☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月6日):反乱軍の創作:英米はどのようにHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャーム)にテコ入れしていたのか。
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
英国と米国がHTSに提供した秘密裏の支援を深く掘り下げると、西側の秘密戦略が露呈してくる。それは、今日のシリアを牛耳るアルカイダと結びついた国連指定のテロ集団を支援するための計算された戦略だ。
12月18日、テレグラフ紙は、数週間前にシリアのバッシャール・アル=アサド大統領を大規模な攻撃で倒したハヤト・タハリール・アル=シャム(HTS)と協力した 「反乱軍」である革命コマンド軍(RCA)の戦闘員を、英国と米国がどのように訓練し、「準備」したかというとんでもない調査を発表した。
前代未聞の情報公開として、同紙は、ワシントンがこの攻撃をかなり前から「知っていた」だけでなく、「その規模に関する正確な情報」を持っていたことも明らかにした。現在確認されているHTSとの「効果的な同盟関係」は、10年半に及ぶ代理戦争から生まれた「多くの皮肉」のひとつである、としている。
テレグラフ紙は、この協力は周到に準備されたものではなく、シリアの長引く内戦の結果、「外国勢力に支援された民兵や同盟が乱立している」ことの結果だとしている。
米国のHTS支援:「必要な」同盟
同盟関係は流動的で、グループはしばしば分裂、合併し、忠誠の対象を変更した。戦闘員たちは、派閥間の境界線が曖昧になり、頻繁に立場を変えることになった。しかし、英国と米国がHTSの支配的な反政府勢力と意図的かつ長期的な関係を維持していたことを示す証拠は十分にある。
例えば、2021年3月、ドナルド・トランプ次期大統領のシリア特使を務めていたジェームズ・ジェフリーはPBS(公共放送サービス)のインタビューで、HTSを支援するために当時のマイク・ポンペオ国務長官から特定の「免責」を得たことを明らかにした。
これは、国連/米国が指定したテロ組織への直接的な資金提供や武装を認めるものではなかったが、もし米国が供給した資金が「何らかの形で 」HTSに流れ着いても、西側の関係者が「非難されない」ことを保証するものであった。
シリアの戦場における武器の流動性は、ワシントンが大いに当てにしていたものだった。2015年のインタビューで、中米中央情報部(CENTCOM)報道官のカイル・レインズ中佐は、国防総省の審査を受けた戦闘員の武器がヌスラ戦線(HTSの前身)の手に渡った理由について質問された。レインズはこう答えた: 我々はこれらの部隊を「指揮統制」しているわけではなく、「訓練し、能力を与える」だけだ。彼らが誰と同盟を結ぼうが、それは彼らの勝手だ」。
この合法的な抜け穴により、米国政府はHTSを「間接的に」支援することができ、テロ組織としての指定を維持しながらHTSが崩壊しないことを保証した。この指定は、現在は本名のアフマド・アル・シャラで知られる指導者アブ・モハマド・アル=ジュラニに対する1000万ドルの懸賞金が取り消されたことで完了した。
ジェフリーはこの戦略を合理的に説明し、HTSを「米国が管理する地域の安全保障システム」を維持するための「最も悪い選択肢」であり、したがって「(放って)おく」価値があるとした。HTSの優勢は、逆にトルコにイドリブで活動するための足場を与えた。一方、HTSは米国の支援者たちに誤解されようもないメッセージを送り、懇願した:
「私たちはアメリカの友人です。私たちはテロリストではありません。私たちはアサドと戦っているだけなのです」。
安全な避難所
アサド政権の崩壊以来、ロンドンの当局者たちは、HTS主導の暫定政権をシリアの新政府として正当化する上で、だれにも負けないくらい主導的役割を果たしてきた。HTSは2017年に英国の禁止テロ組織リストに追加され、その中でこの集団は長年禁止されてきたアルカイダの「代替名」の一つとして考慮されるべきだと彼らは述べている。
