴らしておられます(196頁)

とあるように、モンタニエの説を踏む限り、研究所から流出したウイルスとそのワクチンという構図は動かない。それが意図的な流出でないにせよ、何のために開発していたかと考えれば「生物兵器」説は一つの仮説として通る。むしろ、意図的に流出させワクチンを売り込んだとする主張のほうが製薬会社の怒りを買うところだ。いや、まさに「プランデミック」(プランニングされたパンデミック)と原口氏が糾弾しているのは、その可能性なのだ。それに比べれば「生物兵器」説は穏当である。製薬会社が「生物兵器」に争点を求めているならば、論点をずらかした印象も受ける。「生物兵器」を開発、所持している国はいくらでもある。しかし「プランデミック」は一国のなせるわざではない。だからこそ日本という国が主体性をもって挑むべきだ。

モンタニエの説を日本で最初に紹介したのは岡靖洋氏であろうか。まぐまぐというサイトで、In Deepというメルマガを発行。サイト上にもその一部が掲載されている。そこに2020年4月18日付で「[特報]HIV発見の功績でノーベル賞を受賞したリュック・モンタニエ博士が「新型コロナは人工ウイルス」とする論文を発表。そして「人為的な改変は必ず消える」とパンデミックが干渉と共に終わる道筋を表明」という記事が載った。氏によると「武漢の研究所では、まだ世界に登場していない「エイズウイルスのワクチン」を開発するために、得意分野であるコロナウイルスを用いていたようなのです」ということで、研究所からの流出というモンタニエの説は「エイズウイルスのワクチン」を開発するためのウイルスが誤って流出したもの、と解釈される。

https://indeep.jp/coronavirus-is-a-man-made-according-to-luc-montagnier/

その続報は2021年5月22日付で「「ノーベル賞学者のリュック・モンタニエ氏が「変異種も感染拡大もコロナワクチンそのものが作り出している」とメディアに語る」だ。氏によると「このモンタニエ博士の言っていることは、新潟大学の岡田名誉教授も、また、ゲイツ財団の元ワクチン開発局長だったボッシュ博士も、それと近い言葉を述べられていました」ということで、岡田正彦氏やバンデン・ボッシュ氏による同様の見解が紹介されている。

https://indeep.jp/prof-luc-montagnier-said-vaccination-is-creating-the-variants/

モンタニエは2022年2月8日に亡くなった。人為的に改変されたウイルスという流出説は重鎮を失ったことになる。岡田氏は有名なのでここで紹介する必要はないだろう。井上氏と並び反ワク界隈ではよく名前が出てくる。ボッシュ氏はベルギー生まれの研究者である。だからと言って、ウィキペディアにオランダ語のページしかないのはおかしい。2023年7月20日に花伝社から『回避不能な免疫逃避パンデミック』という訳書が出ていて、その説明に「ゲント大学で獣医学学位を取得」「ホーエンハイム大学でウイルス学の博士号を取得」「複数のワクチン会社に入社」「米国シアトルにあるビル&メリンダ・ゲイツ財団グローバルヘルスディスカバリーチームにシニア・プログラムオフィサーとして参加」とある。

https://www.kadensha.net/author/a10038601.html

2023年8月5日には京都大学医生物学研究所准教授の宮沢孝幸氏と大阪医科薬科大学医学研究支援センター助教の田中淳氏が連名で、論文を発表。the formations of a part of Omicron isolates BA.1, BA.1.1, and BA.2 were not the products of genome evolution as is commonly observed in nature――「オミクロン分離株の一部配列は自然界で一般に見られるゲノム進化の産物ではない」と結論した上で、オミクロン変異体が2020年にはすでに存在していた可能性を示唆した。査読論文ではないにせよ、事実であれば看過することは許されない。なお、氏は2024年5月15日に京都大学を退職している。

https://zenodo.org/records/8216373

ウイルス人工説=「生物兵器」説とはならない。けれども、その人為的に改変されたウイルスが特許を取得していたとすればどうか?

