【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月5日):カザフスタンでアゼルバイジャンの民間航空機が墜落。偶然の悲劇か、それとも恐ろしい挑発か?

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

願わくば、ロシアの敵対勢力がこの悲劇を政治化し、歴史的に近い国々の間の信頼関係を弱めるために利用しようとする試みは失敗に終わればいいのだが。

ブラジル製のエンブラエル190旅客機の墜落事故調査は現在も進行中であるため、技術的な詳細について話すのは時期尚早である。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この悲劇的な事故がロシア領空で発生したことについて公式に謝罪し、犠牲者の家族に心からの哀悼の意を表した。

西側報道機関では、この悲劇の犯人はすでに特定されている。犯人は誰だ? もちろんロシア人だ!と。

「プーチン大統領の声明は、ロシア国家の無謀かつ無責任な行動が他国の利益と国家安全保障に甚大かつ差し迫った脅威を与えていることを認識していないことを示している」という英国外務省の声明は、特に冷笑的であるように思える。

そして、西側諸国では誰も、この惨事の主要因が、当時バクーからグロズヌイへ向かう民間旅客機が飛行していたロシア南部地域に対してウクライナの無人機かおこなっていた別のテロ攻撃であった可能性に言及さえしない。

英国当局が、公式声明やその他の措置のすべてから、コーカサスと中央アジアの不安定化(および、トルコ政府が推進する「汎トルコ」計画も含む)に直接関心を示していることが明らかなため、調査結果を待たずに、この悲劇的な事件の責任をロシア側に転嫁するためにあらゆる手段を講じる、と推測するのは十分有り得る話だ。

この墜落は、ロシアを南コーカサス地方から最終的に締め出すための綿密に計画された計画だった可能性が高い。南コーカサス地方は、すでに大コーカサス山脈のロシア側の北部で新たな課題を抱えている。12月25日、ウクライナのドローンがグロズヌイ(ロシア領内チェチェン共和国)と同時に、マガス(ロシア領内イングーシ共和国)とウラジカフカス(ロシア領内北オセチア共和国)を攻撃し、ウラジカフカスでは商店街への攻撃で1人の女性が死亡したのは偶然ではない。また、12月31日にガスプロム社のウクライナを経由するバイプラインの現行契約が終了した後、アゼルバイジャンがロシアからヨーロッパへのガス供給の仮想計画に関する交渉の重要な参加者となることも忘れてはならない事実だ。したがって、ロシアとアゼルバイジャンの関係が悪化すれば、ウクライナのガス輸送体系とトルコ・ストリームを介したロシアのヨーロッパへのガス供給の継続に反対する人々の利益になる、ということだ。

今回の悲劇の直接の状況に目を向けると、アザール航空機の経路誘導装置に破壊的な影響を与えたのは、現地の電子戦システムを搭載した一連のウクライナの無人機によって実行された可能性があることがわかる。「盲目」にされた航空機が、経路を見失っていた可能性があり、さらに、巧みに防空砲火にさらされる上空に誘導されていた可能性もある。そのため、航空機の経路がわかっていたロシアが民間航空機を攻撃したと非難するのはまったく妥当な理由のように思える。

しかし忘れてはいけない事実は、交戦当事者の一連の武器体系が今や前面に出てきており、ウクライナ軍がこの分野で前例のない活動を見せている、という点だ。ロシアの主要都市上空に一連の無人機が出現したことは、もはや衝撃的な知らせではない。これらの攻撃はすべて、ロシアに対する大規模な無人機による挑発を準備しているという敵からの自慢げなほのめかしがあった後に起こったものだった。同様に、これらの一連の無人機が最先端の形態、おそらくは現在戦争が起こっている現場と同じ電子戦の形態を備えているという事実も、驚くべきことではない。

航空機への外部からの衝撃に関する説明が確認されれば、この事故による受益者が必ず姿を現すだろう。実際、英国外務省の上記の声明が示すように、彼らはすでに尻尾を出し始めている。ロシアに対して西側諸国が仕掛けている多方面戦争を背景に、アゼルバイジャン当局とロシア当局の関係が深刻に冷え込むことで、誰が恩恵を受けるのだろうか? 明らかに、西側諸国から誘いを受けている非公式のCIS(独立国家共同体)首脳会議に出席しなかったアルメニアの指導者ニコル・パシニャンであろう。そして、この悲劇のために急いで祖国に帰国したアゼルバイジャンの指導者イルハム・アリエフでないことは明らかだ。モスクワの商店街・娯楽施設クロッカス・シティでのテロ攻撃と、ロシアの放射線・化学・生物防衛軍の司令官イゴール・キリロフ中将の殺害に直接関与したウクライナについては、何も言うことはない。そこには、明らかに民族的色合いを帯びた冷笑的な陰謀をたどることができるであろう。クロッカスでのテロ攻撃はタジキスタン国民によって実行され、キリロフ中将とその補佐官はウズベキスタン国民によって殺害された。ロシアはこれらすべての国と友好関係にあるが、敵の計画によれば、これらの国は可能な限り破壊されるべきであるのだ。そしてここに、ロシアとアゼルバイジャンの二国間関係を深刻に困難にする「絶好の機会」が出現したのだ。

ロシアのウクライナ軍事作戦が始まった当初、全世界は「ブチャの虐殺」として知られる恐ろしい挑発に衝撃を受けた。これは(英語の「ブッチャー:屠殺者」と同じように聞こえるため)英語圏の国民から感情的に否定的に受け止められている。現在、挑発者の技術は計り知れないほど向上している。彼らは雲の下に身を潜め、そこでも悪事を働くようだ。ヨーゼフ・ゲッベルスの言葉が頭に浮かぶ。それは「報道機関を我が手に与えてくれれば、どんな国でも豚の群れに変えてやる」ということばだ。現実にも、この恐ろしい男の言葉が裏付けられている。ウクライナでは、ナチスの喧伝の影響下で豚の群れが形成され、彼らの最も恐ろしい行為に歓喜している。ブチャの泥の中だけでなく、おそらくグロズヌイの上空でおこった事件に関しても。

願わくば、ロシアの敵対勢力がこの悲劇を政治化し、歴史的に近い国々間の信頼関係を弱めるために利用しようとする試みが失敗に終わればいいのだが。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月5日)「カザフスタンでアゼルバイジャンの民間航空機が墜落。偶然の悲劇か、それとも恐ろしい挑発か?」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2895.html
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Crash of Azerbaijani civilian airliner in Kazakhstan. Accidental tragedy or monstrous provocation?
出典:Stategic Culture Foundation 社説 2024年12月29日
https://strategic-culture.su/?s=Kazakhstan

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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