英国のキア・スターマー首相は、HTSの「テロ団体指定」を取り消すには「時期尚早」であると宣言したが、英国当局者たちは12月16日、HTSの代表者たちと面会した。このような面会が違法であることははっきりしていた。
これは、HTSの差し迫った、高度に政治化された西側の修復を示している可能性が高い。シリアの汚い戦争を通じて、英国の諜報機関は「穏健な反政府勢力」を促進するために広範な心理作戦を行ない、残虐なプロパガンダと人道に配慮した物語を作り上げたのだ。
こうした努力は表向き、HTS、ISIS、アルカイダといったグループを弱体化させることを目的としていた。しかし、英国情報部から漏洩ファイルは、HTSが2016年以降もアルカイダとどのように絡み合っていたかを明らかにし、その内容はメディアの報道と真っ向から対立している。
言い換えれば、10年半に及ぶ危機の間、HTSは公式には国内の最も原理主義的で大量虐殺的な集団と同列に考えられていた。
英国文書を読めば、また、HTSが2016年にアルカイダとすべての関係を断ち切ったという一般的な言い方は笑止千万だ、ということがわかる。2020年の英国文書には、アルカイダがシリア占領地でHTSと「共存」し、そこから国外への攻撃の発射台として利用している様子が記されているのだ。
この文書は、HTSの支配は、不安定さに煽られてアルカイダが訓練し、拡大するための「安全な避難所」を作ったと警告している。HTSに対する英国の心理作戦は何年にもわたって行なわれたが、最終的には失敗に終わった。その代わりに、漏洩ファイルは、HTSの影響力の拡大、領土の獲得、代替政府としての再構築を嘆いている。
「アルカイダは依然として、シリアの国境を越えて活動するサラフィー・ジハード主義の多国籍グループである。(アルカイダの)優先事項は、シリアにおける不安定を煽る隠れ家を維持することであり、そこから訓練を受け、将来の拡大に備えることができる。シリア北西部におけるHTSの支配は、(アルカイダと)連携するグループや個人が存在するための空間を提供している」。
英国が背後にある偽情報宣伝がHTSを利している
HTSを阻止しようとする英国諜報機関の心理作戦は、HTSの結成から最近まで行なわれていた。しかし、何の成果も得られなかったようだ。オンライン誌The Cradleが調査した数々の漏洩ファイルは、HTSの「影響力と領土支配」が長年にわたって「劇的に拡大」してきたことを嘆いている。
その成功によって、HTSという過激派グループは「地位を固め、敵対勢力を無力化し、シリア北部における重要な役割を果たすようになった」。しかし、HTSの「支配」は、同グループが自らを代替政府として再構築することで、部分的には確保された。
HTSが占領した地域には、病院、法執行機関、学校、裁判所など、さまざまな並行サービス提供者や機関があった。同グループの国内外のプロパガンダは、これらの資源を、全国的な展開を待つ「代替」シリアの実例として特に宣伝した。
皮肉なことに、こうした組織や機構の多くは(ISISが支配する地域でも活動した悪名高いホワイト・ヘルメットなど)、体制変革のプロパガンダを目的として作られた英国諜報機関の直接的な産物だった。しかも、彼らは莫大な費用を投じてロンドンによって積極的に宣伝された。
漏洩した英国の情報文書には、「穏健な反対派のサービス提供に対する認識を高め」、「(アサド)政権に対する信頼できる代替案について説得力のある物語と証拠を国内外の聴衆に提供する」ことの重要性について、繰り返し言及されている。こういったやり方が、HTSがアサドに代わる「信頼できる」存在として自らを示す努力を大いに支援している可能性については、この遺漏ファイルはまったく考慮していない。
それにもかかわらず、占領地域のシリア人は「特にHTSからサービスを受けている場合」にはHTSを受け入れることが認められている。さらに不気味なことに、文書には、英国政府の紛争・安定・安全保障基金 (Conflict, Stability, and Security Fund_CSSF) から「HTSやその他の過激派武装グループが支援を受けている反体制派組織を攻撃する可能性は著しく低い」と記されている。