放送受信機を持っていないせいかコロナ禍となってもあまり危機感がなかった。マスクをつけて出歩いたことはないし消毒をしたこともない。もちろんワクチン未接種なわけで、しかし反ワクと言われても困る。せっけんも使わない生活を送っておられる岡氏のブログは読んでいるけれども、だからワクチンを打ってないというわけでもない。在宅ワークで、電車に乗る機会もないしレストランに入るお金もない。病院に行く機会もないから、あまり意識することがなかっただけだ。ここ何年か冷暖房を使わずに水でシャワーを浴びる生活を続けている。そのためか風邪をひかなくなった。スマホを持ち歩く習慣もない閑人である。それだけにスマホをいじりながらマスクをしてトロトロ歩いている人たちを見ると不安に駆られる。女のメイクがマスクに合わせて目尻を盛るように変わったのは副反応というものか。呼吸法を行う習慣があるので呼吸量を下げることには最大限の抵抗を感じる。医療機関であればマスクと消毒をする必要はあるにしても一般社会でマスクをつけ一日に何度も消毒液を吸い込む理由はないはずだ。自らの免疫力を落とすような行為を取ることは自殺行為である。それが公衆衛生の名のもとに行われるのであれば、社会が自殺へと向かっていることになる。

餅屋は餅屋である。学校哲学者がなんでこんな書評を書いているのか。個人的に原口さんが好きだからか。学校に行っていなければ「不登校」と言われ、ワクチン未接種であれば「反ワク」と言われる社会に居場所がないからか。この書評を『登校拒否新聞』の書評欄に寄せた理由はただ一つ、喧しく報道されている「不登校」の増加の理由として子どもたちの健康不良があるからだ。ケネディ氏は小児ワクチンの廃止を訴えている。そこまで徹底すればまさに「反ワク」だ。我らが原口氏はそこまでは言わないだろう。しかし、氏も問題とされている次世代型mRNAワクチン――レプリコンワクチンの接種が始まっている今、優先して守るべきはまさに次世代を担う子どもの健康だ。マスクと消毒、そしてワクチンの副作用によって、すでに子どもたちの健康は害されている。

佐賀県は登校拒否という言葉の発祥地の一つである。勤評闘争の際、教職員のスト入りに対抗してPTAが登校拒否を行った。組合側は同盟休校により共闘。これはまた社会党と自民党の代理戦争でもあった。事件後、大量の検挙者を出したことで日教組の中執も現地入りした苛烈な教育斗争の現場である。弘道館を擁する土地柄、教育に対する意識が高いのか。その藩校を放校となった大隈重信の遺志を継いで、原口氏は立憲改進党を復興したいのだという。吉野氏との対談『ガンになった原口一博が気付いたこと』では、「今の文教族は史上最も劣悪」と言い切っている。議員が教育の無償化に対して批判的なのは心強い限りである。高校を無償化すると高校中退のリスクがさらに増す。無償化するなら六三三制にすべきである。国立大学の学費を下げても教育格差は縮まらない。高い教育費をかける家庭の子のほうが安い学費の大学に入るという社会の事実がある。であるから国立大学は値上げして、Fランとされる私学の学費を無料にせよ、と草端の蔭から政策提言いたします。

「不登校」「反ワク」などというコトバに惑わされてはいけない。マスクと消毒、そして薬害が子どもたちの健康を害し、その結果が出席率の低下であれば、次世代型mRNAワクチン接種にも慎重であるべきだ。現状、ケネディ氏の指名が承認されるかどうかは未定だ。WHOからの離脱も既定路線とはいえ決定事項ではない。いずれにしても、トランプ政権が公衆衛生政策を大きく転換させることは間違いない。気づけば日本人だけがマスクを着用し、消毒を続け、ワクチンの定期接種までしていたとなれば、まるでガラパゴス島の浦島太郎ではないか。今年も子どもたちの出席率は下がるだろう。それに乗じて「多様な学び」を推進する派はフリースクール、居場所への行政の支援を求めるだろう。そこに異議を唱えることのできる議員がいるとすれば、我らが原口氏の他にいない。そのためにも二匹目のドジョウを掴んでもらいたいものである。(12月27日脱稿)

藤井良彦(市民記者) 藤井良彦(市民記者)

1984年生。文学博士。中学不就学・通信高卒。学校哲学専攻。 著書に『メンデルスゾーンの形而上学:また一つの哲学史』(2017年)『不登校とは何であったか?:心因性登校拒否、その社会病理化の論理』(2017年)『戦後教育闘争史:法の精神と主体の意識』(2021年)『盟休入りした子どもたち:学校ヲ休ミニスル』 (2022年)など。共著に『在野学の冒険:知と経験の織りなす想像力の空間へ』(2016年)がある。 ISFの市民記者でもある。

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