レイチェル・クラーク:【ブライアン・バーレティックとは何者か〜ウクライナロシア情勢をめぐって〜】

レイチェル・クラーク

【ブライアン・バーレティック氏の経歴】

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元海兵隊員で、沖縄での駐留経験あり。
退役後はタイ在住で、コンピューターグラフィックの仕事をしながら、ブログを書いたり、寄稿したりしていたようです。以前のペンネームは、トニー・カータルッチ。ユーチューバーとしては、中国の周りの東南アジア諸国の地政学的解説が素晴らしく、特に米国の人工芝NGO(「草の根」市民運動に対して、NGOでありながら直接・間接的に政府資金と政府の意図に従って活動するグループのことを「人工芝」と呼ぶ)であるNEDの関わりを非常に詳しく説明していました。ウクライナでの動きがキナ臭くなってきた頃から、NATO(北大西洋条約機構)に焦点を当てた解説 、そして元軍人ならではの、一般ピープルには考えの及ばない部分をわかりやすく解説してれています。
この約2年前のショートでは、たった2つの文で、見事にNATOの特徴を説明しています。NATOのやることは2つ:一つは拡大し続けること。もう一つは、拡大しながら飲み込んだものを片っ端から破壊すること。それが21世紀のNATOの足跡、ヒューマニティーに対する犯罪の数々だと指摘しています:https://youtu.be/HqlUns7KfwY 言い換えれば、「ロシアの侵攻」という表現で西側メディアが報道し続けている筋書きの裏には、実は「ウクライナを利用してロシアに侵攻」したいNATO・米国の目的があるということです。事実、ロシアをバルカン化(細分化)して、小国家群になったら、資源を貪るプランを、ランド研究所が論文に書いています:https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RB10014.html そして、このランド研究所の研究費の収入源をこのパイチャートでご覧ください。ほとんどがペンタゴン傘下の軍部です:https://www.rand.org/about/how-we-are-funded.html 形の上では非政府団体でノンポリですが、やってることはガッツリと米国政府機関の一部と言っても過言ではありません。上記の論文や、西側諸国の対露姿勢については、かなり知られていますが、日本の「軍事専門家」と呼ばれる人の多くは、ウクライナ政府、米英の発表 、米国の「戦争研究所(ISW)」の資料を元にしたものが圧倒的に多いです。上記のISWの大口寄附企業リストをご覧ください。戦争で儲かる企業名がズラリ:https://www.understandingwar.org/our-supporters ISWの地図は、ブライアンもよく使っています。西側寄りの地図でさえ、ロシアが優勢ですよ、と。ISWの論調は、スポンサーから推して知るべし。
このような資料をじっくり見て、ブライアンの解説を聞くと、全ての点が繋がって納得できますし、豊富な資料のソースリンクがきちんと概要欄にリストされているのも素晴らしいです。

彼の解説は、大手メディアとは完全に一線を画しています。最近は他のユーチューバーのチャンネルにもゲストとして呼ばれてトークのパネルになったり、インタビューされたりしています。ある時点でコンピューターグラフィックのお仕事はやめたようで、今は戦局の地政学的解説に専念しているようです。
1年ほど前の彼の解説では、西側メディアが「ロシアの後退、苦戦」という論調に対して、「ロシアはウクライナの土地を奪うことよりも、ロシアの戦力を温存しつつウクライナの戦力を出来るだけ失わせることに焦点を当てている」と言っています。西側はソビエト時代の戦車や武器を片っ端から集めてウクライナに送りましたが、徹底的に破壊され、人材も失いました。一旦前線に出されると寿命は4時間とも言われています。 そんな情報を提供してくれていたゴンザロ・リラ氏は獄中で病死しましたが。 (ゴンザロ・リラ氏については、後日レポートしたいと思います。)ゼレンスキーがもっと武器を送れとしつこく言っていた理由の一つは上記の武器消耗の速さにあります。ですから、「ウクライナがどれほど国土を取り戻しても、戦力が衰退すれば、ロシアはいつでもまた取り返すことができる」と解説していますし、あれから一年たって、事実そうなっていますよね。

途中ですが、今回ここで概訳しているソースはこちらです:https://youtu.be/13MBwNsFWLs

この動画の配信から1年たってしまったので、その結果も織り混ぜながら、概訳をさらに編集します。内容はほぼ同じ、彼の予言は全てその通りになってます:

