☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月31日):ロシアは2025年には崩壊か?
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
プーチン政府は21世紀の野蛮な悪の世界にあって19世紀のリベラルな政府になろうとでもいうのか?
私がこの疑問を提起するのは、プーチンが彼の紳士的なやり方で、第二次世界大戦でスターリンの赤軍が手ごわいドイツ国防軍を破るのに要した時間より6ヶ月長い期間、ウクライナ国内のロシア領土で戦争を戦ってきたのにまだ勝利することができていないからだけでなく、プーチンはまだウクライナ軍を小さなドンバス地域やウクライナのロシアのクルスク侵攻から追放していないからである。プーチンが、ロシアは二度と自国の領土で戦争をしないと宣言した時のことを覚えている人はいるだろうか? プーチンは、ソ連の攻撃がドイツの侵略者をロシアから追い出すのにかかったよりも長い間、ロシア自身の領土で戦争をしてきた。さらに、プーチンとラブロフは、相互安全保障条約に合意してウクライナ紛争を終結させるために、ロシア軍ではなくトランプに頼っているように見える。
プーチンのいかなる宣言も、米国の覇権に対する障害であるロシアをさらに分裂させるという米国政府の決意に何ら影響を与えていない。プーチンが西側にこれみよがしに使ってみせた超兵器もそうだ。プーチンがミンスク合意やシリアを陥落させたアスタナ合意のような無駄な「合意」に依存していることは、プーチンがロシア軍をドンバスでの戦闘のみに制限している事実も重なって、「プーチンは戦う気がない」ことをワシントンに確信させた。米国政府は、米国政府の操り人形をキエフの責任者に置いた米国政府のクーデターから8年もかかってこの事態は問題であることをプーチンが理解したことは通常では考えられない、と思っている。プーチンが糞の役にも立たない「ミンスク合意」にだまされた事実についてもそうだ。
プーチンの唯一の積極的な行動であるオバマ米大統領のシリア侵攻を阻止したシリアへの介入の後、プーチンは、シリアとイラン当局者に対するイスラエルの攻撃を防ぐためにシリアがロシアの防空システムを使用することを許可することを拒否した。ロシア空軍がシリア領空を支配している間、プーチンはイスラエルと米国がシリア領土を好きなように攻撃することを許した。なぜプーチン大統領がシリアに介入しようとしたのか不思議だ。問題は、しばらくの間、先延ばしにされたが、最終的には、プーチンはイスラエル/ワシントンの侵略から逃げだし、彼が守ったシリアをワシントンとイスラエルの手中に置くことになった。シリア人によって選出されたシリア政府の防衛のために戦ってきたロシア空軍の8年以上の取り組みを、プーチンは文字どおり帳消しにした。
イスラエルがレバノンを占領する道が開かれた。空軍や重火器を持たないヒズボラ民兵の手による、自慢のイスラエル軍の恥ずかしい敗北はもうない。イスラエル軍は、女性と子どもを殺すことしか能がないが、二度もヒズボラから命からがら逃げた。しかし、今、プーチンのおかげで、シリアはなくなり、ヒズボラに補給する方法はない。イスラエルがすべての指導者と司令官を暗殺し、補給ルートを遮断している間、ヒズボラは座り込んで何もしなかった。行動しないことは常に敗北につながり、プーチンの行動しないことはロシアの敗北につながっている。地球最後の日に、このロシアの敗北を避けるために、(核の)ボタンが押されるのだろうか?
イランも現在孤立し、戦いを好まないプーチンにどのような信頼を寄せることができるのだろうか、と思い悩んでいる。中国とBRICSも同じ疑問を突きつけられている。ロシアはいざというとき頼りになるのだろうか?