これが、イギリスのシリア宣伝戦と、ホワイト・ヘルメットや過激派とつながりのある自由シリア警察のような組織が資金を調達する仕組みだった。
英国が運営するこれらの統治機構や反対勢力は、HTSを「弱体化」させることを目的としていたとされるが、外国から資金提供を受けた活動に対する暴力的な報復を受けないグループの支配地域で活動していた。というのも、彼らは占領地の住民に「重要な社会福祉を提供していることが明らか」だったからだ。
また、HTSはこれらの「反対派組織」が英国の諜報機関によって資金援助されていることを十分に認識しており、それゆえその活動は何ものにも妨害されなかった、というあまり表面的には語られない視点からの見方もある。
連携攻撃
テレグラフ紙の報道によれば、HTSの攻勢について「ワシントンが事前に知っていたことを示す最初の兆候」は、3週間前に革命コマンド軍(RCA)の代理人たちがアメリカのハンドラー(黒幕指令塔)たちから激励を受けたことだった。
ヨルダンとイラクの国境に近い、アメリカが管理するアル・タンフ空軍基地での秘密会議で、RCAは、アサド政権の「終焉につながる」攻撃に備えて、部隊の規模を拡大し、「準備を整える」よう指示された。上述したRCA大尉は同誌にこう語った:
「彼らはそれがどのように起こるのか教えてくれませんでした:すべてがこれから変わる。今があなたの出番だ。アサドが倒れるかお前が倒れるかだ」と言われただけで、いつどこでとは言わず、ただ準備をするように言われただけです」。
これは基地の米軍将校の後に続き、RCAを、他の英国と米国の訓練を受け、資金提供を受け、指導を受けたスンニ派砂漠部隊と統合し、共同指揮下のアル・タンフで活動していた反政府部隊を強化した。
テレグラフ紙によれば、「RCAとHTSの戦闘員は協力関係にあり、両軍の連絡はアメリカによって調整されていた」。この協力関係は「稲妻攻勢」で壊滅的な効果を発揮し、RCAはアメリカの明確な命令によって国中の重要な領土を急速に占領した。
RCAは南部の都市デラアで別の反体制派と手を組み、HTSよりも先にダマスカスに到達した。RCAは現在、国土のおよそ5分の1、ダマスカスの領土の一部、そして古代都市パルミラを占領している。
これまでロシアとヒズボラによって「厳重に防衛されていた」モスクワの地元基地は、現在RCAによって占拠されている。「部隊の全員が米国によって引き続き武装され」、シリア・アラブ軍 (SAA) の兵士の給与のほぼ12倍である月額400ドルの給与を受け取っている。
アサド政権を崩壊させたRCAや他の過激派民兵への直接的な資金提供が現在も続いているかどうかは不明である。しかし、明らかなのは、英国と米国が、たとえ「間接的に」であっても、HTSを設立当初から支持していたことである。そして、この秘密裏の支援は、HTSを財政的、地政学的、物質的、軍事的に位置づけ、ダマスカスへの「電撃」攻撃と今日の政府就任に向けて重要な役割を果たした。
スターマーは、これがロンドンとワシントンの当初からの目標であったという解釈を強調し、アサドの追放後、英国はその結果として西アジアにおいて「より存在感のある一貫した役割を果たす」と即座に宣言した。
西側諸国や一部の地域の首都は、何十年にもわたって続いてきたバース党を解体するために多額の資金を投じ、血を流した作戦が明らかに成功したことを喜ぶかもしれないが、英国の諜報機関は以前から、この結果はアルカイダに「将来の拡大」のためのより大きな 「不安定性を煽る安全な避難所」を与えることになると警告していた。
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漏洩ファイルは、英国のシリア秘密計画がジョラニのHTSを後押ししたことを示している
キット・クラレンバーグ
ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)代表のアフメド・アル・シャラー(別名モハマド・アル・ジョラーニ)とダマスカスにある英国外務・英連邦・開発省のスティーブン・ヒッキー中東・北アフリカ部長。
