【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年1月12日 (日) 地獄の始まり高額療養費改変

植草一秀

2012年12月に発足した第2次安倍内閣は三つの経済政策方針を示した。

・インフレ誘導=金融緩和

・財政出動

・成長戦略

金融緩和と財政出動は財政金融政策に関する方針。

目新しいものでない。

しかし、この三つの経済政策を総称して「アベノミクス」としてアピールした。

しかし、インフレ誘導政策は一般国民=労働者=消費者=生活者=主権者にとって「百害あって一利のない政策」。

国民にとっては物価下落の方がはるかに恩恵が大きい。

しかし、政府と大企業にとっては逆。

インフレ進行は実質賃金を減少させ、企業の賃金コストを軽くする。

また、インフレ進行は政府の借金の重みを減らすとともに税収を拡大させるから政府にとってもインフレは大歓迎だ。

財政政策では2013年度に積極財政が実行されたが2014年度には消費税大増税実施が強行された。

積極財政は1年で終わった。

14年は消費税大増税による緊縮財政。

これを「アベコベノミクス」と呼ぶ。

財政金融政策は経済政策の中核でアベノミクスに目新しさはなかった。

アベノミクスを特徴づけたのは「成長戦略」だった。

「成長」という言葉はプラスの響きを持つが、「何の」成長であるかが重要。

アベノミクスの「成長戦略」は

「大企業利益の成長戦略」

=「一般国民不利益の成長戦略」

だった。

その内容は次の五つに要約できる。

1.一次産業自由化

2.医療自由化

3.労働規制撤廃=解雇自由化

4.法人税減税

5.特区創設

アベノミクスによって日本経済の成長率は上昇しなかった。

成長率平均値は2009年から2012年の民主党時代の方が高かった。

日本経済の成長率は年平均0.6%程度にとどまる。

日本経済の成長は実現しなかった。

「成長戦略」の1は日本の一次産業を外国資本に支配させるもの。

小規模農家による地産地消の農業、漁業等が破壊されてきた。

「働き方改革」なる施策が実施されたが、内実は「働かせ方改悪」だった。

長時間残業が合法化され、「定額働かせ放題労働プラン」が拡大され、正規非正規労働条件格差も温存されている。

さらに進んで、解雇の自由化が推進されている。

税制では所得の少ない国民から税金をむしり取る「消費税大増税」が推進される一方で巨大な法人税減税が遂行された。

所得税の金持ち優遇は温存されたままだ。

「特区」は特定業界、特定企業に利益を供与する政策。

新たな利権政治の温床と化した。

医療においてはすべての国民に提供される医療と富裕層だけが享受できる「二本立ての医療」への移行が推進されている。

保険適用外の医療が拡大し、十分な医療は富裕層しか受けられない状況が強まっている。

このなかで一般国民の命をぎりぎり繋いできた制度が「高額療養費制度」。

一般国民の命綱である。

社会保障支出を切りたい財務省はここに焦点を当ててくることを予言した。

それがいよいよ本格化する。

一般国民の命綱はいま切り落とされようとしている。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年1月12日 (日)「地獄の始まり高額療養費改変」
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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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