あの後、米・英・独・ポーランド各国が、それぞれ独自の戦車をウクライナに送ることを表明したことについて、ブライアンは、このように解説しました:「こんなにさまざまな機種が送られてきても、それぞれが別々の弾を使い、それぞれに合った別々のトレーニングも必要になり、別々なメンテナンスクルーも要ります。英国製の新しい戦車には、それ以前に使われていた同国製戦車用の砲弾が使えません。つまり、ロジスティックの問題とメンテナンスや修理の問題が、山積します。もっと大変なのは、要員がそれぞれの違った戦車に合わせて異なるトレーニングを受けなければならないことです。また、西側から送られる戦車の殆どが自動充填仕様ではないので、普通のクルーの他にこの充填係が戦車の数だけ必要になります。もうこれだけでも大変なのに、英国とポーランドは、他のNATO諸国にも、もっと戦車をウクライナに送るように呼びかけています。現在公表されている戦車や武器の数から計算して、2旅団分(約8000人)になります。これだけ送って、それだけの人員を新しく確保するなど到底無理です。旅団を細分化して、リーダーシップを育てるだけでも数年かかります。ですから、既存の旅団を再編成して、1つか2つの旅団にすることで、送られてくる戦車を小出しに前線に送り続けて戦力維持を図る(一挙にあちこちに送るよりは)か、するでしょう。
昨年の今頃までに、5〜7、もしくはそれ以上の旅団をウクライナは失っています。一方ロシアは過去に訓練をうけた30万人の予備役を導入します。彼らは再びトレーニングを受け、一部は既に戦場に派遣されています。この動画を撮影中にも、ウクライナは後退し始めており、ロシアは新しい塹壕を掘ったり、防壁を作ったりもしています。そして、ロシアの最新型の戦車が戦地に送られてきています。それらを使い慣れた兵士、修理・メンテナンスのできる要員、合致した砲弾も一緒に派遣され、届けられます。つまり、ウクライナ側の持つ問題が、ロシア側には一切ないのです。
ウクライナ側の戦車の修理は、1000km離れたポーランドに送らなければできません。なぜなら、そんな修理・メンテ用の施設をウクライナ国内に建設しようものなら、ロシアがクルーズミサイルを打ち込んで、即破壊してしまうからです。
西側から送られる戦車の中で、一番多いのが「レパード2」と呼ばれるものです。レパード2を使うトルコがシリア(ロシアが援助)の戦場でどう戦っているか、トルコのニュースが伝えるところによると、「破壊されています」とのこと(訳者註:地雷や対戦車ミサイル等で見るも無惨な写真が色々出てます)。こんなニュースを知ったら、西側から傭兵やボランティアでウクライナで戦ってる兵士たちは心配でしょうね。できることなら自国の使い慣れた機種を扱いたいと思うでしょう。
(2022年の)2月以降の戦いで、ロシアは数百台に及ぶ西側の戦車を破壊し続けてきました。レパード2に対しても、同じことをしただけです。
チャレンジャー2(戦車)に関しては、英国軍がイラクで使って破壊されています。そのニュースが公表されるまでに、半年以上かかりました。(訳者註:マイナーなニュースは評判を落とすので、スポンサー企業に気を遣って遅らせているようです。ウクライナは、対中戦争に向けての武器のテスト場・見本市の延長線です。)プロパガンダで大きく盛って敵を怖がらせる手法を用いても、しっかり訓練された軍隊の手によって、最新型の戦車もあっけなく破壊されています。米国がサウジに売った戦車も、イランの武装勢力に破壊されています。
イスラエル軍の戦車も、レバノンで、へズボラが使う対戦車砲(シリア経由で入手したロシア製)によって破壊されています。あまりの破壊力にイスラエルは撤退(これはつい最近のシリアの崩壊劇よりもずっと以前の出来事です)。どんなに地政学に疎い人でも、これらの国々の兵士たちがよく訓練されていることはお分かりでしょう。よく訓練された兵士たちが、西側製の戦車を使って、その戦車がロシア製の対戦車砲でコテンパにやられているのです。
そんなロシア製の武器をロシア軍自身がウクライナで使っているのです。ウクライナ軍には、他の戦場でロシア軍に散々破壊されている西側の様々な機種の戦車が送られてきて、十分な訓練が行き渡らない兵士たちがそれらを使ってきたのです。(訳者註:「ウクライナ優勢」を報じてきた大手メディアの信頼度はここでもうガタ落ち。)
領土を確保する為に、兵士の命を犠牲にしてしまったウクライナの戦術は非常に無惨な状態で、誰もが停戦や全面降伏を願っていますが、法律的にすでに大統領ですらないゼレンスキーが諦めませんし、米国の「陰の大統領」トニー・ブリンケン国務長官が徴兵年齢を18歳に引き下げるよう迫っています。ウクライナ人の男性は、もう絶滅危惧種です。
結局昨年1年間で、西側からどんどん戦車や傭兵の形で米兵やNATO諸国の軍人たちが送られて、戦争を長引かせ、ますます多くの犠牲者が出ました。どうやってこの戦争を終わらせるのか、その術を知らない西側は、とことんエスカレートさせてしまいました。
なぜこのように西側は武器を送り続けて、戦争を長引かせるのでしょうか? ウクライナの独立を守る為でしょうか? それともロシアの国境で、脅威としてのウクライナを温存する為でしょうか? なぜ?
立場をひっくり返してみましょう。
米国の政権交代を狙って、ロシアがカナダの選挙結果を覆し、カナダのリーダーとして傀儡を送り込み、メディアや反体制派を封じ込み、米国国境に向けてカナダ軍に攻撃させようとしたら、米国はどう反応するでしょうか? そんなこと絶対に嫌ですよね? ロシアゲート事件が米国の捏造であることは既に証明されました。同様なことをカナダでロシアがやったら米国はどう反応するでしょうか? 
ウクライナは2014年から国家としての独立性を失っています。ウクライナは独立性を取り戻すためにロシアと戦うことはできません。なぜなら、ウクライナの独立性を奪ったのは、米国だからです。ウクライナは、米国から自国の独立性を取り戻さなければならないのです。西側の支援がエスカレートするたびに、私たちはこのことを思い出さねばなりません。
新しい戦車が届き、訓練で操縦できるようになるのに2週間はかかるでしょう。使いこなせるまで訓練し、敵を倒せるようになるまでには何ヶ月もかかるものです。これまでにも言ってきました。何度でも言います。駆け出しレベルの戦車操縦士になるまで半年かかります。戦車の中の各役割を担うクルーの中で、司令官になれるまで数年かかります。覚えておいてくださいね。」