「穏健な反体制」を構築するという名目で、ロンドンはHTSが支配する地域にソーシャルサービス(社会福祉事業)とメディアネットワーク(報道通信網)を構築し、危険なアルカイダ関連組織と烙印を押したグループに利益をもたらした。
The Grayzone誌が調査した漏洩した英国の情報ファイルは、英国がハヤト・タハリール・アル・シャムの台頭を支援したかどうかについて重大な疑問を提起している。ハヤト・タハリール・アル・シャムは、今年12月にシリアで権力を掌握するまで西側諸国政府によって禁止されていたイスラム主義グループである。
キア・スターマー首相は、HTSを英国の禁止テロ組織のリストから削除するのは「時期尚早」であると述べた。このグループが2017年に追加されたとき、その項目には、アルカイダの「代替名」の一つとして考慮されるべきであると書かれていた。そのため、HTSの地位が存続している間、英国政府職員がHTSの代表者と会うことは違法であった。
しかし12月16日、ロンドンのシリア担当特別代表であるアン・スノーを含むイギリスの外交官たちは、ダマスカスでジョラニや他のHTS指導者たちと首脳会談を行なった。
ダマスカスの英国代表団と一緒にいるアフマド・アル=シャラー(ジャウラーニ)。英国のシリア特使アン・スノー (@UKSyriaRep) はヒジャブを着用していない。CNNインタビューのときとは違う。直接隣接しているわけではないが、興味深い変化だ。pic.twitter.com/LWnhYuHzZE
—Aaron Y.Zelin (@azelin) 2024年12月16日
同じ日、ロンドンのタイムズ紙がジョラニに同情的なインタビューを行ない、彼は西側諸国の対シリア制裁の中止を求め、彼の監視下でシリアが「イスラエル攻撃の発射台」にならないことを約束した。これは、ジョラニによるHTSの「再構築」を強調することを意図したBBCの好意的な報道に続くものであった。HTSへの制裁が取り消され、ロンドンが同グループをアサド政権後のシリアの正当な支配者として承認する舞台が整ったようだ。
英国がHTSを受け入れたことは、HTSの指導部が依然としてアルカイダのシリア支部、ジャバト・アル・ヌスラ、さらにはイスラム国と密接に連携していた時代に始まった、長く秘密主義的な歴史的過程の集大成を表している。英国の諜報機関はかつて、シリアの反体制派支配地域でHTSを弱体化させる作戦に着手し、「穏健派」とされる派閥を育成していたが、The Grayzone誌が調査した漏洩ファイルは、その秘密の取り組みが結果的にジョラニの組織を強化し、権力への道を開くのに役立ったことを明らかにしている。さらに厄介なことに、これらの文書は、グループがアルカイダから分裂したという主流の説明とは対照的に、この両グループはシリアで緊密な協力者のままであることを示唆している。
「2020年ファイル」(下記参照)は、アルカイダの地元関連組織が同国北西部でHTSと平和的に「共存」しており、それが「明白にサラフィー・ジハード主義的な多国籍グループ」が「シリアで不安定を煽る安全な避難所を維持し、そこから国外での訓練や将来の拡大に備える」ための「空間を提供している」と指摘している。しかし、アサド政権が崩壊したことで、英国の外交官たちは、ジョラニを受け入れるためにダマスカスに急行し、こうした評価を投げ捨てたようだ。
(画像内英文の翻訳)
8. 他の暴力的過激派もシリアで活動を続けている。ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS) は、シリア北西部全域で徐々に影響力を拡大しており、その地位を確固たるものにし、敵対勢力を無力化し、シリア北部における主要な関係者として自らを位置づけることを可能にしている。イドリブでは、HTSの影響力と領土支配が劇的に拡大している。その支配権を確保するために、HTSはより穏健なグループの集まりと協力することをいとわず、HTSの強硬派を率いて、シリア北西部のフラス・アル・ディンでHTSと共存しているアルカイダ系列を分離して復活させた。HTSは主にシリア北部の支配を強化することに焦点を当て続けているが、アルカイダは依然として、シリアの国境の外に広がる目的と目標を持つ、明らかにサラフィー・ジハード主義の多国籍グループである。アルカイダの優先事項は、不安定さに煽られたシリアの安全な避難所を維持することであり、そこから将来の拡大に向けて訓練と準備を行うことができる。シリア北西部のHTSによる支配は、アルカイダと連携したグループや個人が存在するための場所を提供している。
