【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.01.03XML:米国が中国をミサイルで包囲、対抗して露軍が日韓の目標を設定と英紙は判断

櫻井春彦

 イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は12月31日、ロシア軍の計画担当者が日本や韓国との戦争を想定し、160か所の標的をリスト化したと報じた。秘密文書を見た同紙の判断だという。目標には軍事施設のほか関門トンネルや茨城県東海村の原子力施設などが含まれているとされている。この報道の信憑性は不明だが、その当時、すでにアメリカがロシアとの戦争に動いていた可能性は高い。

 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すためにキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクーデターを始めていた。当初は人を集めるためにカーニバル的な雰囲気を作り出したが、年明け後にステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチが前面に出てくる。

 2月に入るとネオ・ナチはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ、トラクターやトラックを持ち出してくる。ピストルやライフルを撃っている様子を撮影した映像がインターネット上に流れた。

 このネオ・ナチは2004年からバルト3国にあるNATOの訓練施設でアメリカ/NATOの軍事訓練を受けていたと伝えられているが、それだけでなく、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたって暴動の訓練を受けたとも伝えられていた。アメリカの有力メディアによると、内戦勃発後の2015年からCIAはウクライナの特殊部隊をアメリカの南部にある秘密基地で訓練してきたという。ロシアにとってアメリカ/NATOがウクライナを制圧するということは対ロシア戦争、いわば「ネオ・バルバロッサ作戦」の開始を意味する。

 ジョー・バイデンが大統領に就任した翌年、​2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表した​。この計画はドナルド・トランプ、バラク・オバマ、あるいはそれ以前に建てられていたのだろう。アメリカがウクライナでクーデターを成功させた2014年以降、中国とロシアは急接近し、戦略的な同盟関係に入ったことを考えると、アメリカ側の計画はロシアとの戦争を意図していると言える。日本では自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づくものだ。

 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。

 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。

 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。

 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、​2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている​。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。

 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。

 ​2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった​。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。

 こうした動きに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘、ロシアは朝鮮との関係を急ピッチで強化している。

 日本から台湾にかけては米英両国にとって中国侵略の拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡にほかならない。日本には自衛隊というアメリカ軍の補完部隊が存在、韓国には現役の軍人が50万人、そして予備役が310万人いる。その韓国を動かすためにアメリカは尹錫悦を大統領に据え、日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招く。

 そこで​尹は12月3日にソウルの大統領室庁舎で緊急談話を発表、朝鮮に追従する「従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣布する」と宣言、朴安洙陸軍参謀総長を戒厳司令官に任命。その戒厳司令官は国会、地方議会、政党の活動、そして政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、すべてのメディアと出版は戒厳司令部によって統制されると発表した​。

 尹はクーデターを試みたと考えられているが、戒厳令宣言に反対する人びとが素早く抗議活動を開始、宣言から数時間後に議会は議員300人のうち190名が出席して戒厳令を撤回させる動議を全会一致で可決している。クーデターは失敗に終わった。

 この戒厳令宣言の黒幕は韓国駐在アメリカ大使のフィリップ・ゴールドバーグではないかと考える人もいる。この人物は2006年10月からボリビア駐在大使を務めていたのだが、2008年9月、ボリビア大統領だったエボ・モラレスはクーデターを支援したとして彼を国外へ追放している。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されていた。

 尹錫悦が逮捕された場合、アメリカの工作が明らかにされる可能性もあり、それを正当化する話を流し始めている可能性もあるだろう。フィナンシャル・タイムズ紙はシティ(イギリスの金融界)と緊密な関係にある。イギリスの支配層は中国を侵略して略奪するため、1839年9月から42年8月にかけて「第1次アヘン戦争」を、また1856年10月から60ねん10月まで「第2次アヘン戦争」を仕掛けているが、内陸を占領することはできなかった。その後、イギリスやアメリカを後ろ盾とする勢力が「明治維新」を成功させ、新体制の日本は中国侵略を始めている。

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