私見:
この内容を1年前にフェイスブックに投稿し、この1年間、ずっとプライアンの解説通りに戦況がウクライナに不利なままだったのを観察しながら、無駄に失われた命の多さに心が痛みます。2014年のミンスク合意は、国連の安保理でも認められた立派な国際法です。それを2度も無視してドンバス地方(ウクライナ東部のロシア語圏)にキエフが砲撃を続け、ロシアが特別軍事作戦に出るまでの8年間で、14000人ものロシア語を話す一般市民が殺されました。これをジェノサイドと言わずに何と呼びましょうか? 当時は日本の大手メディアもこのことを伝えていた証拠動画がこれです:https://youtu.be/z_cwFRCP_mw 国際法で禁止されている白リン弾が使用されています。(余談ですが、東富士演習場でも、この白リン弾と思われる武器を使った演習が行われていたことを、日本の平和団体の監視係が突き止めています)

ロシアの侵攻を「国際法違反だ」とおっしゃる方は、このミンスク合意を無視した最初の西側の国際法違反については知らぬ顔です。その上、ロシアの特別軍事作戦の前、北京オリンピックに世界の注目が集まっていた頃、米国がウクライナに400台も戦車を送り、ドンバス地方との境目に並べて砲撃を強化したことなど、報道する西側メディアは皆無でした。一方、8年間ずっと外交という手段を通して話し合いの努力に努めてきたロシアについても、プーチンを「独裁者」のイメージで固めたい方針に不利になるからでしょうか、目に付くような報道はされませんでした。

結局ドンバス地区の二つの共和国の大統領からの要請を受けて話しあったデュマ(ロシアの国会)が、ドネツク共和国とルガンスク共和国の独立を承認すべきだと大統領に進言し、プーチンはそれを受けて承認しました。そして夥しい数のバスを両国に送り、何万人もの住人を事前にロシア側に避難させました。あの当時は、YouTubeでロシア国会の様子を見ることもできました。この頃のロシアの動きをしっかりとご理解いただきたいのです。ロシアはまず独立を承認し、同盟国関係になり、そして二つの共和国の国境線の内側からウクライナに向けて反撃の砲撃をしました。ここまでは合法的な集団的自衛権の行使です。ただ、ウクライナその他の国々が、この二つの共和国の独立を認めていなかったので、複雑ですが、内乱を停めに入るどころかウクライナ軍の特殊部隊を米国陸軍がトレーニングしていました。その証拠動画は、 駐ウクライナ米国大使がPRのために作ったものです: https://youtu.be/nxeZFS9hTUg  

コソボ騒乱の時には、独立すらしていなかった地域への集団的自衛権を主張して、NATO軍は猛空爆を行ってお咎めなしだったのですから、この時点でのロシアの方が、まだ合法性が高いと見えます。(ブライアンが言った「拡大しながら片っ端から破壊する」NATOの特徴がよくわかる件です)