MI6のプロパガンダ(偽情報宣伝)がシリアの「反政府」を支援
シリア危機が発生した当初から、イギリス国家は軍や諜報機関のベテラン職員からなる委託業者たちを密かに雇い、何百万ポンドもの費用をかけて入念な心理作戦を実施した。その目的は、アサド政権を悪者扱いして不安定化させ、国内住民や国際機関、西側市民に、シリアを略奪している武装集団が「穏健な」代替勢力であると信じ込ませることであった。
その過程で、西側が支援するネットワーク(報道通信網)は多数の反対派メディアを生み出し、いわゆる 「市民ジャーナリスト」の小軍団を訓練して、国内外の視聴者向けに巧妙なプロパガンダ(偽情報)を作らせた。イギリスの大手委託業者の2つは、MI6の退役者が率いるARKとグローバル・ストラテジーだった。
漏洩した外務省への共同提出書類の中で、委託業者たちは2011年以来、次のように自慢している:
「私たちは、市民統治機構の主要メンバー、旅団長、90のMAO (Moderate Armed Opposition穏健武装反対派) グループのメンバーから、市民社会組織、サービス(社会福祉)提供者、活動家に至るまで、シリア全土の利害関係者をカバーする広範なネットワーク(連携網)を構築してきた。ARKとTGSNは、これに関する継続的な報告を女王陛下の政府に提供しており、MAO計画の専任の連絡役を通じて国際連合にも提供している。また、両組織とも、反政府勢力が支配する地域全体にわたって、十分に確立された広範な調査ネットワーク(連携網)を有している」
(画像内英文の翻訳)
理解と洞察-対象読者/メディア・ランドスケープ:この6年間、コンソーシアム企業は、市民統治機構の主要メンバー、旅団司令官、90のMAOグループのメンバーから、市民社会組織、サービス・プロバイダー(社会福祉提供者)、活動家に至るまで、シリア全土の利害関係者を網羅する広範なネットワーク(連携網)を構築してきた。ARKとTGSNは、これに関する継続的な報告をHMGに、またMAO事業計画の専任担当者を通じて国際連合に提供してきた。これに加えて、ARKの姉妹会社であるThe Stabilisation Network(TSN)は、暴力的過激主義に対抗するための調査と対話交流に重点を置いており、現在シリアでHMGのために対ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)および対デーシュ・コミュニケーション・プロジェクト(対話事業)を実施している。2016年、ARKはシリア・システム紛争分析を作成し、紛争の進展、主要な要因、潜在的な軌跡に関する詳細な理解を提示した。2017年初めには、CSSFのためにシリアで全国的なTAA(Tier One Target Audience Analysis)を実施し、対象となる視聴者とシリアのメディア状況に関する詳細な理解を提供した。
ARKとグローバル・ストラテジーは、独自に、あるいは連携して、隠ぺい的な「戦略的コミュニケーション」活動や市民社会事業計画を通じて、HTSを「弱体化」させる試みを主導した。しかし辻褄はあっていないが、これらの取り組みに関連する漏洩ファイルは、そのような取り組みが 「HTS(または関連グループ)を直接批判してはならない」と強調している。ひとつには、HTSに対するあからさまな非難は、反対勢力が支配する地域では「分極化」しかねないと考えられていたからである。
さらに、「HTSの管理に対するいかなる問題も、事業計画の職員、協力者、受益者の逮捕、または事業計画に対するその他の制裁につながる可能性がある」 。
