【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月30日):元財務次官ロバーツ氏の嘆きと怒りは、まだまだ続く!「プーチンよ、シリアを失ってもまだ目が覚めないのか?」

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

ローラ・ローガンが言うように、米国の報道界は真実を語る人々を虐殺する血みどろの競技だ。https ://www.paulcraigroberts.org/2024/12/19/the-american-media-is-a-collection-of-whores-who-prostitute-themselves-for-money/

私は、陰謀論者、プーチン傘下の工作員かプーチンの複製品、レーガン傘下のファシスト、反ユダヤ主義者、ホロコースト否定論者、左翼の狂人、右翼の狂人、国内テロリスト、人種差別主義者など、ありとあらゆるものに決めつられてきた。というのも、連中は私がおこなった分析を反駁できないので、罵倒するしかなかったからだ。

それでも、プーチンのような地位の高い重要な人物が私の見解に同調してくれると、私は満足する。例えば、最近の伝説に残るような年末記者会見と4時間にのぼった質疑応答で、プーチンはシリア打倒の恩恵を受けるのはイスラエルである、という私の意見に同意した。しかし、プーチンはまたもや現状を誤認した。彼は、イスラエルがシリア南部を占領したのはイスラエルの正当な安全保障上の懸念によるものだとし、最終的にイスラエルはシリア領から軍を撤退させるだろう、という希望を表明したのだ。プーチンはイスラエルは大イスラエル構想から撤退するかもしれないと考えているのだが、それは全く理解できない。というのもイスラエル政府は占領地域のユダヤ人人口を倍増させる計画を発表したからだ。「我が国は引き続きその領土を保持し、発展させ、そこに定住する」とイスラエル政府は発表した。プーチンは大イスラエル構想のことを忘れてしまったようだ。レバノンとイランがイスラエルの次の標的だ。シリアがなくなったことでその道は開かれた。

プーチンはイスラエルが勝利したという点には同意しているが、シリアの消滅に対する責任については否定し、「シリア打倒によってロシアが弱体化した」という米国人記者の発言も否定した。プーチンはシリア陥落の原因をシリア軍とイランに支援された民兵の戦闘拒否にある、とした。しかしシリア軍がロシアの航空支援を受けていたのに、なぜ10年後に突然考えを変えてロシア側が戦闘をやめたのか、については説明しなかった。プーチンは、米国が支援するテロリスト勢力が「内部変革」を遂げたことが、西側諸国が彼らと繋がる意思を示したことで証明されたとし、それによりシリアにおける「ロシアの核心的目的」が達成された、と主張した。プーチンがシリアのために8年以上も戦ったのは、テロリストと彼らを支援する米国支援者を結びつけるためだけだったとは信じ難い。米国当局はずっとこのテロリストを支援してきたという事実があるからだ。プーチンがこんな説明をすることこそが、私がプーチンを心配する理由だ。もう一度言うが、私の懸念は、プーチン大統領が核戦争を回避しようとした結果、核戦争が起こる可能性が高くなってしまっている、という現状だ。(プーチン大統領はテロリストの「内部変革」について誤解しているようだ: https://halturnerradioshow.com/index.php/news-selections/world-news/behold-what-we-have-done-by-overthrowing-assad-in-syria ; https://halturnerradioshow.com/index.php/news-selections/world-news/behold-the-results-of-assad-overthrow-in-syria

読者の皆さんもご存知のとおり、私はウクライナ紛争の拡大の責任を、プーチン大統領が現実に気づくのが遅すぎたことと準備不足だったことにある、と考えている。ロシアの介入を擁護する話の中で、プーチン大統領はこの介入があまりにも遅れ、準備不足だったことを認めた。だから、プーチン大統領を擁護する人たちよ、ご注意あれ。そして、私の言うことを責めないで欲しい。プーチン大統領は私の見解に同意しているのだ。以下はRT によるプーチン大統領の質疑応答の記事からの引用だ:

「もし時間を戻せるなら、2022年2月にウクライナに軍を派遣するという決定を変えたかと問われると、プーチン大統領は、『ロシアはもっと早くそうすべきだった』と断言した。『このような事前の知識があれば、特別軍事作戦を含め、この行動の準備を始めるべきだった』と同大統領は語った。」

「大統領は、ウクライナの行動をロシアは『もはや容認できなかった』ため、十分な準備なしに軍事作戦を開始する決定が下された、と指摘した。この発言が指しているのは、ウクライナ国家が核兵器取得へ野望を見せていたこと、現在は無効となったミンスク合意の遵守を公然と拒否した点だ。なおこのミンスク合意では、ドンバス地区にウクライナ国家内で特別な地位を与えることを目指していた。」https://www.rt.com/russia/609580-putin-hosts-annual-question-session/

私がまとめたプーチンが起こした戦略的失敗の一覧(https://www.paulcraigroberts.org/2024/12/19/is-putin-capable-of-strategic-thinking/)を振り返ってみると、これらの事件は予測できなかった失敗のようだ。プーチンは、ジョージア(旧称グルジア)による南オセチア侵攻、米国当局によるウクライナでの軍事政変、クルスク侵攻、米国とイスラエルによるシリアへの新たな攻撃を予測していなかった。しかし、ロシアの諜報機関は予測していたに違いない。プーチンは聞きたくない情報は聞かないのだろうか? 彼は他の人の利益に配慮して情報を揉み消しにしているのだろうか?

もう一度言うが、私の懸念は、ウクライナ紛争が不必要に長引いていること、戦わずしてシリアを失ったこと、クルスク侵攻、米国当局によるアルメニア侵攻、米国当局によるジョージアでのカラー革命の試み、米国/NATOによるロシアへのミサイル発射が何ら適切な対応を一度も受けていない件、これらはすべて、西側諸国の目から見てロシアの国威を失わせる一因となっていることだ。これにより、トランプ次期大統領がプーチンとロシアに有利なウクライナ紛争の解決を受け入れることは難しくなるだろう。これにより、約束していた結果をプーチンが享受することは難しくなるだろう。米国側が結果に影響を与えるのならば、ロシアはどうやって勝利できるのだろうか? 米国とイスラエルが勢いづいている中、プーチンはトランプがロシアの紛争終結条件を受け入れることを期待できない。米国の覇権を再構築することは、米国を再び偉大にする取り組みの一部になるからだ。

もう一度言うが、世界は異常な挑発行為に直面している中でのプーチン大統領の自制心を尊重すべきだと私は考えている。彼は戦争に反対しており、より大規模な戦争を回避する努力の一環として侮辱や挑発行為を受け入れているのだ。

ただし疑問は残る。プーチン大統領の戦争回避の努力は行き過ぎであり、間違った伝言を送って戦争を招いているのではないのだろうか? プーチン大統領はこの問題を慎重に考えるべきだ。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月30日)「元財務次官ロバーツ氏の嘆きと怒りは、まだまだ続く!「プーチンよ、シリアを失ってもまだ目が覚めないのか?」」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Is Reality Gaining a Foothold on Putin’s Thinking?
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:自身ブログ 2024年12月20日
https://www.paulcraigroberts.org/2024/12/20/is-reality-gaining-a-foothold-on-putins-thinking/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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