この共和国とロシア側の最初の反撃でキエフ政権にはかなりのダメージがあり、3月の末には、和平交渉がトルコの仲介で進み、調印まで後一歩のところでしたのに、4月に入ってすぐに英国のジョンソン元首相が飛び込んでゼレンスキー大統領(当時)を説得して戦争を継続させました。この頃取り沙汰された「ブチャの虐殺」報道は、捏造された現場を使ったものであった事が証明されましたが、日本ではまだきちんと報道されていないようです。

このように日本とそのほかの国々との情報格差が著しく露見したのがウクライナ紛争です。

最近のギャラップの調査では、「アメリカ人のマスメディアに対する信頼は引き続き過去最低を記録しており、ニュースを『完全に、正確に、公平に』報道するという点に関して、メディアを『大いに信頼する』または『まあまあ信頼する』と回答したのは31%で、昨年の32%と同様であった。」(https://news.gallup.com/poll/651977/americans-trust-media-remains-trend-low.aspx)というほど大手メディアの信頼はガタ落ちです。その信頼されていない米国大手メディアのニュースの和訳をテレビや新聞で「国際ニュース」として聞かされているために、日本では左翼も右翼もロシア嫌い、中国嫌い、北朝鮮嫌い、韓国も嫌いだけど一応同盟国づきあいはしないといけない、という人が圧倒的に多いようです。 そうなると、問題は、ウクライナが米露の代理戦争であることがぼやけてしまい、いずれは米中の代理戦争に日本の自衛隊員がウクライナ兵のように消耗品にされるということが見えないという事です。

さらに決定的な問題は、イスラエルでロシアが使用した超音速中距離弾道ミサイルを迎撃できるシステムが無い、まだ西側では開発中であるという事です。「南西シフト」で沖縄の離島にまで配備したあのミサイルシステム、随分高い買い物をさせられたのに、あのミサイルシステムでは迎撃できないことが、今からわかっているのです。

もうひとつ言わせて頂くと、ロシアの超音速中距離弾道ミサイルは、核弾頭を搭載できますが、しなくても核兵器攻撃と同じ結果をもたらすことが可能です。なぜなら、日本には、54基も原子炉があるからです。大学やエネルギー会社の実験用の小型の原子炉も入れると70を超えるらしいです。そして、その小型の原子炉は、都市や住宅密集地にずっと近い立地です。さらに言うと、横須賀には米海軍の原子力空母が停泊しています。あれは、原子炉二つ分ぐらいの威力に相当するそうです。しかも、米軍の所有ですから、原子力委員会などの日本の原子力機関は立ち入る事ができません。つまり、事故があっても、有事であっても、日本側が立ち入り調査のできない原子炉二つ分の核施設が、東京都市圏に隣接する(含まれる?)横須賀にあるのです。

ここまで書いておきながら、「あまり難しく捉えないでください」と言ったら怒られるかもしれませんが、本当に簡単に説明できます。米国の外交は単純明快です:

1)仮想敵国は三つ、ロシア、イラン、中国
2)この3カ国を牽制し、いずれは支配下に置き、資源を貪りたい
3)そのためには、これらの国々を囲む小国家はできるだけ不安定なままでいて欲しいし、隣国同士で不仲のままでいてほしい、米傀儡が望ましい

殆どえげつない程この傾向をはっきりと打ち出した外交政策をこの4年間行ってきたのが、ブリンケン国務長官です。
次回は、このブリンケン氏について、解説したいと思います。それまでに彼の任期は終わりますが、新政権にどれくらい彼のコンサル会社の部下たちが入り込むかは、注目に値すると思います。

レイチェル・クラーク
日系米国人、通訳・コンサルタント・国際コーディネイター ベテランズフォーピース(VFP) 終身会員 核のない世界のためのマンハッタンプロジェクト メンバー 2016年以来、毎年VFP ピース・スピーキングツアーをコーディネイトし、「戦争のリアル」を米国退役軍人が日本に伝える事によって、平和・反核・環境保護活動につなげている

レイチェル・クラーク レイチェル・クラーク

日系米国人、通訳・コンサルタント・国際コーディネイター ベテランズフォーピース(VFP) 終身会員 核のない世界のためのマンハッタンプロジェクト メンバー 2016年以来、毎年VFP ピース・スピーキングツアーをコーディネイトし、「戦争のリアル」を米国退役軍人が日本に伝える事によって、平和・反核・環境保護活動につなげている。

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