この評価は、占領下のシリアにいる英国の諜報資産と諜報員が、彼らの安全はHTSからの保護にかかっているという理解を反映している。ARKとグローバル・ストラテジーは、過激派グループへの直接的な挑戦を避けることで、「地域社会がHTSの支配に対抗することを間接的に可能にする活動」を行なうことを望んでいた。
「穏健な反政府勢力の統治活動に関する肯定的な物語」を称賛し、「価値観に基づく情報発信」によって推進される心理戦の取り組みとともに、英国の諜報活動は、反政府勢力の領土に「地域社会の集会のための安全な場所」を確立することを目指していた。漏洩ファイルによると、そこでは、参加者は「穏健な」美徳を称賛する英国製の情報広報映画、「スポーツや芸術クラスなどの共有活動」、「心理社会的援助から不発弾まで」の話題に関する「有益な」説明を楽しむことができるという。ARKが創設したシリア民間防衛隊 (一般にはホワイト・ヘルメットとして知られている) と「連携」している。
英国の資産はHTSによる保護を受けて運用されている
ホワイト・ヘルメットは、占領下のシリア全土に外国が支配する一連の準国家を設立するための広範な取り組みの一部にすぎなかった。そこには、英国、EU、米国から資金提供を受け、訓練を受けた現地人が職員を務める統治機構が並行して存在していた。欧米の偽情報宣伝やメディアの報道は、これらの分離したイスラム教徒の植民地を「穏健な」成功物語として普遍的に描いていたが、実際には非常に混沌とした危険なものであり、HTSのような暴力的な過激派が強権的に運営しており、シャリーア法*の非常に厳格な解釈の下にあることが多かった。
シャリーア法*・・・イスラム教の経典コーランと預言者ムハンマドの言行(スンナ)を法源とする法律。ムスリムが多数を占める地域・イスラム世界で現行している法律である。「イスラム法」、「イスラーム法」、あるいは「イスラム聖法」などとも呼ばれる。(ウィキペディア)
ひとつの英国委託業者が漏洩した外務省への提出書類の中で述べているように、「シリアの解放地域で機能しているが一貫性のある典型を提示することは、反対派を強化し、文民主導で説明責任のある新しい国家安全保障構造の基礎となるだろう」。2016年の文書では、ホワイト・ヘルメットや自由シリア警察 (FSP) など、英国が運営する統治機構や組織がシリアの「新たに解放された地域」に輸出されると予想している。
西側の資金が、反体制派が支配する地域に流れ込むにつれて、HTSの勢力は飛躍的に増大した。ひとつの漏洩ファイルによれば、HTSは「その地位を固め、敵対勢力を無力化し、シリア北部の重要な役割を果たすようになった」。これは特にイドリブで顕著で、HTSは「劇的にその影響力を拡大し、総督府全域を領土支配した」。アルカイダの盟友であるHTSが支配を固めるにつれ、英国が支援する統治機構や反対勢力は、HTSの監視下で、暴力的な報復を受けずに、ほぼ自由に活動するようになった。
漏洩ファイルの中で特に印象的だったのは、「HTSや他の過激派武装集団は、英国政府の紛争・安定・安全保障基金(CSSF)から支援を受けている反対派組織を攻撃する可能性が著しく低い」という記述だ。
(画像内英文の翻訳)
プロジェクト・コンテクスト:コンソーシアムは、紛争に敏感な立場からSoRを見直したことが、提案された設計に大きく貢献した。その結果、穏健な反政府勢力の統治活動を中心に、協調的で強力かつ前向きな物語を展開することに焦点を当てた行動手法となった。この行動手法は、MAOの構成要素を、行事中心の情報伝達から価値観創造の情報伝達に移行させ、国際人道法キャンペーン(広報活動)を含む共有キャンペーン目標を通じて、すべての構成要素を結びつけるものである。HTSや他の過激派武装集団は、支援を受けている反対派組織を攻撃する可能性が著しく低く、重要なサービスを提供できることが実証されているためである。(ターゲット・オーディエンス分析で示されたように)HTSを望ましい統治主体ではないが、合法的な抵抗勢力とみなす多くの人々にとって、HTS(またはその関連グループ)を直接批判することはない。TAAでは、南部では少数派や女性の参加に対する許容度が低いことが示されたため、ARKやTGSNは、反感を買うような形でこれらのグループの知名度を上げることなく、包摂性を促進するような行動手法をとるようにする。コンソーシアムはまた、異なる事業参加者のために、特定の地域で運営企画が不可能になった場合、または事業計画がより効果的に実施できるように、キャンペーン活動を柔軟に設計している。
