植草一秀【連載】知られざる真実/2025年1月10日 (金) 胡散臭い「SNSの勝利」説
社会・経済昨年来、政治に大きな変動が観測されており、2025年の変革が期待されている。
選挙ではSNSが威力を発揮して「オールドメディアの敗北」などと騒がれているが、私たちはそんな言葉に流されていないだろうか。
「オールドメディア」が敗北し「ニューメディア」が勝利すると言えば聞こえは良いが、実態としてはどちらも同根だろう。
メディアを用いて人心を誘導する。
この本質において違いはまったくないと感じられる。
「ニューメディア」でクローズアップされた面々を凝視する必要があるだろう。
本当に世の中を刷新するような面子に焦点が当たっているか。
むしろ逆だろう。
軽薄な、中身の薄い紙っぺらの存在が、「メディア」の力によって浮上させられているだけではないか。
この面子はどう見ても既存権力とつながっているようにしか見えない。
自公の金属疲労が鮮明になっている。
事態を放置すれば2009年のような本格的な政権交代が実現しかねない。
これを阻止するのに何が必要か。
人為的なオルタナティブ=代替品を用意すること。
この作業が懸命に行われている。
具体的には
維新、国民民主の育成・強化、類似勢力の育成と立憲民主の改変だ。
2009年の政権交代は画期的だった。
敗戦後日本の政治構造を根底から改新しようとする運動が開花したものだった。
鳩山民主党が目指したのは日本政治の刷新である。
パラダイムシフトと言ってよい。
米国が支配する日本
官僚が支配する日本
大資本が支配する日本
を打破しようとした。
狙いが本格的かつ抜本的なものであったから激しい反発に直面した。
敗戦後日本を支配し続けてきた支配勢力が総力を結集して鳩山内閣の破壊に力を注いだ。
彼らが活用した最大勢力は民主党内に潜伏していた「守旧勢力」だった。
この「守旧勢力」を活用して鳩山内閣は政権内部から破壊された。
「オールドメディア」に打ち勝つという「ニューメディア」が支援する勢力は「革新勢力」=「改新勢力」ではない。
新しそうな仮面をかぶった「守旧勢力」である。
維新、石丸現象、国民民主浮上、斎藤再選のすべてがこの文脈で理解可能だ。
従来のマスメディア支配よりもSNS等を中核とするニューメディアの方が人心コントロールに好都合。
オールドメディアとニューメディアの対立を演出して、日本の支配勢力が人心誘導のプラットフォームを旧メディアから新メディアに移動させているにすぎない。
高橋清隆氏が
『メディア廃棄宣言』
を刊行されて訴えていることは、ニューメディアを含めてメディア全体を疑う必要性だ。
高橋氏はこれからの戦いは
1%対99%
ではなく
1%対0.1%
の戦いであると述べる。
世界を支配する0.1%勢力。
この構造を理解する人間は全体の1%に過ぎないかもしれない。
1%の真実を知る勢力が0.1%勢力による世界支配の構造を打破することができるか。
ニューメディアが作り出す政治のムーブメントに対して眉に唾して見極めることが必要だ。
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植草一秀の『知られざる真実』2025年1月10日 (金)「 胡散臭い「SNSの勝利」説」
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050