【櫻井ジャーナル】2025.01.08XML: トランプが大統領に就任する直前、ウクライナ軍は露国への軍事侵攻を試みて失敗
国際政治ウクライナ軍は1月5日朝、戦車、空挺部隊を乗せた装甲兵員輸送車輌、地雷除去車輌などを使い、クルスクに対する新たな攻撃を開始、地雷原を突破したようだが、200名近い兵士が戦死、装甲車輌数十輛が破壊され、同日の夕方には撃退されたと伝えられている。
シリア情勢に対応してロシア軍がシリアへ戦力を割くと考えたのかもしれないが、そうしたことは起こっていない。今回、ウクライナ軍は電子戦を展開、ドローンを無力化しようと試みたようだが、ロシア軍は光ファイバー・ドローンで対応しているとされている。
昨年8月6日にもウクライナ軍はクルスクへ軍事侵攻しているが、その際、ロシア側には国境警備隊が配備されていただけである程度侵入を許した。その後、ロシア軍は航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受け、多くの死傷者が出ている。新たな攻勢で戦況を変えられるようには思えない。ウクライナの敗北は決定的だ。
ウクライナを舞台としたアメリカとロシアの戦争は2014年2月、バラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターを切っ掛けにして始まったと言えるが、ロシア軍が直接ウクライナを攻撃し始めたのは2022年2月24日のことである。ミサイルなどでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始めた。
この段階でロシア軍の勝利は確定的。そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉が始まり、双方とも妥協して停戦の見通しが立った。ベネットは3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その3月5日にウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。クーデター後、SBUはCIAの下部機関として機能している。
停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。
ロシアとウクライナだけなら、ここで戦闘は終わっているのだが、言うまでもなく、終わらなかった。こうした停戦交渉を潰すため、2022年4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。ホワイトハウスの指示だと見られている。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるため、戦い続けるように要求している。
この当時、アメリカを中心とする西側諸国は自分たちの兵器を投入すればロシア軍を粉砕できると本気で信じていた可能性が高い。翌年の途中まではそう信じていたのだろうが、彼らが2014年から8年かけて構築したマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカにある地下要塞を結ぶ要塞戦が2024年2月までに突破され、万事休す。それでもアメリカ/NATOはウクライナ政府に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦えと命じていた。
かつて、アメリカは泥沼化した戦争を停戦へ持ち込むため、核兵器を利用したことがある。例えば1953年1月に新大統領のドワイト・アイゼンハワーがこの手法を使っている。
ハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争は泥沼化、早期停戦を望むアイゼンハワーは中国に対し、休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
そのアイゼンハワー政権で副大統領だったリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法、つまり核兵器で北ベトナムを恫喝した。そのニクソンは自分たちが望む方向へ世界を導くため、アメリカが何をしでかすかわからないと思わせれば良いと考えたともいう。イスラエルのモシェ・ダヤンの場合、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと語ったという。そしてネオコンは「脅せば屈する」と信じている。
ネオコンは中国やロシアも「脅せば屈する」と信じているようだが、中露はそうした脅しに屈しない。その結果、世界は全面核戦争へ近づいている。西側の支配層内でも危機感が高まっているようだが、ネオコンの暴走を止められるかどうかはわからない。
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