英国の評価によると、HTSがホワイト・ヘルメットや自由シリア警察のような「反体制派」に対して友好的な行動手法をとったのは、彼らが占領地域の住民に「重要な社会福祉を提供していることが明らかである」という事実に起因している。ARKやグローバル・ストラテジーのような英国の委託業者たちは、HTSの支配地域での生活について肯定的なメディア報道の波を量産しながら、HTSの身近な領域で社会福祉提供組織の連携網に資金を提供することによって、意図せずして過激派グループの統治主体としての信頼性を高めた。
漏洩ファイルの中では、「穏健な反政府勢力のサービス提供に対する認識を高め」、「(アサド)政権に代わる信頼できる選択肢について説得力のある語りや実証」を聴衆に提供する必要性について繰り返し言及されている。この必要性は、かつては政権交代を支持していたかもしれないが、今は「革命は死んだ」と考えている市民や、「特にHTSから福祉活動を受けている場合はHTSを認める」占領地の住民の間で特に顕著であった。しかし、多くの場合、そうした「社会福祉」は英国諜報機関の代理人によって提供されていた。
別の漏洩ファイルには、「支配権を確保するために、HTSはより穏健なグループの集まりと協力することをいとわなかった」と書かれている。これには、英国の諜報機関が推進しようとしていたのとまったく同じ「穏健」な要素が含まれていたことはほぼ間違いない。もちろん、これらの派閥はいずれも「穏健派」という用語の定義を意味のある形では守っていなかったが、英国のテロ法の下で禁止されていなかったため、HTSに直接与えられていたら禁止されていたであろう広範な直接協力と資金提供が可能になった。
一方、ワシントンでは、HTSがイドリブで活動している他のグループを通じて「間接的に」援助を受けることを許可するためのロビー活動が2018年に始まった。HTSの最大の推進者の一人として浮上したトランプ政権の外交官ジェームズ・ジェフリーは当時、米メディアに対し、ジョラニが「私たちはあなたの友達になりたい。私たちはテロリストではありません。我々はアサドと戦っているだけだ」と訴えたと主張した。
しかし、現地からの極秘評価では、英国の委託業者たちは、HTSが支配するイドリブの力学について、もっと不穏な見方を示した。
「ダーイシュやHTSに加わらなかった・・・人々の数を、私たちは推計することはできない
つい最近(2020年)のことだが、英国諜報機関はイドリブでHTSを「弱体化」させることを公式に意図した事業計画に資金をつぎ込んでいた。その一方で、HTSの絶え間ない「影響力の拡大」を嘆き、その「影響力」は「長期化する可能性が高い」と述べていた。
したがって、英国のスパイは「サラフィー・ジハード活動家」が「アサドへの反対と同義とみなされるようになる」と警告した。外務省への提出書類の中で、グローバル・ストラテジーは事実上敗北を認め、対HTS作戦の「因果関係を示す信頼できるデータの提供」、あるいは具体的な現実の成果において「課題」に直面していることを認めた:
「この事業計画のためにダーイシュやHTSに参加しなかった人々の数を推定することはできない・・・VEO (暴力的過激派) 虚偽情報宣伝に対する彼らの集団的な抵抗力がどの程度高まったかを明確に確認する厳密な方法はない」。
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(画像内英文の翻訳)