私の批判的な言葉は、プーチンの戦略的過ちの長いリストの冒頭のほんの一部についてのものにすぎない。そのうちのいくつかについては、このウェブサイトに書いてきた。しかし、私が取り上げる機会がなかったものも多い。
以下の件を例に考えてみよう。ロシアは連邦であり、バベルの塔のような弱い政治構造であり、イスラム教徒が多数を占める共和国がある。それなのに中東におけるプーチンの政策は、イスラム教徒よりもイスラエルを優遇してきた。最近、おそらくイスラエルによるパレスチナの大量虐殺に対応して、ロシアのイスラム教徒がロシア連邦内のイスラム共和国でユダヤ人を攻撃した。なぜそこにユダヤ人がいたのか理解できない。プーチン政府は直ちにこのロシアのイスラム教徒を逮捕し、ユダヤ人を暴行したとしてこのロシアの2名のイスラム教徒市民にそれぞれ7年と8年の禁固刑を科した。しかし、プーチンは、パレスチナ、レバノン、シリアに対するイスラエルの残虐な攻撃に対して何もしていない。
では、なぜプーチンはイスラエルの側にいて、ロシア連邦のイスラム教徒の市民の側にいないのだろうか? イスラエルによるイスラム教徒への殺戮的な扱いに反対を表明した自国民を迫害するプーチン政府は、プーチンが本当にナショナリストの指導者なのか、それともワシントンのようなイスラエルの操り人形にすぎないのかという疑問を投げかける。トランプ政権でさえ、徹頭徹尾シオニストである。
ロシアのイスラム教共和国が一夫多妻制にゴーサインを出した。これはロシアの法律と矛盾している。ロシア政府がロシアのイスラム教徒よりもイスラエルの側に立つことを考えれば、この件はまさに二重の破綻である。間違いなく、イスラム教の指導者たちはこの決定を覆さなければならないだろう。プーチンは、ワシントンの新保守主義者たちが利用できるようにと、とんでもない贈り物を彼らに手渡した。プーチンはワシントンのロシア連邦解体を手助けしているのだ。
考えてみよう。プーチンが政権に就いている間、米国政府はポーランド、ルーマニア、ウクライナのロシア国境にミサイル基地を設置した。かつてのロシア友好国であったウクライナは、ロシアとの戦争で米国の同盟国となったが、ロシア外務省はその事実をまだ認めていない。ロシア外務省は現実を認めることができないようだ。
「備えをしないプーチン」は、アメリカとジョージア(旧称グルジア)の南オセチア侵攻にも、ワシントンのウクライナでのマイダン・クーデターにも、ドンバスへの必要なロシアの介入にも、ロシアの軍事力を示すための海・空軍基地を抱えるシリアの防衛にも、アルメニアにも、ワシントンがジョージアで進行中のカラー革命にも、備えができていなかった。プーチンは、敵との無価値な紙切れ協定以外には決して備えをしない。
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プーチンは、ロシア政府に対する米国の挑発はプーチンに降伏か戦争かの2つの選択肢しかなくなるまで続くと、請け合ったようなものだ。プーチンには降伏する選択肢もある。しかし、ロシア参謀本部はプーチンの権限を離れたところで決定を下すだろうか? 戦争は、米国の侵略だけが原因ではない。プーチンの対応と戦略能力の欠如によっても起こるだろう。
私は、出国したり起訴されたりしているロシアの将軍たちの更迭が、実際に発表されているように腐敗に対する動きなのか、それとも、CIAと米統合参謀本部がアメリカの指導者ジョン・F・ケネディ大統領がアメリカをソ連に売り渡すのを見ていたように、プーチンがロシアをワシントンに売り渡すのを見ていると思っているロシアの愛国者に対する動きなのかの判断に迷っている。
プーチンは、口先だけで、実際に行動しようとはしない。その態度は世界を核戦争に導いている。プーチンの新しい兵器は、「核戦争にはならない」というみせかけを彼に許すが、プーチン以外の誰も新しい超兵器を持っていないので、核戦争になるだろう。プーチンとラブロフは戦争に関する警告をひんぱんに発するが、同時にそれを否定することも言うのでまともには受け止められていない。その結果、ロシアの警告には何の重みもなくなっている。
トランプに平和を期待することはできない。トランプは政権の中枢におもにシオニストを任命した。シリアを失ったロシアは守りに入っている。「アメリカを再び偉大にすること」、それは、ワシントンの覇権を回復することである。プーチンは没落するまでこの動きに挑んできた。これが意味するのは、プーチンが発表した条件でトランプがウクライナの和解に同意することを期待するのは非現実的だということだ。
もしトランプがプーチンの合理的な条件に同意すれば、売女メディアは、トランプをプーチンの侵略をプーチンの条件で解決したプーチンの手先と断定し、トランプは自らの支持者からの信用を落とすだろう。トランプは 「ウクライナを失った 」大統領にされてしまうだろう。
ロシア参謀本部が、戦争指導者としてのプーチンの無能さをいつまで容認するかはまだわからない。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月30日)「元財務次官ロバーツ氏の嘆きと怒りは、まだまだ続く!「ロシアは2025年には崩壊か?」
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また英文原稿はこちらです⇒Will Russia Collapse in 2025?
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:自身のブログ 2024年12月26日
https://www.paulcraigroberts.org/2024/12/26/will-russia-collapse-in-2025/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授