アウトカムモニタリング(OUTCOME MONITORING)|これらの指標は、プログラム全体の影響力に焦点を当てたものである。私たちは、成果を追跡観察し、私たちの活動の未確認の成果を把握するための方法として、アウトカムハーベスティング(成果刈り取り)2 を提案している。TGSNとプロキシミティは、シリアやナイジェリアなど、この種のプログラムの継続記録における豊富な経験から、伝統的な構造把握の中心である因果関係を示す信頼できるデータを提供することの難しさを理解している。また、こうした伝統的な手法には限界があり、因果関係を効果に当てはめようとすると、しばしば見当違いの結果をもたらすことも、私たちは経験的に知っている。意味のある測定値を得て、その測定値を文脈の中で理解し、理解を深めるためには、従来の追跡監視手法のはるか先を見据える必要がある。例えば、この事業計画のおかげでダーイシュやHTSに入らなかった人の数を推定することはできないし、VEO(暴力的過激派)のプロパガンダに対する集団的な抵抗力がどの程度高まったかを厳密に確認する方法もない。しかし、私たちにできることは、観察可能なデータや推論可能なデータを通じて、重要な認知や行動の変化を特定することである。前者には、以下のような追跡調査が含まれる。
英国の諜報機関は、HTSの台頭が、シリアにおける他の過激派グループの活動や主張を無力化しようとするロンドンの努力を相殺したことを明確に理解していた。占領地のアルカイダ関連組織は「HTSと共存」しているだけでなく、同国北部の「HTS支配」は積極的に「(アルカイダと)連携するグループや個人に存在する空間を提供」していると観察された。この「安全な避難所」から、ジハード主義者たちは 「シリアの国境外に広がる目的と標的 」に焦点を当てる自由を得た。
さらに彼らは、「イドリブにおけるHTSの影響力の強化」が、HTSとアサドが権力の空白を埋める唯一の有力な候補者であるという「二元的な力学」をさらに促進させたと結論づけた。
おそらく予想どおり、漏洩ファイルには、アサドを悪者扱いし、「穏健な反体制派への社会福祉提供」を促進することを目的としたシリアでの英国の大規模な心理戦作戦が、同じ「二元的力学」に貢献した可能性があるかどうかについての考察が欠けていた。
ロンドンの共謀がシリア全土で暴れまわる過激派を利したのは、これが初めてではない。2016年、英国諜報機関はヨルダンの秘密基地で「穏健な」シリア反体制派戦闘員を訓練する作戦を開始した。漏洩ファイルによれば、この事業に入札した請負業者たちは、過激派がロンドンから供給された援助をヌスラやISISなどの「過激派」に流すことは避けられないと結論付けていた。請負業者たちは、破滅的な事業を断念するのではなく、そのリスクを「合理的な程度」まで「容認」することに決めた。
それからほぼ10年、何千万ポンドもの資金を投じて穏健派とされる反体制派を作り上げた後で、英国外務省は影から姿を現し、その秘密のシリア・プロジェクトの究極の受益者であるジョラニ(同国のアルカイダ関連組織の創設者であり、ISISの元副代表)がダマスカスで権力を握ると、彼を歓迎した。新指導者の陰惨な宗派間暴力の記録はすっかり忘れ去られ、明らかに熱狂的なキール・スターマー英首相は、自国が「この地域全体で、より存在感のある一貫した役割を果たす」ことを誓った。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月6日)「反乱軍の創作:英米はどのようにHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャーム)にテコ入れしていたのか。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2894.html
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Manufacturing Rebels: How the UK and US Empowered HTS
筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)
出典:Internationalist 360°2024年12月26日
https://libya360.wordpress.com/2024/12/26/manufacturing-rebels-how-the-uk-and-us-empowered-hts/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授